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2011年4月に作成された記事

2011年4月29日 (金)

もしタイムマシンがあったら――数学の面白さ

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この本は大変素晴らしいです。
数学で用いられる様々な概念について、具体的なイメージを用いつつ丁寧に解説し、それぞれの概念の繋がりや体系の美しさに気づかせてくれる良書。高校生くらいの頃の自分に手渡して、数学ってこんなに面白いんだよ、と教えたい、そんな一冊といった所でしょうか。

ただ、Amazonレビューにもあるように、それほど簡単な本とは言えません。全然数学やってこなかったけど興味出たから改めてやってみようか……といった人が「入門」するために使う本としては、少々むつかし過ぎるかも知れません。と言うのも、Amazonレビューにある、式の導出に略があったり(これは独習者には本当にキツイ)、基本的な関数の考えの理解が前提されていたりするから、なのですね。そういう意味では、「入門」と言うより「再入門」、もしくは「おさらい」などと言った方が、本の性質をよく表しているでしょう。

ですから、全然勉強してこなかった……という人が読むよりは、勉強はしているが「無味乾燥な数学」の面白さや具体性が解らず悶々としている現役高校生や、大人になってから意識的に勉強し直して一通り復習した人が、「ピンとこない」数学概念についておさらいしたりヒントを得る、そんな本だと思います。関数って何? 微積分なんてやった事も無い、なんて人は、まず中学・高校 向けの教科書や参考書、他の数学読み物を読んでから、あるいは読みつつ参照する、のが良いのではないでしょうか。そうすれば、「なるほどここはこういう事だったのか。」と楽しめ、数学の面白さや美しさに唸る事、請け合いです。

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2011年4月20日 (水)

科学による武術への介入

前々回、前回の武術関連エントリーの続きです。

これまで、武術の打撃技を解明するにあたり、打撃者だけでは無く、打撃を受ける側のメカニズムにも目を向けて解明していく事が重要であり、そのヒントになるものとしてインパクトバイオメカニクスという分野を紹介しました。

このような知見を応用して武技をある程度解明する事が出来た場合に、どういう現象が起こるか、を考えてみます。

要するに、力学的にどういう影響を受ければ人体がどのように破壊されるか、人間はどのような力学的衝撃を人間に与え得るのか、その科学的な解明が進んだ場合にどうなるか。
これらが解れば、得られた知見を、武術の鍛錬に用いられる道具のデザインにフィードバックする事が出来ると考えられます。

武術の鍛錬法は色々ありますね。経験的に試行錯誤され、様々な工夫を経て洗練されて、道具も色々な物が作られてきた。巻藁突きや巻藁切り、剣術における、タイヤや立木の鍛錬打ち、格闘技で言えばサンドバッグなど。実にバリエーションに富んでいます。そして、それぞれの立場の人が、自身が取り組んでいる方法の優位さを主張し、時に論争にもなります。もちろんただ言うだけでは無く、色々な「理屈」がそこにはつけられる訳ですが。

そして、先日来書いてきたような解析を進める事によって、経験的に知識が集積され発展してきた、武術の鍛錬法と道具、という分野に、科学によるメスを入れる事が出来ると考えられます。つまり、旧来の鍛錬法はどの程度合理的であるのか無いのか、また、改良の余地はあるかが解る。あるいは、全く新しい方法を「科学的な根拠に基づいて」創出するのも可能になるでしょう。現代は、科学技術・工業も発展しているので、それまでに用いる事の不可能だった、鍛錬に最適な物理的特性を持った人工の材料を使って道具をデザインする事も出来るでしょう。既に剣道などの道具の分野では、色々な材料が用いられて、良い製品が作られているようですね。それらは特に、コストや衛生的な面などが考慮されているのでしょうが、それとは別に、力学的な合理性をより突き詰めた、打撃技の鍛錬に用いる、より精細で合理的なデザインが可能になると思われます。

