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2011年7月15日 (金)

科学コミュニケーション―― 一素人の方法

昨日の続きです。昨日は、「3)」が最も根本的な部分だと思い、長文にもなりましたので、そこだけ独立させて上げました。

※引用元⇒サイエンスコミュニケーションで素人にできることを考える(改題)(2) - ばらこの日記

○発掘

1)金を払ってでも読みたい人を発掘する。

よく本を出している論者以外にも、WEB上に優れた方は沢山おられますね。アンテナを張って、そういった方を補足して紹介する、というのは意義がある事だと思います。
探すコツとしては、はてな辺りの情報に目を向けておく、などが良いかも知れません。はてなブックマークを使うとかですね。そうすれば、様々な方面からの情報が手に入り、優れた論者を見つける事が可能になるでしょう。興味深いブックマークをよくするブックマーカーを押さえておく、というのもありますね。「ニセ科学」タグなどで探すと見つかりやすいです。

○勉強

2)自分が少しでも勉強して受信能力を上げる。受け手の受信能力が上がれば発信する側のハードルが下がる。面白い入門書みたいのがあったら紹介したり話題にする。入門書が間違ってることも往々にしてあるけれど、その場合はそれに対する専門家の突込みを読むことが勉強になる。

ニセ科学、あるいはその他の「不思議現象(超常現象などの事)」に向きあう時に、そういう事そのものを取り扱うのを参考にするのは当然必要ですが、それと同時に、もっと基本的な、「科学」に関する勉強をするのも大切です。たとえば中学・高校の数学や理科を復習するなどですね。そうした地道な事がとても肝腎です。

ここで、いくつか紹介しましょう。

統計のはなし―基礎・応用・娯楽 (Best selected business books) 統計のはなし―基礎・応用・娯楽 (Best selected business books)

著者:大村 平
販売元:日科技連出版社
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昨日も紹介した大村平氏の本。「はなし」シリーズです。いわゆる数学の入門書ですが、非常に面白く、数学とはこんなに役立っているのか、身近の現象と繋がっているのか、という事がよく解るシリーズです。
ただし、中学・高校の数学などほぼ全く憶えていない、という人にとっては、大村氏の本でも難しく感ずるはずです。そういう場合には、中学や高校向けの本を改めて復習するなどすると良いでしょう。高橋一雄氏の本

語りかける中学数学 語りかける中学数学

著者:高橋 一雄
販売元:ベレ出版
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などが良いでしょうか。
他に数学関連でのお勧めは、新井紀子氏や瀬山士郎氏の本が面白く読めると思います。

科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書) 科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)

著者:森博嗣
販売元:幻冬舎
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先日紹介した森博嗣氏の本です。科学の営みについて丁寧で平易に説明されており、読み物としても面白いです。特に「科学」というものが何か、と意識をした事が無い人にとって良い本だと思います。

科学の方法 (岩波新書 青版 313) Book 科学の方法 (岩波新書 青版 313)

著者:中谷 宇吉郎
販売元:岩波書店
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不朽の名著。私は、何か良い本はないか、と問われれば、迷わずにこの本を勧めます。そのくらいに中谷博士の本は優れています。科学とはどういう営みか。どんな手順で進み、どのような限界を持つか。そういう事が平易に説明されています。

悪霊にさいなまれる世界〈上〉―「知の闇を照らす灯」としての科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 悪霊にさいなまれる世界〈上〉―「知の闇を照らす灯」としての科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

著者:カール セーガン
販売元:早川書房
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科学的懐疑論の界隈では知らぬ者はいないであろう、カール・セーガンの本です。
セーガンのエッセイも、色々の事例を用いて、科学という方法について丁寧に描かれています。なにより、語り口が優しい。他の懐疑主義者であるガードナーやファインマンは(彼らの本も大変面白い)、時に挑発的な鋭い物言いをしますが、セーガンは柔らかいと感じます。個人的にはセーガンの語り口が好みです。

科学と神秘のあいだ(双書Zero) 科学と神秘のあいだ(双書Zero)

著者:菊池 誠
販売元:筑摩書房
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日本のニセ科学論で特に有名な、大阪大学の菊池誠教授の本。菊池さんの本も、非常に優しい眼差しで書かれているというか、頭ごなしに否定するような態度をとりません(人によってはそう見えないだろうけれどそれは措く)。そこが、界隈の論者の信頼を得ている理由でもあるのでしょう。
内容というか問題意識は、森氏やセーガンなどに通ずるものがあると思います。ある意味で当然かも知れませんが。

疑似科学と科学の哲学 疑似科学と科学の哲学

著者:伊勢田 哲治
販売元:名古屋大学出版会
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ここからは、より本格的な本を二冊。まず、科学哲学者の伊勢田哲治さんの本です。
伊勢田さんの本は、科学哲学の中心的な問いの一つである「科学とは何か」という問題を、「疑似科学」、つまり、「科学のようで科学で無い」言説を検討する事によって考察していこうという、科学哲学の本の中でもユニークなものです。そこでは、疑似科学と世間で捉えられている色々の例が分析され、なぜそれが疑似科学と言われるのか、そもそも科学とはどういった営みなのか、という事が、非常に丁寧に論理的に考察されます。より進んだ勉強をしたい人にはうってつけの一冊でしょう。

