カテゴリー「ノート:心理学研究法」の記事

2011年9月 7日 (水)

ノート:心理学研究法(12)

もはや誰も憶えていないであろうコンテンツ、ノート:心理学研究法(11)の続きです。

第10章 実験の考え方

まず冒頭部分に「心理実験」の説明。

心理実験とは,人間の精神的行動を研究するにあたって,研究者が何らかの意図的な状況を設定して組織的なデータをとることである。P125

1.なぜ実験するのか

○幾何学的錯視を例に

例に挙げられているのは、ミュラー・リヤーの錯視。お馴染みの、矢羽のあれですね。それを用いて、「錯視量」を測る。で、変化させていくのは、矢羽の「角度」や「長さ」。つまり、それらの条件を変化させていって、被験者が感ずる錯視の大きさを測定して、どの条件が錯視に効いているのか、を確かめていくという寸法。

ここで問題なのが、「錯視量」をどうやって測るかという所。「見え方」自体を直接測るのは困難ですからね。だから、そこで重要となるのが、心理物理学(psychophsics)という分野の手法。具体的には、矢羽無しの線を提示し、その長さを変化させて、矢羽つきの線と長さを比較させ、同じと「見える」長さの平均をとって、それを指標とするなど。そうすると、主観的な見え方を、物理的な長さのデータとして取り出す事が出来る訳ですね。

○独立変数と従属変数

「行動は刺激の関数」という文があります。関数は数学の考えですが、噛み砕いて表現するとどうなるでしょう。イぽうが変化するに応じてもう一方も変化する、という関係とでも言えるでしょうか。もちろん数学の厳密な定義は別です(そもそも私には説明出来ない)。行動は刺激の関数、という事は、刺激を変化させればそれに応じて行動も変わる、て意味ですね。刺激とはこの場合、矢羽の長さとか角度とかですね。「行動」は、ここでは線の長さの見え方。で、変化させる条件、つまり刺激を独立変数、行動の方は従属変数、と呼びます。説明変数と被説明変数とか、他にもいくつか表現がありますね。y は x を変数とする関数である、みたいなのが数学にはありますね。x が独立変数で y が従属変数、のように。

クルト・レヴィン曰く、「B = f (E, P)」という図式を提案したそうです。Bは行動(behavior)、Eは環境(environment)でPは個人(person)。つまり、行動は環境と個人を変数とする関数である、という感じですね。
結局、心理実験では、与える刺激、という条件、これが独立変数ですね。それを「操作」して、従属変数としての行動にどう影響を与えるか見ていく、と。それは自然科学などと共通している所だろうと思います。

○変数の影響から内的メカニズムを推測する

 認知心理学では,実験データから内的な情報処理メカニズムを推測しようとする。そのときに,しばしば使われる論理は,ある変数の影響が一様でないならば,そこには異なる内的メカニズムが存在するということである。変数の影響とは,実験的な操作が及ぼす影響と言い換えてもよい。P127

認知心理学の方法は、ヒトの心を一種の情報処理過程と看做すというやり方ですね。で、内部のメカニズムを想定して、それが合っているならこういう実験を行えばこういう結果が出るであろう、と推測して、実際に確かめていくと。それが心理実験な訳ですね。もちろん、実験結果からメカニズムを推論する事もあるだろうし、生物学的な所から、いわゆるハード的な基盤を考えていくというアプローチもあるだろうと思います。

ここでは、記憶の実験が例に出ています。初頭効果親近効果という現象。これは、単語のリストを見せて、それを再生(後からその言葉を言わせる)させると、リストの初めの方と終わりの方の単語の方が、再生率が高くなるという事です。
で、初頭効果は、リストの提示速度を「遅く」すると顕著になり、速くすると目立たなくなり、親近効果は速度の影響を受けにくいらしい。
それで、初頭効果の説明としては、最初に提示された刺激は相対的に多く繰り返され(リハーサル)、長期記憶に貯蔵されやすい、というもの。なので、リストの提示が速くなると、リハーサルにかけられる時間が短くなり、再生もしにくいと。親近効果の方は、憶えたばかりだから短期記憶に残っているという事ですね。だから、再生させる前に暗算などの課題を与えたら、親近効果は消失するそうです。暗算に短期記憶を使っちゃう訳ですね。

こういう風に、刺激の与え方と、それに対する反応(あるいは行動)の仕方を見、記憶のモデルなどのメカニズムを考えながら研究を進めていくのですね。

2.干渉変数の統制と被験者の割り当て

○干渉変数とその統制

まずこういう文があります。

 他の科学における実験と同様に,心理学の実験でもその目的を一言でいえば,「こうしてみたらどうなるかを試す」ということになる。P129

シンプルですが、まさにこういう事ですね。もちろん、その方法は色々洗練されていて、そこに科学独特のアプローチの仕方があります。

例では、教育方法の効果、が挙げられています。3つの教育方法A、B、Cによる教育効果の違い。ここでは、教育方法が「独立変数」で、教育効果が「従属変数」。教育方法を変化させる事で、結果的に現われる効果がどう違ってくるか、を知りたい訳です。変数の型は、連続量の事もあるしカテゴリーの場合もある。……尺度水準の話ってもう出てきましたっけか。えっと、要するに、この変数というやつ、色々種類があります。血液型みたいなのは、「分類」しか出来ないですね。四種類。こういうのを「名義尺度」と言います。かけっこの順番だと、順位がつけられます。でも、1と2と3と……の間の大きさが等しいとは限らないですね。これは「順序尺度」。間の大きさに意味があって、差を論じられるのは、「間隔尺度」と言います。摂氏温度などですね。「比例尺度」は、「ゼロ」が考えられるもの。体重や身長などです。原点が考えられるから、「比」を論じられる。何倍である、という事が言えます。

ヒトの行動を従属変数とする、と言いましたが、もちろん、それに関係する独立変数は、様々なものがあります。だから、ある独立変数(今だと教育方法ですね)の影響を知りたいなら、「その変数だけ」が変わるようにして、他の変数が一緒に変わらないようにする必要があります。一緒に色々変わったら、結果的に行動に変化があったとしても、どの変数の影響なのか解らない、となっちゃいますから。そういう時、着目している変数以外の独立変数を、干渉変数と言います。他にも色々な言い方ありますね。第三の変数とか剰余変数とか(厳密には意味が違う、と考える事も出来るでしょうけれど)。
で、それら干渉変数の影響を等しくする事、つまり揃える事ですね。それを統制する(control)と言います。
余談ですが。私はこれらの知識に最初に触れたので、対照をとる事を「コントロール」をとる、と表現する事にちょっと違和感を持っていたり。語感の問題ですけれどね。コントロールとは、色々な条件を操作する事、という風にとる訳です。対照はコントラストと言えばいいのに、なんて思ったり。しかも、心理学で「統制群」みたいな用語もあったりします。
ここで引用。

実験とは,干渉変数をできるだけ統制し,着目したい独立変数の値を変化させた状況を人為的に作り出して,従属変数の変化を測定するという手続きにほかならない。調査においては,自然な状況で独立変数と従属変数をそれぞれ測定し,相互の関連を見ようとするのと対照的である。
P129

重要なのは、人為的にある状況をきっちりと設定し、変数を統制する、という所。こうする事で、実験は因果関係を見出しやすい方法と言える訳ですね。これは見方をかえると、もしここら辺の設定がきちんとされていないなら全く結果が信用出来なくなる虞がある、というのを意味します。
それから、心理学では、こういった人工的な状況で得られた結論が、実際の人間の活動の場にも当てはまるのか、という見方もなされます。つまり、「生態学的妥当性」と言われるものですね。噛み砕いて言うと、それって私達が生活してる状況を説明するのに役立つの? といった問題意識ですね。この事については、説明の範囲を注意深く弁えていれば、実験研究によって得られた知見はとても役に立つだろう、と思っています。あるいは、基礎的な心理的原書については、条件を厳密に統制したからこそものが解る、という事もあるでしょう。

