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2011年10月12日 (水)

社会調査入門

Book社会調査入門 (社会事業新書)

著者:井垣 章二
販売元:ミネルヴァ書房
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このような名著をこれまで押さえていなかったおのれの不明を恥じ入るばかりである。

古本屋で見かけて、100円だったしその内買って読むかな、と思いつつも読まずにいたのだが、実に勿体無い事をした。文体は固いものの、社会調査の論理が実に明瞭に説明されている。各種方法を羅列した単なるカタログ的な本もしばしば見られるが、本書はそうでは無く、調査論に関する本質的な事柄についてきちんと説明している。新書なのでコンパクトにまとめてあって読みやすい。コンパクトであるがゆえに、統計処理の説明などについては簡潔で、初学者にとっては解りにくいやも知れないが、これは統計学そのものが難しい事もあるので、致し方の無い所だろう。ところで、簡潔ではあるが、信頼区間や有意概念についてもちゃんと説明されていて(量的に充分、という事では無く、概念的な説明を押さえている、という意味)好感が持てる。

社会調査の考えをひとつ勉強してみたい、とお考えの方は、この本を手に取ってみたらいかがだろう。たとえば盛山和夫氏の本も名著だが、読むには少々ハードルが高いので、その前に本書に目を通しておけば、ある程度見通しがついて、他の本も読みやすくなるのではないかと思う。中谷宇吉郎博士の『科学の方法』が、科学一般の考えを紹介する名著であるとすれば、井垣氏の本は、科学の内、社会調査という具体的な分野の方法を丁寧に解説した名著である、と言えるだろう。

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「科学論」カテゴリの記事

コメント

ちがやまるさんやYJSZKさんにも紹介したい(意見を伺いたい)本。

投稿: TAKESAN | 2011年10月12日 (水) 11:45

こんにちは。YJSZKです。

> 盛山和夫氏の本も名著だが、読むには少々ハードル
> が高いので、その前に本書に目を通しておけば、あ
> る程度見通しがついて、他の本も読みやすくなるの
> ではないか

ご紹介、ありがとうございます。
「盛山和夫氏の本…の前に本書に目を通しておけば…」、ふむふむ、なるほど。
図書館で借りるなどして、ちょっと読んでみようと思います。別のエントリで紹介されている盛山さんの本も図書館から借りたところです。

投稿: YJSZK | 2011年10月17日 (月) 15:36

YJSZKさん、今日は。

本書は、社会調査関係の話題ではあまり参考文献として挙げられているのを見た事が無かったのですが、読んでみて、これは掘り出し物だと思いました。
尤も、1960年代初版の本が刷を重ねているようですので(私が持っているのは1999年刷)、大村さんの本のようなロングセラーで、界隈では知られている本なのやも知れません。

盛山さんの本は、『社会調査入門』も『社会調査ゼミナール』(こちらは編)も大変良いものであります。

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ところで、最近、統計関連でとても興味深い資料を見つけて、関連のものを読み漁っております。実はそれは、YJSZKさんの志向にも関わるものなのですが、その内紹介するかも知れません(既にご存知の可能性も高いです)。
感想としては、「この方が、まさか私の志向(身体運動追究+統計学の応用)にこれほど合致した方向の研究をなさっていたとは」みたいなものです。YJSZKさんがよく書かれていた事についてもっと早めに突っ込んで調べておくべきだったな、と思っています。

なんだか思わせぶりですが、その内に……。

投稿: TAKESAN | 2011年10月17日 (月) 15:53

こんにちは。YJSZKです。

> YJSZKさんがよく書かれていた事についてもっと
> 早めに突っ込んで調べておくべきだった

えー、何か書いてましたっけ?
いつ何を書いていたかの記憶が…あまり残ってなくて。
統計学関連についても、標準的・頻度主義的な統計学ではあまり書いてない(呟いてない)感じで。
んー、となるとベイジアン。
で、身体運動関係…いやー、やっぱり記憶がないス。

もちろんのこと、お書きになるタイミングはお任せします。はい。

投稿: YJSZK | 2011年10月17日 (月) 21:29

ちょうど今、エントリーを書いている所であります。
今日の深夜中にはアップ出来ると思いますので、期待せずに(笑)お待ち下さいませ。

投稿: TAKESAN | 2011年10月17日 (月) 23:26

投稿: TAKESAN | 2011年10月18日 (火) 00:22

こんにちは。YJSZKです。

> 盛山さんの本も図書館から借りたところです

いま拾い読みをしていまして。
いやぁ、これ、良い本です。いまは図書館から借りてきたものを読んでますが、ちゃんと購入するつもりです。

ところで、この本の「3.平均の差の検定(pp.202-207)」ですが、以前(8月21日頃)指摘された等分散の検定に関わる記述が含まれてますよね。
普通に等分散と仮定する場合の統計量と、そうでない場合の統計量とで、両方の解説をしています。
その後に等分散の検定の記述。普通に、棄却/棄却できない、という判断という。

まぁ、棄却できないときに、等分散を仮定した統計量を使うか、等分散を仮定できない場合の統計量を使うか、それは個別の判断が要りそうですが。

とりあえず。

投稿: YJSZK | 2011年10月18日 (火) 12:55

YJSZKさん、今日は。

良い本ですよね。
あ、等分散の検定についても記述がありましたか。今手許に無いので、今度確認してみますね。

最近、芝村良氏の本を読み返したのですが、それぞれの立場(フィッシャー、ネイマン・ピアソン、ベイズ)からの解釈をしっかり理解するのはやはり難しいですね。もっと勉強して理解を深めたい所です。

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ところで、これも最近知ったのですが、林知己夫氏の『調査の科学』が、ちくま学芸文庫から出ていたのですね。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480093691/

ブルーバックスの方は絶版?みたいなので、これはいいですね。本当に、ちくま学芸文庫は良い仕事をする。

投稿: TAKESAN | 2011年10月18日 (火) 13:08

こんにちは。YJSZKです。

> 今手許に無いので、今度確認してみます

まぁ、一般に等分散は強い仮定なので(標本サイズが大きいとほぼ棄却されるので)、分散が異なるとして統計量を設定して検定するのが良いのかもなぁ、などと。

赤池さんのエントリ、拝読しました。
twitterで紹介しました。

投稿: YJSZK | 2011年10月18日 (火) 13:58

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