クリティカルシンキング 不思議現象篇 クリティカルシンキング 不思議現象篇

著者:T・シック・ジュニア,菊池 聡,新田 玲子,L・ヴォーン,Jr. Theodore Schick,Lewis Vaughn
販売元:北大路書房
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クリティカル・シンキング(批判的思考)の入門書。ものごとを慎重に、健全な懐疑的姿勢でもって見ていく方法を、「不思議現象」という概念を検討しつつ考えようという本です。私は、ニセ科学やクリシンの本格的な本で良いのは何かないか、と訊かれれば、まずこの本と伊勢田さんの本を勧めます。これらを読めば、関連の議論における大体の論点は押さえられるでしょう。
また、この本の訳者である心理学者の菊池聡氏の本も大変良いです。「不思議現象」というのは、超能力やいわゆるUFO、あるいは万能の治療法、といったものの総称ですが、これらは身近で見聞きするトピックだけに、興味も惹きやすく、読み物としても楽しく読める事でしょう。

○履歴

3)もし、自分が過去にトンデモな情報を信じていたとか、信じるだけでなくて他の人にも自信満々発信していたとか(私です)そういうことがあれば、そのプロセスをできる範囲で言語化し公開する。それは必ず同じ轍を踏む人が立ち戻る際の参考になる。だまされる人が減れば「だまされる人を減らす」ために費やされているエネルギーをもっと生産的な方向に振り向けることができる。

ここに関しては、冒頭でリンクした昨日の記事で書きました。少々長いですが、よろしければお読み下さい。

○ネットワーク

4)信頼できる書き手の情報を共有する。自分が毎回全部追わなくてもだいたいこの方向の情報を追っていそうな人と知り合いになっておく。必ずしも本当に知り合う必要はなく、この問題に関してこの人は詳しいなと見たら一方的に友達に(なったつもりに)なる。なんかあった時に精神的に近いところにその問題に詳しい人がいれば落ち着いて考えられる。

ここはやはりWEBの強みで、最近は、はてなブックマークやtwitterなどがありますね。この人の発信する情報は興味深い、と思った場合に、お気に入りに入れたりフォローしたりしておけば、リアルタイムで追っていなくても、ちょっとした(整理は必ずしもされていませんが)データベース的なものが自動的に構築されていく事でしょう。時には直接の対話により、アドバイスをもらったり情報を教えられたり、というのもあります。

○説明を強いる事は相手にリソースを消費せしめる事

5)無茶を言わない。即座に適切な説明が与えられないからといって逆切れしない。専門家はそんなに暇ではないことを知る。無責任な煽りには動じない。

しばしば、「詳しい者が説明するのが当然」であるかのような考えを持っている人がいます。しかし、説明しろしろ、というのは頂けませんね。対象はプロフェッショナルであり、弛まぬ努力で知識と認識力を磨き上げてきた人達です。そういう人々から知識を得るというのは、相手に資源を消費させている事にほかなりません。本来、「金を払って得る」類の知識である訳です。そういう観点から、専門家には敬意と感謝の念を持っておくべきでしょう。あるいは、自身の能力で補足出来る部分があれば、フォローしていく、というのも重要でしょう。

○実行と表明

6)積極的にだます方に加担している人、影響力のある立場にいながらデマを振りまいて改めない人については批判できればする、している人を支持する、最低でもちやほやしない。騙されないぞということをはっきり見せつければ詐欺師は退散する。上に書いたことともかぶるが(そして前回チョムスキーを持ち出していいたかったことなのだが)サイエンスコミュニケーションのうち、「アホな言説を振りまいている人に騙される対策」に注がれるリソースは騙される人がいなければもっと生産的なものに振り向けられる。

私自身の事で言えば、まずゲーム脳言説(と森昭雄氏)を継続して批判してきました。関連する情報をマスメディアが肯定的に採りあげた場合にも、ブログで記事を上げて批判しています。その影響は大したものではないでしょうが、少しでも情報発信として役立てられれば良い、と思っています。
また、WEB上でニセ科学的言説を支持している人に対して意見を言う事もあります。ブログで書いている場合には、コメントしたりなどですね。この時には気を遣います。挨拶は必ずする、言葉遣いはなるだけ丁寧にする、といった具合に。小学生が書いているブログ(ゲーム脳を支持していた)にコメントをした事もあります。
それから重要なのは、「相互批判」でしょうね。つまり、同じ対象を批判する者同士で批判する。批判が雑であったり的外れだったりすれば、批判活動にとってはマイナスになるかも知れないし、相手を罵るような態度も好ましく無いので、なるだけ言うようにしています。尤も、言葉遣いに関しては社会的なコミュニケーションの問題で、一般にこうすべきである、となかなか言えないものがあるので、また違ったむつかしさがあります。

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以上、ばらこさんが示された6個のポイントについて、それぞれ考えを書いてみました。
到達した所が同じでも、「道筋」は色々のバリエーションがあります。人間の経験とは非常に複雑なものです。ですから、それぞれの論者が自身の経験に基づいて情報発信していく事で、同じような道を辿っている人に何らかのヒントになったり、自分の経験してきた事との違いが意識出来て有用な情報が得られる、というのもあるでしょう。ばらこさんの提案には大きな意義があり、賛同出来ると考えましたので、昨日と今日、自分の経験をある程度詳しく書いたエントリーを上げました。

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コメント

こんにちは。再び言及&具体的かつ有用な提案をありがとうございます。一つ一つ私も宿題にしてゆっくり考えさせていただきます。

今日は本筋からそれる話題ですが、御紹介のきくち先生の御本で一つ深く印象に残ったところがありました。手元にないので記憶で書きますが「よく単位を落とされるという学生がいるけれど違います。勝手に落ちるのです」というところです。単位に限らずいろいろ自分の勉強不足を責任転嫁してきた人生を振り返って感慨深いものがありました。人生も折り返しをすぎて勉強もなかなか捗りませんがぼちぼちいきたいです。

投稿: ばらこ | 2011年7月17日 (日) 10:15

ばらこさん、今日は。

責任転嫁、自分を振り返ってみると冷や汗が。今もちょくちょくやっているので、気をつけたい所です。

投稿: TAKESAN | 2011年7月17日 (日) 12:34

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