○被験者の割り当て

干渉変数を統制する、と言っても、あらゆる条件を掘り出して全部コントロールしていく、ていうのはもちろん不可能です。だから、特別に影響を与えそうな変数に着目してそれを揃えるとか(男女の性別を考える、とか)、各群に(今の場合だと、どの教育方法を行わせるか、という事になるでしょうか)「無作為」に割り当てる、という方法などがあります。ここで無作為というのは、適当て意味では無く、確率的な手続きに基づいて、という事。そうすると、着目する独立変数以外を全部ひっくるめてばらけさせる事が出来る訳です。もちろん、結果的に偏ってしまう場合もありますが、偏り方は数学的(統計学的)に評価出来る、というのがポイントです。たとえば、薬剤の効果を見るのに、確かめたい薬とプラセボ群を比較する、というのが重要な方法として紹介される事がよくありますが、そこで本質的に重要なのは、実は無作為化です。RCTのR。

3.実験における指標のとり方の工夫

○反応時間―知識構造と文の真偽課題

心理学で測る指標、色々あります。「心」を直接は測れないから、外側に出てくる「行動」を測る、というのが心理学の手法です。測るのは、さっき例に出てきた、見えた長さをガイドを用いて測るものや、再生出来た単語の割合など。で、よく用いられるものとして他に、反応時間(reaction time)があります。

本章で紹介されているのは、コリンズとキリアンの実験。「意味ネットワークモデル」というものを検証した実験です。
彼らは、人間の知識の構造が、「階層的」なネットワーク構造をなしていると考え、それを実験によって検討しました。これだけじゃ解りにくいので、意味ネットワーク、辺りで検索してみて下さい。

そこで実験されたのは、1)カナリヤは黄色い 2)カナリヤは飛ぶ 3)カナリヤは食べる  などの文の真偽を判定させその反応時間を測定する、というもの。前の方ほどカナリヤ固有の特徴で、後に行くほど「カテゴリーを上にたどって判断」しなければならないので、後の方ほど反応時間が長くなる、と予想した訳ですね。意味ネットワークモデルが適切ならば、後の方ほど判断に時間がかかるであろう、と。そして実際、その通りの結果になり、モデルは支持された、という事です。※ここら辺、本当は哲学上の難しい問題が絡んできますが、そこは措いておきましょう
このように、反応時間という指標が、一つの理論的なモデルを検討するために用いられる、という訳ですね。

○自発的な課題の遂行時間――内発的動機づけの強さ

ここは略。デシによる研究の紹介。

○操作的定義とさまざまな測度

内発的動機づけみたいに、「直接観察出来ない」ものを測りたい場合、外に出てくる反応を測る訳ですね。内発的動機づけだと、それを、「自由時間内でパズルにとりくむ時間」という風にして、その時間を測って内発的動機づけの程度とする。そういう風に、心理的なものを測定可能な指標で表現する事を、「操作的定義」と呼びます。そして、指標を測度(measure)と言います。

これ、ちょっと考えるとものすごく難しい事ですよね。ある心理的な事を測りたいとして、何らかの測度(尺度)を考える。で、その測度が適切なのか、という所が議論を呼ぶ所。元々測れないものを測ろうとしている訳ですからね。だから、すでに良いものと確認された他の指標と比較して、よく出来ているかを慎重に検討したり、という事が重要となります。つまり、心を測る「ものさし」を作って使う、という感じですね。ある心の状態を調べたいとする、その状態は、この「ものさし」で測った結果だ、と定義(操作的定義)する。そして、その「ものさし」を、測度や尺度と呼ぶ、と。


参考文献


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2009年3月17日 (火)

ノート:心理学研究法(11)

○第9章 サンプリングと統計的推測(南風原朝和)

§1 母集団とサンプル

▼目標母集団

量的調査によって仮説の検討を行う場合、その仮説が「どのような集団」において成り立つのかを考える。年齢や職業によらず一般的に成り立つのか、ある範囲の年齢や職業群において成り立つのか。←つまり、「研究結果をそこに一般化したい集団」:目標母集団(target population)

▼達成母集団

実際の研究は、目標母集団に属する全ての人を対象には出来ない→一部をサンプル標本)として選び研究する。

第6章での例、「ある大きな大学の新入生からランダムに選んだ100人の被験者」。←目標母集団を「日本の青年」とすると、このサンプルは、目標母集団から直接選ばれた事にはならない。目標母集団の部分集合たる「ある大きな大学の新入生」から選ばれたサンプル。実際にサンプルを選ぶ際に対象となる集団を、達成母集団(achieved population)という。

▼一般化の問題

目標母集団と達成母集団が異なる場合←サンプルで得られた結果をどこまで一般化出来るか、という問題がある。

  • 目標母集団:「60歳以上の女性」
  • サンプル:高齢者のためのスポーツ大会への参加者(短期間に大勢のデータが集められるから、などの理由)
  • →達成母集団:「60歳以上の女性の内、スポーツ大会への潜在的な参加者集団」
  • その母集団(ここでの達成母集団)は、目標母集団に較べて、身体的にも精神的にも健康度が高い事が予想される。
  • 従って、この標本調査で得られた結果を目標母集団に一般化する事には問題がある。

これらを考えて、過度の一般化を避けるよう心がける必要がある。

§2 サンプリングと統計的推測

▼サンプリングに伴う結果の変動

ある母集団からサンプルを選ぶ→実際にどういう人が選ばれるかによって、サンプルにおける結果は変化する。

本書では、100人の母集団から大きさ8のサンプルを採り出して相関係数を計算する、という例が出されている。そこでは、採られたサンプルによって、0.3程度も相関係数が異なる事があるのが示されている。つまり、100個の要素の中からランダム(無作為)に8個の要素(大きさ8のサンプル)を採り出して相関係数を計算するのを繰り返すとすると、その都度採り出されるサンプルは異なる訳だから、そこから算出される相関係数の値も異なる、というのを意味する。

大きさ100の母集団から大きさ8のサンプルを抽出して相関係数を計算するのを1万回繰り返して(つまり、標本の”数”が1万)ヒストグラムを描いた図が載っている。そこでは、かなり広く分布しており、母集団における相関係数から大きく離れた値もある程度の割合がある。これは、サンプルが小さいから誤差も大きくなるというのを意味する。

▼統計量の標本分布

平均や相関係数等の統計的指標に関して、「母集団における値」を母数(parameter)と呼ぶ。

対して、サンプルに依存して変動する値を統計量標本統計量)と呼ぶ。母数は、全数調査を行う場合等以外、通常は未知である。

サンプリングに伴う統計量の値の変動を示す分布を、その統計量の標本分布と呼ぶ。つまり、母集団から大きさ n のサンプルを抽出して算出される統計量の分布、という事。先の例で言うと、大きさ100の母集団から大きさ8の標本を抽出して計算した相関係数をヒストグラムに描いたものが、標本分布となる。母集団に色々の仮定をおけば、標本分布は数学的・理論的に導ける。

▼サンプリングのランダム性

統計量の標本分布を数学的に導く場合、「サンプルが母集団からランダム(無作為)」に選ばれる事が前提となる。

ランダムサンプリング:その母集団に含まれるどのメンバーが選ばれる可能性も等しく、さらに、一組のサンプルとしてどのようなメンバーの組が選ばれる可能性も等しくなるようなサンプリング。

母集団が、メンバーを特定出来るようなものであれば、ランダムサンプリングはそれほど難しく無い。しかし、母集団が非常に大きい場合等は、容易では無い。

現実の心理学研究――知り合いの複数の教師に依頼して、その人達が担任する学級の子ども達を被験者にする、というようなやり方がしばしば見られる→サンプリングはランダムとは言えず、そもそも母集団が何であるかすらはっきりしない。

