どこに投げているのか
![]() | ![]() | もうダマされないための「科学」講義 (光文社新書)
著者:菊池 誠,松永 和紀,伊勢田 哲治,平川 秀幸,片瀬 久美子 |
感想。
良い素材を買い込んできたが、それをよく下処理もせずにぶち込んでごった煮にし、デザートを食べたがっている人のテーブルに置いた、という感じ。
個別の記事は面白い。けれど、「誰に向けた本?」というのをすごく感じた。どんな層に届けたいんですか? この本を。
なので、これまで科学というものを意識してこなかったけれど、このご時世だし、ひとつ勉強してみたい、みたいな人には、私にはこの「本」は勧められない。
色々な話題について、その話に関してはこの本にある記事が参考になるだろう、という風に教える事はあるだろうけれど、それくらい。初めからこの本を興味深く読める人は、そもそもある程度科学に関心を持っている人ではないかと思う。そういう人が知識を得たりするのにはそれなりに役立つ、というか。
少なくとも、公式サイト もうダマされないための「科学」講義 菊池誠、松永和紀、伊勢田哲治、平川秀幸、飯田泰之+SYNODOS/編 | 光文社新書 | 光文社 にある、
――学校が教えてくれない科学的な考え方を、稀代の論客たちが講義形式でわかりやすく解説。3・11以降の科学に対するモヤモヤがきれいになくなる一冊。
この宣伝文句は全く受け容れられないものがある。※「宣伝文句やタイトルに著者の意向は反映されていないだろう」という反論は受け付けない。個別の記事は興味深いもの(それぞれの論がどのくらい正確か、は詳細に検討する必要があるが)だと言っているし、そもそも本をどういう構成にしてどの層に向けているか、という話をしているのだから
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コメント
本のタイトルにも宣伝文句にもかなりの誇張があるのはご指摘のとおりですね。
松永さんのところと片瀬さんのところだけ読むという読み方をすれば、タイトルや引き文句に近い効果が得られるかもしれません。
そこで一息ついたあとに、科学って何だろうとかメタなことが気になりだしたらあとの三つの章を読んでもらうといろいろ文脈化されてよいかも。
投稿: iseda | 2011年9月23日 (金) 00:13
isedaさん、お早うございます。
たとえば、伊勢田さんの部分などは、この本のコンセプトから言うと「難しすぎる」と思ったりした訳ですね。もちろん論考は大変興味深いものと思います(実は既に『認識論的問題としてのモード2科学と科学コミュニケーション』論文の方を読んでいましたけれど)。
これは、元々興味のある人向けへの講演を書籍化した事を考えるとしょうがない話なので、要は本の作り方の問題なのだろうと思います。
その観点から言うと、仰るように、むしろ訴求するのは片瀬さんの部分などかなと思います。
科学とは、を解りやすく解説したと宣伝するには、あまりにも、科学そのものの説明が足りなすぎるように思いました(ある程度押さえている人でないと読めない)。
投稿: TAKESAN | 2011年9月23日 (金) 07:34