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2011年11月26日 (土)

検定の注意事項

良い説明があるので引用します。※強調は私による

 検定に慣れてくると陥りやすい一つの落とし穴がある。たとえば,検定では,「H0:π=0.5」という帰無仮説が棄却されたに過ぎないのに,検定結果の記述では,「『自然派』は有意に過半数を超えている」という対立仮説がむしろ強調される。そのときに標本比率が7割であれば,「『自然派』は過半数をかなり超えている」といった,程度を表わすニュアンスが伝えられてしまう危険性がある。
 検定結果には改めて記述されないが,そこで問題にされるのはあくまで帰無仮説であり,それがいかに小さい有意水準で棄却されたとしても,「π=0.5」という仮説が棄却されるのであって,「π=0.51」かもしれないし,また,「π=0.8」かもしれない。ちなみに,ここで利用した20件のサンプルデータ(図表6-1)に関しては,千葉県の168件のデータから無作為に選んだものであるが,その全体の有効回答数166件の内,「自然派」は112件の67.5%を占めている。サンプルデータは,たまたま,その母集団に近い結果を示しているのであるが,これがいつもそうであるとはいえない。通常は,そうした母数の大きさそのものについては,検定は何ら具体的な情報を与えてくれるわけではない。
たとえば,標本サイズを大きくしさえすれば,帰無仮説からのズレが小さくても,有意確率は十分小さくなり得るのである。
 では,母比率を具体的な値に限定できるような検定方法はないのだろうか。たとえば,帰無仮説に「『自然派』の割合は5割ではない」,対立仮説に「『自然派』の割合は5割」と,逆に仮説を設定できれば,より小さい有意水準でその帰無仮説が棄却されることによって,より確かに母比率の値を「5割」と推定することができるのではないかと考えられる。しかし,帰無仮説と対立仮説の設定を逆にすることは,実質的にはほとんど不可能である。母集団分布がある一つの形に仮定されて,はじめて具体的な標本分布を導出することができるのであって,帰無仮説が母数に関する無限の値を含む範囲で与えられては,標本分布を特定できなくなるからである。
 一方,「『自然派』が5割」という帰無仮説が棄却されなかったとしても,母比率が5割であると積極的にいうことはできない。「逆,かならずしも真ならず」であり,対立仮説を採用する背景には,論理学でいうところの「対偶」に相当する考え方がある。あくまで確率的な判定が行われるので,論理学がそのままあてはまるわけではないが,「A:帰無仮説が正しい」ならば「B:有意確率(p)>有意水準(α)」という命題(A→B)に対して,「¬B(引用者註:原文では文字にバー。以下同様):有意確率<有意水準」ならば「¬A:帰無仮説は正しくない」という対偶に相当する結論(¬B→¬A)が導かれるのであって,「B:有意確率>有意水準」ならば「A:帰無仮説が正しい」とは結論(B→A)できないのである。
 統計的検定では,基本的に,帰無仮説を「棄却できる」か,「棄却できないか」の判定がなされるのであって,その言及可能な範囲を常に念頭において結果の解釈を進めていく必要がある。なお,母数の値に関する具体的な推定を試みたいという場合には,区間推定の方法などが利用されている。
岩永雅也・大塚雄作・高橋一男[編著]『社会調査の基礎('01)』P146-168

つまり、有意確率が小さじからといって、それが即「帰無仮説からの離れ具合が大きい」とは言えない、という事ですね。差が小さくても、サンプルサイズを大きくすれば有意確率は小さくなり得る、と。
あくまで検定は、帰無仮説が棄却されたかどうかの判断しかされない、という事ですね。
これはかなり重要な事ですが、必ずしも統計の本に載っているとは限らない部分なので、少々長いですが、紹介してみました。

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※↑は2003年版

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