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2011年10月18日 (火)

赤池弘次と身体運動とイメージ

調べ物をしていて、このようなものを見つけました。
納度の概念の利用について(PDF)
著者は故・赤池弘次氏。AIC(赤池の情報量規準)で知られる統計学界の偉人です。
この論文では、赤池氏が、モデル比較の規準として「納度」という概念を提出しています。そして、その中で、「ゴルフスイング」についての言語的イメージやモデルが検討されているのです。
その取り扱っているテーマの内容と書き方を見て、少々驚きました。と言うのも、たとえば

 コルクの栓をスクリュー型の栓抜きで引きぬく時の両足の動きを,足の「螺旋」の動きと呼ぶ.この脚の動きで体と地球の結びつきが固まる.両膝と両脚の体勢を固めれば,体の動きが脚の「螺旋」の動きを通じて地球に直結する.

このような、まるで武術関連誌に書かれてあるような表現、動きを行う際の「イメージ」への言及があったからです。
なんだそんな事か、と思われるかも知れませんが、私にとっては、統計学の大家(どころでは無いくらいの方)が、このような、自分の志向に合致するような事柄について書いておられた、というのは、かなり興味深い事だったのです。そして、赤池氏について調べてみると、晩年には、ゴルフスイングについてよく研究されていたとの事。これは、今の自分の方向性、つまり、統計学的な論理の習得と、身体運動の科学的追究、という志向に見事に一致しているので、これは面白い、と感じた次第です。
実は、AICやモデルの当てはめのような観点は、幾度かYJSZKさんがやりとりの際に言及なさっていて、私もいずれきちんと勉強したいと思いつつも後回しにしていたのですが(と言うか、そう簡単に理解出来るものでは無く、習得には基本的な数学の勉強が必要だから、後回しにせざるを得なかった)、まさか赤池氏が身体運動方面の研究に従事しておられた、というのは考えてもいなかったという訳です。
そして、その流れで色々調べていたら、なんと赤池氏、アメブロでブログを書いておられたとの事。これにも驚きました。
ゴルフ直線打法
統計学の巨人がアメブロでゴルフについて連載なさっていた、というのは、なんと言うか、不思議な感じがしますね。しかもその内容は、「イメージを駆使」したようなものです。ゴルフでそういう表現がよく用いられるというのは聞きますが、武術などの書き方にも通ずるものもあり、大変興味をそそられます。この興味深さというのは、厳密な論理性を重んじる数学(数理統計学)と、主観的なイメージを多用する身体運動文化、の両方に興味を持たない人にはなかなか解らないのかも知れませんが、私は、かなり「ニヤリ」としました。ブログの記事もいずれ読み通してみたいと考えています。
と、ここで注意しておかねばならないのは。
いくら、統数研の所長をつとめた数理統計学の巨人が言及しているからといって、すぐにその書かれてある内容を受け容れるには慎重にならねばならない、という所です。その内容が、既存のスポーツ心理学、運動制御、スポーツバイオメカニクスなどの知見とどう整合するか、あるいは具体的な精密科学的研究によってどのくらい支持されているか(evidenceがあるか)、をきちんと検討しつつ見ていく必要がある訳ですね。
とは言え、赤池氏がこういう論考をなさっていた事自体が非常に面白く、具体的に検討してみる価値はあろうかと思います。数学や自然科学に親しんだ人があの論考群を見ると、「?」となるやも知れませんが、私にとっては、主観的な身体運動に関するイメージを展開していく文章というものは、実に馴染み深いものなのです。

という経緯があって、これはひとつ、赤池氏が書かれた論文などを色々読んでみよう、と思って、検索して探して見ました。これが実際、とても面白いものでした。やはり、確率・統計に関するテキストというのは、「哲学」が入っていると面白い。哲学が大袈裟なら、考え方、でも良いでしょう。という事で、ここで、赤池氏に関するページをいくつかご紹介したいと思います。名前は知っていても論文はあまり読んだ事が無い、という方もおられるでしょうから、参考資料として。統計学のみならず、科学の考え方はどういうものか、という観点からも、見ておく価値はあるものと考えます。

※時系列順になっていないのでご了承下さい。

科学の目・統計学の目 Part 3 赤池弘次博士に聞く(PDF)
赤池氏と堀田凱樹氏の対談。赤池氏の経歴や逸話、考え方などが、自身の口から語られている。

赤池弘次(京都賞2006受賞者)からのメッセージ※動画再生注意
京都賞受賞時のメッセージ。大変に示唆的。

シリーズ:統計学の現状と今後 「ノーベル賞と統計学」
大阪大学、狩野裕氏。赤池氏の講演に触れ、対象とする現象を深く考察する事の大切さを強調。

第 22 回京都賞記念ワークショップ 基礎科学部門 「統計的推論とモデリング」 赤池弘次(PDF)
京都賞ワークショップ。情報量概念の説明や、ゴルフスイング研究が紹介されている。

CiNii 論文 - モデリングによるゴルフ新打法の展開(特別講演)
ゴルフスイング研究の概要。

CiNii 論文 - モデリングの技 : ゴルフスイングの解析を例として(<特集>モデリング-広い視野を求めて-)
ゴルフスイング研究。少し詳しめ。

統計的思考と統計モ デルの利用(PDF)
統計の考え方を説明している。興味深く読める。

カルナップ 確率の論理學的基礎(PDF)
カルナップの著作についての書評。かなり批判的(私は内容を詳細に検討出来ない)。科学哲学的にも興味深い資料なのではないかと思う。

統計学研究の方策について(PDF)
統計史的な部分の記述やAICの意義の説明があり、大変面白く読める。

ゴルフと統計と科学
生体・生理工学シンポジウム論文集所収。本文参照出来ないので概要を。抄録に書かれてある問題意識はとても賛同出来るもの。

エッセイ風の連載。これはとても面白い。

特集 赤池統計学の世界(PDF)
赤池氏の理論の紹介と、様々な分野での応用例の実際。私にはむつかしいけれども、参考資料として良いと思います。後半は、先述の対談。

赤池弘次元所長のご逝去を悼む(PDF)
北川源四郎氏による、赤池氏への追悼文。赤池氏の経歴や業績が紹介されている。

故赤池弘次先生記念ウェブサイト 赤池記念館
赤池氏の業績を讃えて開設されたサイト。経歴の紹介や、論文など著作一覧が掲載されており、大変に有用。

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コメント

身体運動を、バイオメカニクス的説明で無く他の言語的イメージで表現して上達を促す事については、ここで書いています。
http://seisin-isiki-karada.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_4f5c.html

こういう事もあって、赤池氏の論が自分の志向に合致していると感じた、というのもあります。
言っときますが、赤池氏は統計学や工学への影響を甚大に与えた方なので、科学者として超一流です。そこら辺の「勉強をした事がある」人とは次元が違います。数学と実学の両方に影響を及ぼした方。その方がこっち方面(敢えてこういう表現)に言及しているのは、非常に興味深いのです。
そのまま鵜呑みにするのも慎重にした方がいいよね、というのを書いたのも、リンク先に書いたような事情がある事、「動き」を言語的イメージで表現するやり方の危うさを知ってしまっている事、が関連しています。

投稿: TAKESAN | 2011年10月18日 (火) 13:19

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