次節以降で述べる統計的推測――ランダムサンプリングを前提として導かれた標本分布を基礎としたもの。従って、母集団からのランダムサンプリングがなされていない場合には、その方法は厳密には適用出来ない。しかし、現実の心理学研究では、ランダムサンプリングがなされていない場合も、統計的推測の方法が適用されている。

筆者(南風原氏)の考え:「実際のサンプルに合わせて母集団を限定する」作業が必要←サンプルの結果の無制限な一般化を防ぐ。

しかし、実際のサンプルがランダムサンプルで無いという事実は変わらない。これについては、

  • ランダムサンプルと看做して統計的推測の方法を利用する立場
  • それらの方法を全く利用しない立場

が考えられる。本書では前者の立場。

§3 相関係数に関する検定

▼統計的検定

心理学の研究では、サンプルで得られた相関係数等の統計量の値を解釈する時に、統計的検定を利用する事が多い。

例:相関係数に関する検定→「サンプルで得られた相関係数の値は、母集団における相関がゼロであるということと矛盾するほどに大きな値であるかどうか」という判断(無相関検定)。

つまり、研究では母集団の性質を知りたいが、実際には標本しか得られないので、標本で得られた値から母集団の性質を「推測」する必要があるという事。その場合に、母集団がこうであれば、標本ではこういう値が出るであろう、というのが数学的に導かれる(標本分布)のを利用する。つまり、それを逆に使い、「標本でこういう値が出たという事は、母集団はこうなっているだろう」と「推測」するという意味。今の例では、母集団において相関関係があるかを知りたい訳だから、「母集団において相関がゼロである」という仮説を立てて、それを調べるという事になる。

▼帰無仮説と棄却域

仮説:母集団における相関係数はゼロである。

この仮説が成り立っているとしたら、その母集団から抽出してきた標本から得られた統計量はどういう値をとるか、というのが数学的に導ける。そして、どうも、母集団の相関係数がゼロであるとすると、この標本統計量(本書では標本相関係数)が出る確率的は小さいようだ、だから、そもそも仮説:「母集団における相関係数はゼロである」という仮説が間違っているのだろう、と判断する。そうすれば、そもそも確かめたい仮説である所の、母集団において相関関係がある、というのを支持する事が出来る。ここで、最初に立てた仮説を、帰無仮説(null hypothesis)と呼び、帰無仮説が正しいとした場合(帰無仮説のもとで)の標本統計量の分布(ここでは標本相関係数の分布)を帰無分布と言う。

つまり、実際に得た標本から計算した統計量よりも極端な値が出現する確率が小さい場合、それは母集団に関する最初の仮説(帰無仮説)が間違っているからだと判断する、という事。そして、その「小さい確率」の基準を有意水準と言い、そこに入れば棄却するという領域を、棄却域と呼ぶ。棄却域に入った場合、帰無仮説を棄却(reject)する。その事を有意である、と言う。

▼有意となる相関係数の値とサンプルサイズ

サンプルサイズが小さい場合――サンプルから得られる相関係数の値は安定せず、母集団における値(これは、母集団における定数、つまり母数)から離れる可能性も大きい。

サンプルサイズが大きい場合――サンプルから得られる相関係数の値は安定し、標本分布の広がりも小さくなる。

母集団相関係数がゼロ、という場合の標本分布(帰無分布)の広がりは、サンプルサイズが大きくなるほど、ゼロの周りに集中し(つまり、標本を抽出して相関係数を計算すれば、ゼロに近い値をとる確率が大きい)、広がりも小さくなる。

つまり、サンプルが小さい場合は、標本での相関係数がかなり大きくならないと有意にはならないし、サンプルサイズが大きいと、それほど標本での相関係数が大きく無くとも、有意になる、という事。

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以下、推定、信頼区間の計算、信頼区間の大きさを一定にして例数設計をする、という説明がありますが、簡潔過ぎて、まとめても訳が解らないと思うので、省略します。多分、上の検定の説明も、不案内な人は混乱必至でしょう。

不明な所があれば、コメントを頂ければ。可能な限り説明しますし、私の手に負えない部分は、手助けして下さる方がいらっしゃるかも…。統計の具体的方法について知らなくても、「有意」等の概念に関しては関心がある、という場合もあると思いますので。

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2008年12月29日 (月)

ノート:心理学研究法(10)

○第8章 信頼性と妥当性(平井洋子)

数量で表される物理的な特性。身長や体重――巻尺や体重計で直接測れる

人の心理的特性――心というブラックボックスに入っていて、直接測れない。構成概念

心理学――測ろうとする心理的特性の強弱に応じて反応が分かれるような質問を与え、返ってきた反応を介して「間接的」に特性の強さを測ろうとする。

→測定誤差の混入(人の反応は状況によって変動するから)

§1 測定誤差

人の日常――行動や性格に一定の傾向と強さがある

外から観測出来る行動・態度・発言に注目し、その平均的なレベルが対象の特性レベルと考える。

心理学的測定(ここでは、古典的テスト理論の測定モデルに基づいて説明)――測定される行動や反応を、

  • 平均で示される特性レベル
  • 状況によって変動する部分

に分けて考える。

観察や心理検査の結果から、個人の特性レベルをあらわす得点を求めたとする。

  • 観測された得点:X
  • 個人の特性レベル:T
  • 状況から受ける影響:E

X=T + E

と考える。

  • T:真の得点(True Score)――同じ測定を繰り返した時、その人が示す平均的な特性のレベル。個人ごとに異なる定数。
  • E:誤差(Error)――平均的な特性レベルと観測得点 X との食い違い。
    • ランダムに発生する測定誤差
      • 内的な要因
        • 集中力、やる気、興味、体調 などの変動
        • 勘違い、見落とし、度忘れ、記入ミス
      • 外的な要因
        • 検査場所(照明、騒音、机や筆記具など)、実施者、採点者、検査項目などの違い
        • 採点ミス
    • 系統的な測定誤差――どのような状況でも一貫して生じる誤差。真の得点 X に組み込まれる(本当に知りたい特性とは無関係な要因)。
      • 内的な要因
        • テスト不安・緊張性
        • 何にでもYesと答える傾向
      • 外的な要因
        • 使用言語

↑分類は状況によって変わる。

§2 信頼性の概念

▼誤差の大きさと信頼性係数

X=T + E だから、E が小さければ、X は T に近い値になる。T=X - E

E :その時々にランダムに発生する様々な要因の和。

信頼性係数(Reliability Coefficient):誤差Eの変動がどの程度大きいかを示す測定精度の指標――観測得点 X の変動の中で誤差 E の変動が占める割合を1から引いた値

