科学の歴史と科学の力
科学的方法は、今日世界中の至るところで実践されている。証拠に基づいて理論を構築し、理論に合致しない新たな証拠が見つかったら、理論を修正しなければならないのだ。このようにして、科学は発展していく。科学者の動機がどれほど怪しくても、経済的、政治的、人的な圧力がどれほど科学者に加えられても、結論がどれほど不快なものであっても、証拠の後を付いていくことで科学は進歩するのである。
![]() | ![]() | 科学は歴史をどう変えてきたか: その力・証拠・情熱
著者:マイケル モーズリー,ジョン リンチ |
扱っている内容は、科学史と技術史を併せたもの、といった感じでしょうか。分野は、物理学、化学、天文学、生物学、地質学、神経科学、等々です。 Amazonの紹介にもあるように、BBCの放送と連携して作られた本だそうで、図がことごとくカラーであるのがとても良いですね。類書でこれほど豊富な図が入っているのは、読んだ事が無いです。
書き方は、いかにも教科書、という感じでは無く、読み物として親しみやすくなっていると思います。ただ、広範なトピックを扱っているためか、説明が簡略されすぎて、科学史の本に親しんでいない人にはちょっと端折り過ぎかな、と感じられるきらいがあるようにも思います。また、訳文が熟れていないのか(余談ですが、訳者の経歴が実に独特。なにやら出版翻訳オーディションというのを経ているようですが、私はそこら辺の事情は全然知らない)元の文がそうなのか、あるいは私の読み方が良くないのか判りませんが、文章として読みにくく感じました(個人的にはかなり)。あれ、この文は誰について語っているのだっけ?みたいに思った所が結構あります。 神経科学の部分の記述など、あれ、そうなんだっけか、と思うような部分もありましたが、これは自分の知識不足なのか、実際に記述が微妙だったのか、よく判りません。
科学史の本はこれまでいくつか読んできましたが、そこでは触れられていない人物の紹介もあり、また、知っている人でもより詳細にエピソードが書かれていたりして、それは収穫でした。 教科書系のテキストよりは読みやすいですし、科学や技術の歴史を大まかに押さえるには、なかなか良い本なのではないかと思います。
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