これは、伝統文化が科学による介入を受けてより洗練される可能性、の一端であるでしょう。ただし、一歩間違えば、体系を破壊してしまったり、的外れな解析に基づいてとんでも無い物を作り出してしまう可能性もあるので、道具の効果研究も含めて実証的に検討されるべきでしょうけれども。

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余談

剣道用の鍛錬具で面白いと思ったのは、室内用の、狭い空間でも振れる短さだが、振った感じが実際の竹刀に近い、という短竹刀。これらがどのような根拠に基づいて作製されているかは知りませんが、これから積極的にこういった道具を、単に経験に頼るだけで無く、科学的合理的にデザインしていくというのは興味深い事です。
※よく出来る人の経験が重要である事、そもそもそれをも考慮してアプローチしていくのが科学という知的営為である事、は言うまでも無い当然の話ですが、念のため書いておきます。

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2011年4月16日 (土)

approach

complex_catさんに頂いたコメントへのお返事です

先に挙げたインパクトバイオメカニクスは、主に交通事故による障害について、バイオメカニクスや医学などの知見から学際的に解析する分野のようですが、一般的に対象となるのは、専ら事故的な、つまり意図せずに見舞われてしまった出来事に関連する事象の考察だと思われます。

武技の場合は、相手の身体を積極的に破壊する技法で、武術とはそれを洗練・深化させた身体運用法に関する知識の体系ですから、力学的に効率的な打撃の仕方(打撃者のバイオメカニクス)、有効なポジションへの持って行き方(自他の体勢などがどのような状態にあれば良いのか、という論理。力学的な部分と相互作用すると思われる。技術としては崩しや捌きなどと関連)、そして打撃する部位など、様々な事について経験的に知識が集積されてきたと考えられます。

スポーツの外傷については、先に書いたようにスポーツ医科学分野で考察されているでしょうけれども、より細かい所での力の加わり方などについて、武術を具体的に対象としたものは見当たらないので、そこを解明するにはどのような分野の援用が出来るか、と考察したのが先のエントリーの主旨です。

少し話がずれますが、野球における投球を対象にした、姫野龍太郎氏らによる研究は、興味を持つ人達に有名かと思います。つまり、選手のフォームや、投げ放たれたボール、及びそれらの連関について、流体力学的?なシミュレーションなどを駆使して工学的に解析していくアプローチですね。それによって、常識的に考えられてきた現象について、より細かい在り様やメカニズムが明らかになったと聞きます。そういった細やかな解析が、本当に科学的に武術を解りたいと考えるならば必要であろう、と私は認識しています。

それで、どうしてインパクトバイオメカニクスに着目したかというと、それは、複雑な現象をシミュレーションなどで工学的に解析していく、という方向性もさる事ながら、武術と共通するものとして、実験研究が倫理的に困難である、という点も考えてのものでした。

前に、剣術について考える際に、模擬の剣(竹刀など含む)は真剣の代替でしか無いが故に、本当の刀を用いる技術体系の科学的な解明は非常に難しいとし、その理由の一つとして、実験が出来ないから、と書きました。
そして、解明には、「刃物」の働きを機械工学的に捉えたり、シミュレーションを用いたりなど、様々な方向性からのアプローチが重要であろう事も書いた訳ですが、問題意識としては、そこで考えたものと全く繋がっています。交通事故も実験は出来ませんよね。であるから、より現実の現象を精細に模擬すべく、シミュレーションの方法を駆使してアプローチしている(しようと試みている)と見た訳です。
結局答えは出なかった: Interdisciplinary

武術は実践しにくいがために、代替的・模擬的な訓練の体系を作り上げてきた訳ですよね。型稽古しかり、試割りや巻藁突きしかり。道具の面で言うと、袋竹刀や竹刀の発明。そして、試合という、記号化を施して勝敗を競うという競技化の発展。