観測得点 X の分散=真の得点 T の分散 + 誤差 E の分散

信頼性係数=1 - E の分散 / X の分散=T の分散 / X の分散 ※0から1の間の値をとる

信頼性係数が高ければ(誤差の占める割合が小さければ)、真の得点 T に近い得点が安定して観測される、と言える。

▼再検査法

▼代替検査法

▼項目の内的一貫性による方法

信頼性係数の大きさを推定する方法をまとめる。

  • 再検査法――同じ被験者群に一定の時間間隔をおいて同じ測定を繰り返し、2回の得点間の相関係数を信頼性係数の推定値として用いる。
    • 高い信頼性係数が得られた場合→測定の安定性を示すつまり、同じものを繰り返して同じ様な点が出れば、安定して測定出来ている、と看做せる
  • 代替検査法
    • 同じ心理的特性を同じ難易度で測定する検査が複数ある場合。→代替検査あるいは平行検査:記憶効果(同じ検査を行った場合、以前に実施した時の事を憶えている)などを考慮する際に用いられる
    • 代替検査法――同じ被験者群に複数の代替検査を連続して実施→2回の得点間の相関係数を信頼性係数の推定値として用いる。
    • 高い信頼性係数が得られた場合→測定の等価性を示すつまり、異なるテストが同じ様な得点を示すのであれば、同じものを測れていると看做す
    • 検定試験や資格試験が好例←毎回設問が入れ替えられ、難易度は一定で、どの回を受検しても本質的な違いが無い(知っている問題が多く出るか、といったような運の要因が、ランダムな誤差として考えられる)
  • 項目の内的一貫性による方法
    • ある心理的特性を測りたい時、それを測る検査項目を多数集めて一つの尺度とする事がある。
    • →異質な項目(別の心理的特性を測る項目や、ランダムな誤差の影響を受けやすい項目)がまじると、観測得点の中で測りたい特性が占める割合が下がる。
    • 内的一貫性による方法――検査項目間の相関関係を利用して項目間の等質性を推定→クロンバックのアルファ係数(Cronbach's Coefficient Alpha)を求める
    • アルファ係数――検査項目の全ての組み合わせについて相関係数を求めた時、それが全体的に高くなるほど係数の値が大きくなる性質がある。
    • 高い信頼性係数が得られた場合→項目の等質性を示す参照⇒クロンバックの α 信頼性係数

参考資料⇒心理統計の注意点:信頼性についての注意点(大変重要な事柄が書かれていると思うので、是非参照して下さい)

§3 妥当性の概念

▼測定の適切さ

ランダムな測定誤差が少ないだけでは、良い測定とは言えない。

妥当性(Validity)――ある心理的特性を測るために、その検査なりを行うのがどの程度適切か、得られた得点がどの程度適切にしようされているか、と示す概念。つまり、測りたいものをちゃんと測れているか。測定の偏り。信頼性は、測定の精度を示す。

同一の検査でも、使い方によって妥当性が変わる。←妥当性が、被験者との適合性や測定結果の用いられ方まで含んだ概念だから

心というブラックボックスを間接的に測定せざるを得ないから、妥当性があるかどうかを常に意識しておく必要がある。体重や身長は明確だが、心理的特性のような構成概念は、測りたいものが全く測れない可能性もある

妥当性検証の局面

  • 検査や尺度
    • 適切な測定形式
    • 適切な実施
    • 適切な採点
  • 測定結果(得点)
    • 適切な解釈
    • 適切な使用
  • 心理的特性が的確に反映されているか
  • 測定対象に適合するか

▼妥当性のさまざまな証拠

例:文章理解力の測定

測定が間接的→妥当性の検証も、証拠を積み上げながら間接的に行う。

  1. 内容からみた妥当性
    • 検査や尺度が正しく、測定したい心理的尺度を反映しているか
    • 検査項目⇔測定の内容領域⇔測定したい特性 ←これらの関係を検討する
    • 一般的な文章読解力を測定した場合→バラエティに富む素材が用いられているか、一般的な文体や語彙、漢字が用いられているか、特定分野の予備知識が有利に働かないか
    • 外部の専門家や現場の人に検討を依頼する
  2. 被験者の反応からみた妥当性
    • 回答データの面から――被験者の回答が理論上想定した通りのパターンを示すかどうか。想定外のパターン→妥当性が無い。項目の正解率や項目間の相関係数、因子分析などを手掛かりにする。
    • 回答データ以外――被験者の回答行動を観察、感想を尋ねる、など。回答に要する時間や設問の難度な、解き方など。
  3. 他の変数との関連性からみた妥当性
    • 測定したい心理的特性に理論的に関連のある、別の心理的特性が存在する事が多い。例:文章読解力は、漢字能力や語彙力と理論的に強い関連があり、論理的思考力と中程度の関連があると想定出来る
    • →それらの特性を測る検査を行い、文章読解力の得点との関連を調べ、相関関係を見る。

§4 よい測定を行うために

信頼性が低い→ランダムな測定誤差の割合が大きい:測定したい心理的特性が観測得点にあまり含まれない→妥当性も望めない

信頼性を高めようとして、内的一貫性を高め過ぎる→項目が等質になり過ぎる→測定内容が偏る→測定したい内容領域が部分的にしか測れない極端な話、全部同じ質問にする、とか

必要な高さの信頼性が確保されたら、妥当性を追求した方が良い。

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2008年12月28日 (日)

ノート:心理学研究法(9)

○第7章 質問紙による研究(平井洋子)

§1 質問紙の特徴

質問紙(Questionnaire)――用紙に一連の質問を配置したもの。回答方法に関する指示なども書かれている。用紙を見せ口頭で回答を得る形式や、用紙上に質問を記し回答も用紙上に記入する形式(紙筆式:Paper and Pencil)がある。※本章では紙筆式を扱う

▼調査系の質問紙と検査系の質問紙

質問の内容や研究目的に応じて多種多様な質問紙がある。

  • 知りたい対象
    • 集団の傾向(調査系
      • 測定内容
        • 属性(性・年齢・職業など)
        • 意見
        • 行動・実態など
      • 質問紙の具体例
        • 国勢調査
        • 世論調査
        • 消費者アンケート
      • 回答の得点化は想定していない場合が多い
    • 個人の特性の強さ(検査系
      • 測定内容
        • 性格
        • 態度・価値観
        • 興味
        • 知識
      • 質問紙の具体例
        • 適性検査
        • パーソナリティ・インベントリー
        • 問診表
        • 資格試験・能力
      • 回答の得点化が行われるのが一般的

一つの質問紙に両方のタイプの質問が混在する事もある。

学力調査のように、個人の得点を出すと同時に学校や自治体単位でも集計されるなど、同じ質問が両方の目的に用いられる事もある。

▼質問項目の形式

  1. 多肢選択式(Multiple-Choice)
    • 複数の選択肢を与え、当てはまるものを選択させる形式。与える選択肢が2つの場合→強制選択式(Forced-Choice)
  2. 正誤式(True-False)
    • 質問に対し、正/誤 で答えさせる形式。性格、態度、価値観、興味などの検査でよく用いられる。
  3. チェックリスト(Checklist)
    • 形容詞や事物を複数並べ、当てはまるものをいくつでも選ばせる形式。個々の形容詞や事物について○×で評定する正誤式と実質的に同じ。調査系の質問紙でよく用いられる。
  4. 評定尺度法(Rating Scale)
    • 質問に、どの程度自分に当てはまるかを段階評定させる形式。段階によって、「○件法」と言う。4件法から7件法がよく用いられる。
  5. 自由記述式(Free Response)
    • 質問と回答欄を与え、自由に回答を記述させる形式。
      • 利点:多様な情報が集められる
      • 欠点:回答の整理が煩雑で回答の負担も大きい

▼質問紙による研究の長所と短所

面接や観察、実験などの研究法と異なり、質問紙による研究では、書面上でデータ収集が行われる。

長所

  • 多数の回答者に対し一度に実施出来る
  • データの収集条件を統一する事が出来る
  • 実施が簡単
  • 回答者の心理的負担が比較的小さい
  • 本人しか解らない内面的な事や、過去・将来の事についてもたずねられる。

短所

  • 回答者の言語的理解力に依存する
  • 再質問や回答の確認が出来ない(意味の取り違えに対処出来ない)
  • 無意識的・意識的な回答の歪曲があり得る
  • 回答者が意識していない事は測定出来ない

§2 質問紙を用いた研究の流れ

▼全体的な流れ

  1. 実施目的と対象者の明確化
    • 仕様書――実施目的や測定内容、質問項目の数・バランス・配置などを具体的に書き下ろす
  2. 質問紙の作成
    • 質問項目の作成
      • 先行研究
      • 日常的な観察
      • 専門家の知識や意見
      • 他者によるチェック
  3. 予備実施――本実施の前に、上手く機能しない質問項目や編集上のミスを見つける
    • 項目分析
    • 質問の修正と入れ替え
  4. 本実施
    • 無効回答のチェック
    • コーディング
    • データ入力
    • 100名以上のデータを集めるのが一般的
  5. 集計と分析
    • 単純集計――回答の分布、最小値・最大値、平均値、標準偏差などを確認
    • クロス表
    • 多変量解析
  6. 結果の報告

