クーン
このような私の主張に対して、多数の哲学者たちは今も私を驚かせ続けているような仕方で対応したのである。それによれば、私の見解というのは理論選択を「群集心理学の問題」に帰するものである。また、クーンは「新しいパラダイムを採用しようとする科学者集団の決断というものは、事実的あるいはそれ以外の何らかの適切な理由によって基礎づけられるようなものではない」と信じている、とも言われている。私を批判している人びとは、クーンにっとっては理論選択をめぐる科学者間の論争は「熟考すべき実質のない、単なる説得行為の展開にすぎない」に違いないと主張した。この種の評価は、まったくの誤解である。
トーマス・クーン[著]安孫子誠也・佐野正博[訳]『客観性、価値判断、理論選択』(『科学革命における本質的緊張 トーマス・クーン論文集』所収―P416)
※註釈の番号は省略した
※強調は引用者による
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コメント
参考資料
http://fs1.law.keio.ac.jp/~popper/v9n2noie.html
http://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/63309252.html
投稿: TAKESAN | 2011年9月25日 (日) 17:00
クーンがラカトシュの批判(クーンは理論選択を群集心理の問題と解釈している)に本当に賛同したのかどうか、よく確認しても良いと思います。
『批判と知識の成長』は、手に入りにくく読めていないので、直接検討は出来ないですが。
ちなみにこの本、「クーンが書いた本」では無いですからね。シンポジウムに基づいた論文集です。確かめずに勘違いしてる人もいそうなので。(そもそもこの本、マスターマンの批判を知りたくてその内読みたいと思った本だったりする)
手っ取り早いのは、持ちだしてきた人に詳細の解説をお願いする事です。
クーンは、科学の合理性を全部疑っている訳では無いのに強い相対主義に利用される事がある人なので、慎重に検討しましょうね。
投稿: TAKESAN | 2011年9月25日 (日) 17:11