そうする事で、実践的な部分をシミュレートした鍛錬の体系が出来てきた。しかし、考えてみると、それらのものがどう実践と理論的あるいは合理的に繋がっているのか、はとてもむつかしい問題です。
たとえば、据え物斬りでも試割りでも、「それが出来たら何だと言うのだ」といった批判が絡んだ議論は昔からありますが、実際、これら議論に関わる論点は複数あり、そうそう簡単に解明出来るものでは無いと考えられます。
(競技化して云々、には、ある程度安全を確保して、試合可能なように適度に記号化したら、武術としての汎用性など、その本質を失うのではないか、といったむつかしい議論がある。剣術などは解りやすい――”本物”は真剣を使うのを意味するので、それを模擬した道具で試合するのが一体どこまで本物に近い?となる。上記リンク参照)

瓦何十枚割った所で何になるのか、竹を切った所で人もそれで斬れるのか、とは体系の内外から浴びせられる批判でしょうが、それは素朴な疑問でありながら、実にクリティカルです。物体として性質が異なるものを、本物(武術では、攻撃対象:人体 攻撃に用いる道具:刀など)に見立てて稽古に用いる。それを用いるのは人体に実際攻撃するのとどのくらい共通していて、どのくらい隔たっているのか、それは競技上の優劣を判定する記号的な基準(瓦割りの枚数で勝敗を決するなど)、あるいは演武というパフォーマンスの要素(素人を驚かせるためのものとして)以上のものであるのか無いのか、など、色々の見方が出来ます。

そこら辺も考え併せて、主に力学の部分にクローズアップして、「ヒトはどのような力学的衝撃でどのように”壊れ得る”のか」という一般的な部分を解明する分野であるインパクトバイオメカニクスの援用は興味深いのではないか、と思い紹介した次第です。そして、それと共に、「ヒトはどのように物を”壊し得る”のか」という見方と両方考える事によって、打撃技という武術的現象がより科学的に明らかになるであろう、と言いたかったのでした。

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2011年4月12日 (火)

わらう

わらうのは好きだけど、嗤うのはどうにも。
寒くなるんですよね。ゾッとする。わらわせようとしていない人がわらわれている事に。

とは言え、皮肉を言ったりして結果的にそういう事をする自分に寒気を感じるのもしばしばで。何やってるんだろう自分、て。

あんまり良くないですね。

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2011年4月10日 (日)

方針

前に書いた気もしますが、ふと思い出したので。

このブログでは、一度エントリーをアップした後で文章を変更した際、それが細かい表現の修正やタイポの直し程度だった場合は、必ずしもそれについて明記はしないです。
多めに修正した場合――文章を削ったり足したりした――などは、コメント欄で補足する事もありますが、基本的に、細かいのは報告しません。

で、文章の意味合いを明らかに変更したり、主張を覆したり意見の訂正を行った場合には、青字で本文に追記するか、コメント欄で補足説明しています。

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2011年4月 9日 (土)

インパクトバイオメカニクスと武術

寸勁とかって、武術フリークの「浪漫」的な位置づけの技法ですよね。もちろん、捉え方としては、マンガに出て来るような、万能で超絶破壊力の技、という風に見ている人もいれば、もう少し現実的と言うか、ごく近間の間合いにおける有効な加撃技法の一種、という程度に見ている人もいるでしょうが、いずれにしても、打撃に用いる身体部位を、対象に相当接近した場所に置き、そこから有効な打撃を加える、非常に特殊な技法である(いわゆる常識はずれな)、という認識は共通しているでしょう。

で、単に「当てる」というだけでは武術的に意味は無いから、そこには「(武術的に)有効な」という合目的性が入ってくる訳ですね。要するに、「手なりを超接近させた状態から運動を開始して”効く”攻撃を与える」という目的。

その観点は、興味を持つ人なら誰しも解るものです。そして、何とかその技法を説明しようと、経験や観察に基づいて、色々な概念や用語を駆使する。そこでは、たとえばアナロジーを用いたり、などが行われます。つまり、身の回りにある物体や活動になぞらえて技術を説明する訳ですね。○○をxxするように――といった類の説明。