▼質問紙の設計

▼質問紙の編集

具体的事例がありますが、まとめるのが難しいので省略。

こちらなどを参考に⇒「ここはどこ」質問紙の設計

ワーディング(言い回し)について、良い質問紙を作るためのワーディング、というのが箇条書であるので、引用します(P89)。

明快で簡潔な表現を使う

  • 語彙は平易でオーソドックスに
  • 文は短く単純な文法で
  • 形容詞や副詞の使用は最小限にする

ひとつの質問文の使用にはひとつの内容のみ

否定的な表現を避ける

  • とくに二重否定を避けること

不快感をよぶような表現を避ける

  • 差別的な表現
  • 決め付ける表現
  • プライバシーに立ち入った内容

誘導的な表現を避ける

  • 規範や常識をちらつかせる
  • 好ましい(好ましくない)ニュアンスをもつ表現

用語や表記を統一する

§3 質問紙の実施と利用上の注意

実施者の果たす役割は重要。実施者の態度や行動一つでデータ収集が失敗する事もある。

  1. 回答方法の指示を徹底させる
    • 回答者は質問紙に記載された支持や注意事項を読むとは限らないので、口頭や板書でしっかり繰り返し伝える。
  2. 回答者の不安を取り除く
    • 回答者は、自分の回答データの扱いや公表の有無について不安に思う。データ処理や公表の内容などを説明する。
  3. 自発的な協力姿勢を引き出す
    • 回答者の中には、協力的で無かったり、どうでもいいといった態度の人もいる。実施目的を説明する際に解りやすく伝え、内容に興味を持ってもらうように努める。

既製の質問紙利用の際の注意――実施マニュアルや採点マニュアルが添付されていたら、手順は必ず守らなければならない。質問の削除や改変は行わない。行う場合は、自作のオリジナルな質問紙と考え、仕様書作成の段階からやり直すべき。

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2008年12月17日 (水)

ノート:心理学研究法(8)

第6章の続き。

§3 相関仮説の検証の例

先に出た「仮説A」、つまり、「現実自己と理想自己のギャップが大きい人ほど、向上心が強い」を例にとって説明。

▼質問紙の作成

青年を対象にし、現実自己と理想自己を測定する質問紙と、向上心の強さを測定するための質問紙を作成。

現実自己と理想自己――「他人のミスに対して寛大である」などの「よい」特性を表す項目20個を、4段階で評定。得点の範囲:20~80点。

  • 当てはまらない:1点
  • あまり当てはまらない:2点
  • やや当てはまる:3点
  • よく当てはまる:4点

「よい」特性を表す項目だけだと、「当てはまる」と答える人の得点が極端に高くなる可能性があるので、「悪い」特性(「気が短い」など)も適度に交ぜる。悪い特性は、点数を反転させる(「当てはまる」→1点)。そのような項目を、逆転項目と言う。

向上心――「何か失敗をしたときは、よく反省して次には失敗しないように心がける」などの項目10個。5件法(5段階)で評定。

▼被験者とデータ

被験者:ある大きな大学の新入生からランダムに選んだ100人母集団は、ある大きな大学の新入生全体

上の質問紙3つを被験者に実施する。量的調査のデータは、「被験者×変数」の形式の一覧表にまとめられる。※「×」はクロスって事です。この場合、縦にAさん、Bさん(あるいは割り振った番号)…を取って、横に現実自己・理想自己・ギャップ・向上心の点数を書いて表にする。

▼データの分析と結果の解釈

変数間の相関関係の強さを、相関係数という統計的指標によって表現出来る。

相関係数

  • -1から+1までの範囲の値を取る。
  • -は負の相関、+は正の相関を示す。
  • 絶対値の大きさが、相関関係の強さを表現する。

今見ているのは、ギャップが大きい人ほど向上心が強い、という仮説だから、ギャップの値と向上心の値との相関係数に着目する。ここでは(本書の架空のデータ)、0.52(本書では0が省略されていて、.52となっていますが、ブログでは見にくいのでつけます)という正の値。0を省略して書くか、とかは、論文の投稿の規程とかにもよるらしい。省略しない方がいい、という意見も見ます。

ギャップの値と向上心の得点間の関係を、散布図で図示出来る。参照⇒散布図

点が、右上がりの直線の近くに集中していれば、相関係数が大きくなり、全ての点が直線上に一列に並べば、最大値の1になる。散布図が右下がりであれば、相関係数は負の値になる。ここで解るように、この文脈で言う「相関係数」は、「直線的な関係」を見るもの。それを、「ピアソンの積率相関係数」と言います。ピアソンは人の名前。だから、曲線的な綺麗な関係があっても、この相関係数はあまり高くならなかったりします。

相関係数がいくら以上であれば、仮説が支持されたと考えて良いか?

→仮説自体が、「正の相関関係がある」という大雑把なものなので、問いに明確に答えるのは困難。

→心理学の研究でしばしば用いられる基準――得られた相関係数が統計的に有意か否か。←この基準による判定の手続き:統計的検定(第9章参照)

ちょっと触れます。この場合の統計的検定は、

「母集団において相関関係があるか」となります。

で、仮説は、

「母集団において相関係数は0である」

とします。そして、母集団から標本を採ってきて(ここでは、大きさ100)相関係数を計算して、

「母集団で相関係数0だとしたら、標本でこんな値が出るのはどのくらいの確率よ?」

というのを計算します(確率論によって)。で、その確率が前もって決めていた値(たとえば5%)より小さければ、

「こんなに小さいんだから、母集団でも相関係数は0じゃ無いに違いないぜ!」

として、最初に立てた仮説、つまり「母集団の相関係数は0である」という仮説を棄てます。

ちなみに、上に書いた、「前もって決めていた確率」より小さい場合、それを「統計的に有意」である、と言います。

§4 相関係数および関連する統計的指標

▼共分散

相関係数→共分散という、2変数間の関係を表すより基本的な指標を用いて定義される。

共分散の求め方。

変数xの相加平均を求める。いわゆる平均値です。

Xheikin_4

変数yの相加平均を求める。

Yheikin_2

変数間に正の相関関係があるとは――ギャップが(全体のギャップの)平均より大きければ向上心も(全体の向上心の)平均より大きく、ギャップが平均より小さければ向上心も平均より小さい、という関係。

→各被験者について、値と平均値との差を取る:「ギャップの値 - ギャップの平均」と「向上心の値 - 向上心の平均」これを、「(平均からの)偏差」と言います。たとえば、平均60点のテストで85点取れば、偏差は+25。50点だったら、偏差は-10

→正の相関関係があるならば、「ギャップの値 - ギャップの平均」と「向上心の値 - 向上心の平均」を掛け合わせた値は正になる、つまり、「正×正」または「負×負」一方が平均より高いのにもう一方が低ければ、プラス×マイナスで負数になる訳ですね。で、それを足し合わせれば、相関関係がどうなっているか解る。

→全ての被験者について掛け合わせた値を出し、それを足し合わせる。下の公式の分子です。これを、「偏差積和」と言います。偏差 積 和 つまり、xとyの偏差を掛け、それを全部足す(総和)。だから、「偏差積和」そして、それを平均する(被験者の総数で割る)。データ数で割らないと、データ数が増えるほど値が大きくなる。

