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2011年9月16日 (金)

エビデンス ベイスト メディスン

糖尿病関連の書籍から、「医師はどのように治療法を決めるのか」という部分を引用。現場の医師の考え方の一例として参考になると思います。

 では、医師はどのようにして個々の糖尿病患者の治療方法を決めるのでしょうか? 医師が治療方法を決定するときには、一般に次のような問題を考慮します。
(1)RCTではないが、多数の患者の治療結果をまとめた臨床データにもとづいた意見。
 これらはRCTの結果に比べると不確実ではあるものの、治療目標を立てる際の手がかりを与えてくれます。
(2)医師自身が治療を行った患者の経過観察から得た経験や印象。
つまり、どんな状態の患者が、どんな治療によって、どんな経過をたどったかについての個々の医師の経験です。
(3)医師が他の医師から得た経験や印象やデータ。
 これには、個人的な会話、学会での研究発表、症例報告(学術論文)などが含まれます。
(4)特定の患者の状態に比較的近い患者についての大規模RCTのデータ。
 一般的には、経験豊富な臨床医が前記の(1)~(3)にもとづいて推奨していた治療方針と、(4)のRCTの結果にもとづいた治療方針とは、かなり似ています。
 したがって一般的には、RCTの結果がなくても、十分な治療経験のある医師が注意深く治療を進めれば、おおむね妥当な治療を行うことができると考えられます。
。 ただし、どのような治療をすれば、あるエンド・ポイント(合併症など)の生じる危険性が何パーセント増減するのかという数量的な評価は、RCTの結果なしには得られません。
 糖尿病治療にたずさわる医師は、日々こうしたことに悩みながらひとりひとりの患者と向き合っています。糖尿病であるという診断を受けた場合、患者自身が糖尿病についての知識をいかに蓄積しても、医師の指導と管理、そして検査を受けずに、自分だけの知識や判断で糖尿病を厳密に管理することはとうてい不可能です。
 病気の治療には患者の自己流の判断や治療は禁物です。まして、根拠のはっきりしない民間療法に自分の生命を預けるような危険は、けっして冒してはいけません。
矢沢サイエンスオフィス[編]『糖尿病のすべてがわかる 改訂新版』 P153
※丸囲み数字は丸括弧に変更。ルビは省略した

実はこの部分、医師はどのようにして糖尿病の治療法を決めるのか、というテーマで書かれている所から一部引用したもので、そこではまず、RCT(ランダム化対照試験)の紹介をし、それが最も重要なものである、と説明されています。そして、糖尿病に関しては、必ずしもRCTが充分に行われていない事が指摘され(RCT自体が難しい。エンドポイントが多様、エンドポイントまでの期間が長い。既存の外国で得られた大規模RCTのデータをそのまま日本人に適用出来ない、事などを説明)、それを踏まえて、では現場の医師はどのように治療法を考えていくのか、という流れで引用部に繋がります。
これを見て解るのは、現場での治療にあたっては、より良質な「証拠」を参照していく、という事です。カタカナで書くと「エビデンス」。しっかりデザインされたRCT(沢山の人を集めて、比較対照するように「群」を複数に分ける。そして、その群の分け方は「偏らない」ように行われる)の結果や、複数のRCTの結果を総合的に検討して得られたデータを「エビデンスレベルが高い」などと言う、つまり良質な証拠と看做しますが、それが充分に無い場合も、なるだけ信頼のおけるデータなどを参照しながら、個別の患者に対処していく、と。まさにこれが、証拠に基づいた医療の実践的な在り方なのでしょう。

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今回引用した本。糖尿病のメカニズムや治療法などについて、実に詳しく書かれていて参考になります。医療がどれほど複雑に物事を考えていくか、細やかに対処を行うか。また、これまでの医学の発展によって、方法が改善されたり、以前は対処しにくいと思われていたものについてもより優れた方法が編み出されてきた事なども解ります。もちろん、有効だと思われた薬剤が重大な副作用を及ぼし使われなくなった(あるいは、その後また見直されてきた)、などの歴史も押さえておくべき記述でしょう。

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