しかし、この種の説明は、伝承の面で有効に働く場合はあるものの、現象の解明という面から考えるならば、些か弱いと言わざるを得ません。ありていに言うと、「客観性に欠ける」。喩えは、実体(つまり身体)の働きを他の現象を手がかりにして認識し、技法を会得する、そういうために用いるものであるから、「現象の機構を正確に記述・説明する」ものとしては弱い。

それで、一般に、ヒトの身体運動をより客観的に解明するものと言えば、それは科学です。具体的に言うと、まず物理現象を解明する基盤としての物理学(特に力学)であり、生体の力学的側面を解明するバイオメカニクス(生体力学)であり、バイオメカニクスの中でも特にヒトという動物の運動の構造や機能を解明するために発展しているスポーツバイオメカニクスなどです。
つまり、ヒトの身体という「物」は、色々の物理的化学的特徴を持った生体により構成されており、生理学的な機能に規定されつつ解剖学的構造に従って運動し得る存在なので、その生理学的あるいは力学的側面を自然科学的に解明する視座を欠かしたのでは、興味のある技について本当に「知る」事は出来ないと考えられます。

当然、この見方からすると、武術を極めれば物理法則を超えて云々、などといったものは最初から排除する事になります。私は、まずその立場を採る事が重要だと認識しています。初めから、ヒトとは自然科学的メカニズムに規定された存在である、と看做しているからです。ここは世界観にも繋がる根本的な部分なので、色々な立場があり得る所でしょうが、もし、「得られた証拠に基づいて論証を積み重ねて対象の機構を解明していく」立場を採るのならば、数えきれないほどの実験や理論的考察によって最も精密に組み立てられてきた経験科学たる物理学と、それを基盤としたバイオメカニクスなどによる解析という考えを無視する事は出来ないと思います。

さて、以上を一般論として、冒頭の問題に戻ります。寸勁の話ですね。
通常、スポーツバイオメカニクス的なアプローチで武術の打撃技を捉える場合に考えやすいのは、技のフォームであったり、どの部分の筋肉をどのように使うか、といった、「打撃を与える側」の解析でしょう。モーションキャプチャなりフォースプレートなりを用いて力学的に解析していく。

ところが、武術にしろ格闘技にしろ、技の目的は(ここでは打撃技に限定する)、いかに相手に有効な打撃を加えるか、というものです。最初の方で書きましたね。そして、「打撃を加える対象」もヒトです。つまり、ほぼ一様な物理的性質を持った物体でも無ければ、全く動かない物でも無い。様々な生体組織により構成され、複雑な物理的性質を持ち、更に意図を持って主体的な運動を行う存在です。

ですから、考えるべき現象として、「打撃を与えられる側」の力学的な側面があります。寸勁で言うと、まず「打撃を与える側」がどのように運動しているか、あるいは運動し得るか、という観点があり、「打撃を与えられる側」がどのような解剖学的構造と物理的性質を持っているか、という観点がある。そして、「打撃」という現象はその二者の相互作用で成り立っている、と考えられるのです。

寸勁の研究で言うと、武術界では吉福康郎氏によるものが有名だと思いますが、氏の研究では(私が知る限りは)、打撃を行う側のバイオメカニクス的解析が主であり、打撃する対象は、力積などを測れるよう上手く工夫して作られた装置だったようです。
自分が調べた限りでは、武術系の独特な打撃技(寸勁の類の短打)の研究では、そのような観点以外のものを見た事はありません。つまり、必ずしも「打撃される側」の力学的解析という観点から研究されたものは充実していないという印象です。
私が考えるに、その原因として、打撃を与える側を力学的に解析すれば充分である、という楽観的な見方が一つはあるのだろうと思っています。