↓クリックで拡大

Kyoubunsan

Sxy:(変数xとyの)共分散 ※ここでは、xはギャップ、yは向上心

正の値であるから、正の相関関係がある事が判る。

共分散を解釈しやすいように加工した値が相関係数。→その加工のために、標準偏差という別の指標が必要。

▼分散と標準偏差

同一変数の共分散を求めたもの:分散

Bunsan

左辺が分散。

分散は、ばらつきの指標になる。つまり、平均から離れているものが大きければ、分散の値も大きくなる。

共分散では、分子は「偏差積和」でした。分散では、「偏差平方和」と言います。何故かって? 偏差 平方 和 だから。「積」が「平方」になっているだけですね。同じ変数で平均からのずれを掛けるので、それは平方、つまり2乗になります。上の公式に出てますね。偏差積和と同じように書くと(xの平均をmとする)、

(32 - m)(32 - m) + (9 - m )(9 - m )……(30 - m)(30 - m)

となるのですね。だから、「同一変数の”共分散”」が分散になる訳なのであります。

分散の正の平方根:標準偏差

Hyoujunhensa_2

S:標準偏差

上に書いてあるように、最初に2乗したから、それを開いてやります。そうで無いと、単位が変わります。何故2乗するか、というと、平均からの偏差(ずれ)をそのまま足し合わせてデータ数で割ると、0になってしまうから。

向上心の標準偏差=4.00

▼相関係数

共分散を、それぞれの変数の標準偏差で割る。

Soukankeisu_2

r:相関係数――分子:xとyの共分散 分母:xの標準偏差とyの標準偏差の積

今の例では、

r = 16.73 / ( 8.04 * 4.00 ) = 0.52

従って、ギャップと向上心との相関係数は0.52になる。

なぜ相関係数を用いるか。

  • 共分散は、値が単位に依存する。
  • 例:身長と胸囲の関係を知りたい→単位をセンチメートルにするかインチにするかで、値が変わる。
  • 共分散を標準偏差で割った相関係数は、単位の取り方に依存しない。
  • 共分散の取り得る値の範囲は、各変数の標準偏差の大きさに依存する。
  • 相関係数の取り得る範囲は、-1 ≦ r ≦ 1 と決まっているので、都合が良い。

▼統計ソフトウェア

色々あるよ。

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2008年12月15日 (月)

ノート:心理学研究法(7)

第III部 量的調査の方法

○第6章 量的調査による仮説検証(南風原朝和)

§1 量的調査の特徴

▼データ

量的調査の「量的」――基本的に、データの性質をあらわす。

量的データ――知能検査の得点や性格検査における外向性、協調性などの得点のように、数値の大小によって個人の特徴をあらわすデータ。

※どの政党を支持するか、といった本来質的なデータも、集計して数量に(政党支持率など)まとめられるので、「研究法の文脈では」量的データに分類される。統計学では、性別や政党支持などのデータは、質的データと呼ばれる。尺度水準の話。性別や政党支持などのデータは、名義尺度であり、従って質的変数という事です。量的/質的 研究法の文脈ではひっくるめて「量的データ」と分類する、という意味。質的研究法との対比。

変数――個人ごとに特定の値(あるいはカテゴリ)をとるもの。あらかじめどの変数についてデータを収集するかを決めた上で調査に取り掛かる。

量的データは、データの量の多さでは無く、数量によって個人や集団の特徴をあらわすという性質を意味する言葉。場合によっては一人の被験者だけを対象にしてデータを採る。定量的に測れる、と言っても良いかも知れません。

▼研究の目的

主に、あらかじめ設定された仮説を検証する目的で実施。探索的な研究のために実施される場合もある。多くは仮説検証型の研究で用いられるという事。

▼データの分析

通常、2つ以上の(場合によって100を超える)変数について、多くの被験者に関するデータを収集。

主として変数間の関係という観点から分析。例:

  • 「家庭にある本の数が多いほど、その家の子どもの言語能力は高い」という関係をあらわす仮説が成り立つかどうかを調べる。本の数も言語能力も量的データとして数量化されます。本の数はシンプルですが、言語能力については、先行研究などが参照されて、適切な尺度(各種テスト等)が用いられるという事。

統計的方法を用いて分析される。

量的調査を実施して結果をまとめるためには、統計学に関する基礎的な知識が不可欠。絶対必要

§2 量的調査で検証される仮説とその検証

▼相関仮説

今挙げた仮説(「家庭にある本の数」云々)を統計的に捉える→ある集団において、一方の変数の値が大きいほど他方の変数の値も大きいという正の相関関係を表現したもの。※一方の変数の値が大きいほど他方の変数の値は小さいという関係――負の相関関係次回、散布図とか出てきます。

集団における相関関係を仮説としたもの――相関仮説

例:

  • 「現実の自己に関する評価と理想とする自己のあり方とのギャップ(←変数)が大きい人ほど、向上心(←変数)が強い」 現実自己と理想自己とのギャップという変数と向上心という変数についての相関仮説。ギャップも向上心も、各種心理測定尺度を用いて測定したりして数量化。そして、相関関係を数学的に表す(相関係数)。次回出てきます。

▼共変仮説

「現実自己と理想自己のギャップが大きいほど、向上心が強い」(仮説A)――相関仮説→集団を前提。ある一時点における関係(静的な関係)を表現。ある人がギャップと向上心という2つの変数を持つと考えて、集団の傾向を見る。そして、2つの変数に相関関係があるか調べる。

「人」を「時」に替える。

「現実自己と理想自己のギャップが大きいほど、向上心が強い」(仮説B)――共変仮説――一人ひとりの個人に対して適用出来る。時間の経過の中での変数間の個人内の共変関係をあらわす。

共変関係の直接的な検証――同一の個人について、時間をおいて繰り返しデータを収集する必要がある。1回限りの調査では原理的に検証不可能(相関仮説は可能)。時間的な変化を縦断的に見なくてはならないから、一時点を切って検証は出来ない、という事ですね。集団的な関係を見る相関仮説の場合は、横断的に時間を切るから、一回の研究で確かめる事が可能。

▼因果仮説

「現実自己と理想自己のギャップが大きい人ほど、向上心が強い」(仮説A)

「人ほど」→「から」 表現を少し変える。

→「向上心が強いとしたら、それは現実自己と理想自己のギャップが大きいからである」(仮説C)

現実自己と理想自己のギャップの大きさ(原因)→向上心の強い弱いが決まる(結果)――因果関係を意味――因果仮説

因果仮説の直接的に検証するのは極めて困難。かりに仮説Aと仮説Bがデータによって支持されたとしても、それだけでは仮説Cの因果関係が示されたとは言えない(逆向きの因果関係でも説明出来るから)。因果関係をどう証明するかは、科学の根本の問題なのだと思います。科学哲学にも絡んでくるのでしょう。疫学の方法も参考になるでしょう。

仮説Cと正反対の因果仮説(例:向上心が強い時に、それが原因となって理想自己を押し上げる)のような、主張したい因果関係以外の説明や解釈が成り立つ可能性を論理的に、あるいは何らかのデータに基づいて弱められれば、その程度に応じて、主張したい因果関係が支持される事になる。逆向きの因果関係を否定して、そもそも検証したい因果関係を支持していく、という論理ですね。

相関仮説や共変仮説の検証――因果関係が正しいための必要条件のチェックという意味がある※因果仮説が正しくても、データの妥当性が低いなどで相関関係や共変関係が確認出来ない場合もあり、厳密な意味での必要条件のチェックにはならない。妥当性や信頼性については、後で出てきます。

次回へ続く。

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2008年12月12日 (金)

ノート:心理学研究法(6)

○第5章 質的調査の実際と研究評価(下山晴彦)

§1 質的研究法のタイプ

質的調査――言語記述を中心とした質的データによる研究

質的研究――様々な種類の研究法が提案→研究法の分類に混乱も見られる

質的研究法の分類の枠組み――研究過程を軸/研究テーマを軸

研究過程のおおよその進行(相互に重なり合って進行)

  1. データ収集の作業
    • 面接法
    • 観察法
    • フィールドワーク
    • フォーカスグループ法
    • 日誌法
  2. データ処理の作業
    • グラウンデッドセオリー
    • 現象学的方法
    • KJ法
  3. 論文としての表現
    • エスノグラフィー
    • 事例研究法(広義にはエスノグラフィーは含まれる)

研究テーマ

  • 心理的事象――主に面接法によって収集された語り(ナラティヴ)のデータの記述・分析を通して研究
    • プロトコル分析
    • 会話分析
    • 談話分析
    • ライフストーリー研究
  • 社会的事象――主に社会的場面での参加観察やフィールドワークによって収集されたデータの記述・分析を通して研究
    • エスノグラフィー

§2 質的調査の実際例

▼質的調査の過程 ▼研究の概要:病院内学級における教育実践のエスノグラフィー

※ここでは、谷口明子氏の研究(『質的分析によるアプローチ』 大村 (編) 『教育心理学研究の技法』 福村出版 2000 に所収)を例に、質的調査の流れを紹介。まとめは省略します。

§3 質的研究の評価

▼質的研究法への批判

方法や結果のあり方についての疑問や批判

  • データの収集と処理の過程に客観性が欠如している
  • 仮説生成のプロセスが恣意的である
  • 得られた結果に一般性がない

↑量的研究法の観点からは、このような批判が見られるのは当然。

しかし、第3章で指摘したように質的研究法は,量的研究法とは異なった独自な方法論に基づいている。むしろ,研究についての理論的背景の相違を考慮するならば,両者を混同して考えること自体に問題があるといえる。

▼社会構成主義の考え方

量的研究法――唯一の客観的事実の存在を前提→客観的事実に関する理論(法則)を証明するために仮説を立てる→客観データによって論理的に検証。

質的研究法の理論的背景――社会構成主義(social constructionism)

社会構成主義――唯一の客観的事実というものを想定せず、社会的現実は人々の語りや交流から生成する相対的なものとみなし、その生成過程を記述し、そこから現実を具体的に理解するためのモデルを構成。

ここら辺の比較・対置は、私には非常にしっくりこないものがあります。

いずれも現象を整合的・論理的に説明するためのモデルを作って確かめる、という方向性を持っているはずで、そこに「客観的事実の存在」についての立場の違いを持ち出す理由が、よく解らないのです。と言うか、あるモデルで現象を説明するという立場を採る以上、それは少なからず客観的な構造を仮定しているのではないのかな。

▼質的研究の評価基準

  1. 事例の選択理論的サンプリングがなされているか
  2. データの収集と記述:データの記述の仕方は適切か
  3. データの分析:仮説(モデル)生成の仕方は適切か
  4. 産出された結果:提示された仮説(モデル)にはどのような意義があるか

§4 おわりに

比較的新しい研究法→研究の手続きや評価の仕方について、はっきりと確定した基準が確立している訳では無い。

量的研究法では把握しにくい現象を記述、分析するのに適した方法であり、今後の心理学研究方の可能性を広げるものとして期待。

質的研究法と量的研究法を組み合わせた統合的な心理学研究を発展させる事も可能。

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2008年12月10日 (水)

ノート:心理学研究法(5)

○第4章 質的データの分析(能地正博)

§1 質的データ分析とは

よく名前が挙がる伝統的方法

  • エスノグラフィ
  • 現象学的方法
  • グラウンデッドセオリー法
  • KJ法
  • 伝記法
  • 事例研究

分析手続きが比較的細かく明示されているもの、大部分が分析者に任されているもの、がある。

データ収集と並行して分析が行われるもの、収集後に行われるもの、がある。

概略が載っているが、図なので省略。

§2 分析に着手する

分析の初期――データの読みとデータの概念化(コード化)の開始が中心の作業。

▼データの読み

質的データ――主に記述的な形。それを何度も読む→文脈に気付くという機能。状況的文脈・社会的文脈・歴史的文脈。

▼概念化の作業

ちょっとまとめにくい…。ここら辺とか参考になるのかな⇒データ分析

概念化(コード化)データの内容に名前をつけたりする。名詞でも短文のかたちでも構わない。

§3 データ間の関連を探る

データに与えられたコードを整理し、その関係が探られる。

▼概念間の構造的/過程的関係の抽出

内容的な類似性に注目→まとまりに名前(高次のコード)をつけてさらなる概念化。

▼概念間の関係の「検証」

抽象的なので、ちとまとめにくいです。抜粋するしか無い。よって省略。

§4 データを再統合する

▼統合の核

リサーチ・クエスチョン(研究設問)が明確に言語化されているかを確かめる。

データに即したかたちでテーマが焦点化され、リサーチ・クエスチョンが確定していく。

コードのまとまりが複数存在→統合の核になるようなものが選択、コードの全体を横断的に再編成できるような包括的概念が構成。

▼仮説・モデルの提示

重要概念――メンバーチェック

§5 おわりに

省略

------------

この章、具体例が示されずに概略が紹介されているかたちなので、整理が困難でした。抜粋しても、ちょっと抽象的で解りにくいと思います。

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2008年12月 4日 (木)

ノート:心理学研究法(4)

第3章の続き。

§2 面接法

▼面接法とは

面接法――一定の環境において研究者が研究対象者と対面し、相互的コミュニケーションを通して情報を収集する方法。

利点

  • 対象者の内的世界を把握するのに優れている。
  • 対象者の表現に対してその場で介入出来るため、複雑な内容であっても研究者が求めているテーマに合わせて系統的にデータを収集できる。

→対象となっている人々の主観的体験を背景を含めて把握するのを目的とする質的調査に適した方法。

その一方、研究者と対象者の相互作用によって成立するものだから、研究者の影響が及びやすい。たとえば、

  • 対象者が研究者の期待を察知し、それに合った返答をしてしまう。
  • 親しさや信頼感などによって面接で語られる内容が変わってくる。

面接では、言語的コミュニケーションだけで無く非言語的コミュニケーションが交されるので、研究者には、相手の表情や身振りなどを観察し、非言語情報を的確に把握する技能も必要とされる。バーバル・コミュニケーションとノン・バーバル・コミュニケーション(NVC)。

▼構造化面接・半構造化面接・非構造化面接

面接法は、「研究者が対象者に質問する項目がどの程度決定されているか」、つまり、「そこで行われる面接の構造が事前にどの程度限定されているか」によって、構造化面接半構造化面接非構造化面接に分けられる。

構造化の程度によって、会話の自由度が異なってくる。

  • 構造化面接――事前に質問すべき項目が準備。研究者は、それを逐一質問して目標とするデータを系統的に収集。
  • 非構造化面接――質問する内容や目標とする回答をあらかじめ予想。質問項目のような明確な形態はとらず、会話の流れに応じて自ずと面接の目標に関連した内容が語られるように面接の進行を企てる。
  • 半構造化面接――構造化面接と非構造化面接の中間。あらかじめ質問項目は準備しておくが、会話の流れに応じて質問を変えたり追加したりして、目標とする情報を収集。

目的による分類

  • 調査面接――調査目的に合致した情報の収集のための面接。構造化面接や半構造化面接が主に採用される。
  • 相談面接――対象者の心理援助を目的とした面接。対象者の自発的な語りを共感的に聴く事が重視される。非構造化面接が採用される場合が多い。

調査か臨床か

  • 質的調査――調査面接
  • 臨床面接(臨床心理学の実践技法)――調査面接の一種である査定面接→相談面接(第13章で解説)