そしてもう一つ考えられるのが、打撃者――被打撃者 に働く力学的現象という系を考えた場合に、あまりに現象が複雑過ぎて実験を行う事がむつかしい、という原因だと思われます。

私は以前より、武術的な打撃技の科学的解明を考える場合に、単に打撃側の力学的論理を考察するだけでは無く、「ヒトは外的な力によりどのように影響を受け得るのか」という見方が必要だ、と認識していました。つまり、後者の見方を欠いていては、「どのように打撃を行うべきか」という所も解明出来ないと思っていた訳です。最初の方で合目的性と書きましたが、今の文脈で言うと、接近した間合いにおいて打撃を加え「相手に効かせる」事が目的なので、その目的について「合目的的である」事が、「打撃者の身体運動」に求められるのです。そして、相手に効かせるのが目的であるのだから、「効くとはどういう事なのか」という観点が必須不可欠であると言える訳です。

で、武術関連の研究を、CiNiiなどで事あるごとに調べているのですが、その観点から考察されているものはやはり見つけられませんでした。見逃しているのか、それともそういうアプローチ自体が無いのかは判りませんが、いずれにしてもポピュラーな見方では無いのだと思います。

そういう事情もあって、具体的な武術研究ではどうもそういうのは無さそうだ、果たしてどういうアプローチが考えられるのだろう、ともやもやしていたのですが、ある時ふと閃いたのが、

「交通事故の研究」

がヒントになるのではなかろうか、というものでした。
交通事故というのは(残念な事に)比較的身近な現象であり、車両の設計などの工学的・技術的問題や医学的な問題などと密接に関わっているだろうから、そこについて力学的工学的アプローチを行う分野があるのではないか、と考えついたのです。それは学問的な分野としてもありそうだし、共に思いついたのは、自動車メーカーもそのようなアプローチを採っているのでは、というものでした。なにしろ事故を起こしにくい、あるいは起こしても損害を最小限に留める、というのは設計上の最も重要な問題の一つでしょうから、おそらく本格的な研究を行っているのではないか、と見たのです。

そして色々調べたのですが、やはりありました。それが、

「インパクトバイオメカニクス」

という分野と、自動車メーカーなどによる、ダミーを用いた衝突実験やシミュレータによるアプローチの実態です。
インパクトバイオメカニクスという分野に馴染みが無い方も多いだろうと思いますので、関連のサイトから引用してみましょう。

インパクトバイオメカニクス部門委員会

 「インパクトバイオメカニクス」は事故による傷害発生を防ぐため,衝突時の人体の受傷メカニズムを工学と医学との両面から機能的な連携を図り研究することが命題です.基幹的な技術分野である.最近のIT・先端技術の高度化とその導入などにより,自動車における予防安全と衝突安全との統合が進展しており,このような境界領域の狭間において発生する恐れのある人体への傷害の発生状況をより的確に把握することがより重要な課題となっています.本委員会では,自動車の安全性の確保に不可欠な工学と医学の境界領域であるインパクトバイオメカニクスに関する先端技術の習得・情報交換の場を設定し,さらに,スポーツ傷害(福祉分野)および法工学,救急医療や事故調査,賠償保険に関する国内外の先端技術動向調査を行うことを目的としています.

インパクトバイオメカニクス(頭部傷害・子ども事故傷害)