対象者に人数による分類

  • 個人面接
  • 集団面接

§3 観察法

▼観察法とは

観察法――対象の行動を注意深く見る事によって対象を理解する研究法。

分類

  • 観察事態
    • 自然観察法――条件を統制しない日常場面において、対象の行動をありのままに観察。複雑な事象をコンテクストを含めて把握出来る所が利点。
      • 日常的観察――日常生活の中で偶然に遭遇した出来事を記録。
      • 組織的観察――研究目的に沿ってあらかじめ観察単位をサンプリングし、それに絞って観察を行う方法(ただ単に対象を観察するだけで、状況を全て適確に観察するのは不可能に近い)。
        • 時間見本法――観察単位:時間
        • 場面見本法――観察単位:観察場面
        • 事象見本法――観察単位:観察する事象や行動
    • 実験観察法――ある行動に影響すると思われる条件(独立変数)を系統的に変化させ、行動や内的状態(従属変数)の変化を観察・測定し、条件と行動との因果関係を調べる。第10章で解説。
  • 観察形態
    • 参加観察――研究者が観察対象になる人々と関わりながら観察
      • 交流的観察――現実場面で観察対象と交流しつつ観察
      • 面接観察――面接場面で観察
    • 非参加観察
      • 直接観察――観察者が状況に入り込んで観察
        • 長所:観察者が様々な視点から観察出来るため、対象の状況を生き生きと、多元的に把握出来る。
        • 短所:観察者効果を及ぼし得るので、完全に自然な観察とは言えない部分も出てくる。
      • 間接観察――ビデオ等の観察装置を通して観察
        • 長所:観察者効果が弱い。
        • 短所:観察の視点が限定され、現象の一側面しか把握出来ない。

参考書では、表は大まかな分類しか書かれていませんが、細かい分類もすぐ把握出来るように、全部表に組み込んでみました。

§4 フィールドワーク

▼フィールドワークとは

フィールドワーク――研究者自らが、研究の対象となっている出来事や現象が起きている現場(フィールド)に出向き、その場で観察しながら対象となっている出来事や現象が生じる過程を調査する方法。

ただ単に研究対象の出来事や事象が生起する現場に身を置いてデータを収集すれば良いのでは無い。以下の手続きが必要(第5章で具体例とともに解説)。

  1. 参加観察
    • 研究者自身が調査対象となっている社会集団の生活に参加。
    • その一員として集団内部から対象を観察したり、内部の一員としての体験を記録。
    • そこで生起する事象を多角的に長期にわたって観察。
  2. 循環的な仮説(モデル)生成過程
    • 大まかな研究関心を決定
    • 探察的リサーチ・クエスチョンを設定
    • 初期データの収集・解釈
    • リサーチ・クエスチョンの練り直し
    • 追加データの収集と解釈
    • 追加データに基づいて仮説の修正と精緻化を繰り返してモデルを生成
  3. マルチメソッド
    • 質的調査――研究対象の出来事や事象が生じている状況を全体として把握する事が目指される。
    • →様々なデータ収集の方法(マルチメソッド)の中から研究対象となっている事象や要因に合わせて適切なデータ収集法を選択し、組み合わせる事で対象理解を試みる。
    • 参加観察が中核をなす。

§5 おわりに

  • 質的研究法は、量的研究法に比較すると新しい方法に基づくもの。
  • 様々なタイプの研究法が提案され発展しつつある段階。
  • 共通した研究方法や評価基準が最終的に確定されている訳では無い。
  • 未確立な点はあるが、心理学研究の可能性を広げる方法として、今後の発展が大いに期待。

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2008年12月 2日 (火)

ノート:心理学研究法(3)

第II部 質的調査の方法

○第3章 質的調査の考え方とデータ収集技法(下山晴彦)

§1 質的調査とは何か

▼質的調査の特徴

質的研究法――質的データを収集→分析・解釈による仮説モデル理論の生成・構築。

質的調査――質的研究法に基づく調査。

質的データ――数字や数量によって表現された量的データとは異なり、「ことば」の形式によって記述されたデータ。

質的調査の前提――質的研究法の基本的考え方→「人間の行動はその人が生活している日常的コンテクストの中で生み出され、その中で意味を持つ」。

なるべく人が生きている現実に近い自然な状況でデータを収集。数量化するのでは無く、現実に近い形でストーリーとして叙述。→人間の心理を理解する仮説・モデルの発見・生成。

方法

  • 面接法
  • 観察法
  • 面接法観察法検査法などを組み合わせたマルチメソッドを利用するフィールドワーク

▼質的調査の理論的背景となっている質的研究法の独自性

量的研究法――設定された仮説を検証するために、統制された条件の下でデータを収集・分析。

質的研究法――自然な状況の中で得られたデータから仮説を生成することを目的。

仮説生成を目的とする質的研究は、量的研究で検証する仮説を生成するための探索的予備段階の研究と考えられがちだが、そうでは無い。

現実の現象を記述したデータの中に読み取れるパターンから新しいアイデアや概念を発見し、それを仮説やモデルとして構成していく事が目的。

研究対象、研究者の経験も含めて、主観性や主観的体験もデータとして重視。

そもそも研究のパラダイムが異なっている。

▼質的研究法および質的調査の目的と特徴

研究方法の比較の表が載っているので、それを箇条書きで引用。

・研究手続きの比較

質的研究法

  • 大まかな問題や関心のあるトピックを見分ける。
  • 探索的なリサーチ・クエスチョンを発展させる。
  • 最初のデータを集め、解釈する。
  • 試験的な仮説を発展させる。
  • 追加データを集め、解釈する。
  • 試験的仮説を洗練する。
  • 追加データを集め、解釈する。
  • より特定の仮説を発展させる。
  • 理論を生成する。

量的研究法

  • 参照する心理学理論を選択する。
  • 理論を参照して特定の仮説を設定する。
  • 特定の手続き、方法、尺度を計画する。
  • データを集める。
  • データを分析し、解析する。
  • 仮説が支持されるか棄却されるか決定する。

・方法論的比較

質的研究法

  • 人間科学
  • 現象学・社会構成主義
  • 社会的に構成され、文脈に依存した多数の真実
  • フッサール、ドイッチャー、ウェーバー、ディルタイ
  • 帰納的
  • 理論生成
  • 仮説生成
  • 理解
  • 記述化・叙述化
  • 意味の追求
  • 発見志向
  • 関与的・・相互作用的研究者
  • 綿密な面接、参与観察、尺度としての研究
  • 当事者
  • 確実性、転移可能性、依存性、確認可能性
  • 流動的で発展的な方法と手続き

量的研究法

  • 自然科学
  • 論理実証主義
  • 測定可能なひとつの真実
  • コント、デュルケム、ミル
  • 演繹的
  • 引き出された理論
  • 仮説検証
  • 予測
  • 数量化
  • 法則と原因の理解
  • 結果志向
  • 独立した客観的研究者
  • 実験デザイン、標準化された尺度
  • 第三者
  • 内的妥当性、外的妥当性、信頼性、客観性
  • 予め決められ、その通り実行される方法と手続き

質的研究法の目的――研究の対象となっている人々自身の視点から現実を理解しようとする。人々が体験している事を、その人自身が体験しているままに理解しようとする。

質的研究法の方法論的特徴

  1. 状況や人々を、変数に還元せずに全体としてみていく。全体性が保たれるように時間的コンテクストや出来事の背景などを重視する。
  2. 研究者が対象者に与える影響に自覚的である。研究の対象となる人々や出来事の状況に、研究者自身が参加してデータを収集する。そのため、研究者は、自らの関与の影響に対して敏感である事が求められる。
  3. 現象に開かれた態度を重視する。研究者の理論や先入観を押し付けるのでは無く、どのような対象でも研究する価値があるという態度で好奇心をもって現象を探求する。

次回へ続く。

うーん、正直な所、あまり記述が整理されていないように私は感じました。それと、質的研究法と量的研究法との比較、便宜的な分類なのかもですが、お互いに全く違うものという訳でも無いでしょうから、写しながら軽く首をひねったのでした。方法論的特徴という部分も、どんな方法においても自覚すべき事柄が書いてあるように見えますし。

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