 頭部傷害は交通事故,転倒,スポーツ等様々な衝撃形態において発生し,また非常に重篤な傷害です.例えば交通事故だけでも,年間 7000人の犠牲者のうち約50パーセントが脳外傷を死因としています.事故による犠牲者を減らすためには,まずその発生メカニズムを解明し,それに基づいた防護用品の設計を行うことが必要です.しかし,現状では脳外傷発生メカニズムは明確に解明されていないため,現状のヘルメットやエアバッグなどの防護用品に対する設計基準は真に有効であるとは言い切れません.  そこで,本研究ではCTやMR画像から忠実に形状を構築した頭部物理モデルと有限要素モデルの両面から,種々の衝撃条件における頭蓋内部の力学状態を明らかにし,頭部傷害発生メカニズムを解明することを試みています.
図1は頭部有限要素モデルにより前頭部に衝撃が加わった際の脳の圧力分布を計算し,色の濃淡で示したものです.このようにコンピュータシミュレーションを利用することにより実験では計測が難しい脳の応力状態を可視化することができます.一方で,図2はラピッドプロトタイピング技術を応用して構築された頭部の物理モデルと衝撃実験の様子を示したもので,頭部に衝撃が加わった際の頭蓋内部の圧力応答を計測できます.実験によりコンピュータシミュレーションの精度検証や現象の実観測を行っています.

第1回インパクトバイオメカニクス研究会

「衝撃力が入力した時の生体の挙動や各部に生じる応力等を実験解析,ダミー人形,マルチボディや有限要素人体モデル等の各種手法を用いて明らかにすることにより(1)自動車衝突時の乗員や歩行者の障害(2)スポーツ障害(3)転倒時の高齢者の障害等の発生メカニズムを広く調査・研究する.」※丸囲み文字は丸括弧に変更

このように、ヒトの身体の模型を用いたり、人体各部の有限要素モデルによるシミュレーションを行うなどして、力学的衝撃によりどのような障害が齎されるかを工学的に解明していく、というアプローチです。
現状では主に交通事故やスポーツによる障害、あるいは高齢者の転倒等による障害の解析が行われているようですが、まさにこのようなアプローチは、武術の打撃技の解析にも使えるのではないか、と私は考えたのです。
つまり、インパクトバイオメカニクス的な知見によって、

1)ヒトは、頭部なり胸部なりにどのような衝撃が加わればどのような影響を受けるか。

という観点からの考察がより精細に可能になり、そこから、

2)そのような力学的衝撃を「ヒトが生成して対象に加える」事は可能か。

と考察する事が出来るという訳です。

武術の世界では、寸勁(に限りませんが)にしても柔術の当身にしても、時に伝説的なエピソードが採り上げられます。一撃で相手を絶命させるとか、通常では考えられないような位置やフォームなのにとんでもない威力を持った打撃で敵を倒した、などの。
そういうエピソードが盛んに議論を呼ぶのですね。そんなものあり得ない、という批判的な見方があり、いや実際にあったのだ、武術はそういう可能性を内蔵しているのだ、という擁護的な見方がある。
そして、いずれの立場も、逸話や個人の経験、あるいは素朴な物理などの知識に基づいて話をしているので、あまり実りある議論になりにくいのですね。

だからこそ、上記したようなアプローチが重要と考えるのです。ヒトはどういう力学的衝撃でどういう影響を受けるのか、そして、ヒトはヒトにどういう力学的衝撃を与え得るのか。そういう二面からのアプローチ。

実は武術研究においてインパクトバイオメカニクス的な考察が行われている例というのはあるかも知れませんが、あったとしても恐らく少数でしょう。そういった工学的アプローチというのがそもそも、相当複雑な条件が絡んだ系の解析でしょうから、普及には計算機科学や高機能のコンピュータの発展を待たなければなかったのだろうと想像します。
いずれにしても、「武術における特徴的な打撃技(象徴的には寸勁など)」という現象を解明するにはそういったアプローチが重要である、という私の見方はそれほど的を外していないのではないでしょうか。

言葉では、単に「打撃」とか「攻撃」などと表されるものですが、その実態はヒト――ヒト の関係における、生理学や解剖学や力学が絡んだ相当に複雑な現象である、というのを念頭に置いておく必要があるものと考えます。

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2011年4月 3日 (日)

はっはっは

何でもかんでも「派」に分けたがる人いるよねー。

個別の論を吟味せずに大雑把にもの言えば済むから楽だよねー。

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2011年4月 1日 (金)

なんと

体重が5t増えた。

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