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2011年3月に作成された記事

2011年3月31日 (木)

賢いだけでは

「賢さ」というのを、(哲学的・心理学的な議論は無視して)「知識の運用能力」とでもするならば。

時々刻々と変化する状況を適切に把握し、的を外さない見通しをつけるためには、具体的な知識が備わっていなくてはいかんともしがたいでしょう。情報を迅速に処理して上手く整理するという一般的な能力があったとしても、考察する対象に関わる色々の専門用語やメカニズムを知らなくては、まともな事は言えない。せいぜい、既存の知識からの類推と直感をもって、知らない人にとっては尤もらしい事を仄めかす、といった程度にしかならないでしょう。

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2011年3月29日 (火)

放射能――正しく黙るためにも

このような事態においては、正しく黙れる能力も大切である、というのが、最近痛感している事です。
しかし、正しく黙れるためには、ある程度の知識を持っている必要があるでしょう。

という訳で、一般の人が特に関心を持つと思われるであろう「放射能」や「放射線」、そして「ベクレル」や「シーベルト」などについて書かれたものを、放射線医学を平易に解説したテキストから引用してみます。また、それぞれの用語について、より詳しい解説が書いてあるページにリンクし、情報を補います。多少でも役に立ててもらえれば幸いです。

引用文献:放射線医学総合研究所[編] 『知っていますか? 医療と放射線 放射線の基礎から最先端の重粒子線治療まで』 ※P10・P11(放射線・放射能)および、P22-P24(ベクレル・グレイ・シーベルト)より引用。図はP11、P25よりキャプチャ。

 知っていますか?医療と放射線 放射線の基礎から最先端の重粒子線治療まで 知っていますか?医療と放射線 放射線の基礎から最先端の重粒子線治療まで
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○ベクレル

 ベクレル(Bq)
 放射性同位元素とは、放射線を出す元素のことでしたね。この放射性同位元素が放射線を出す強さ、つまり放射能の強さを計る単位としてベクレル(Bq)が使われます。以前はキュリーという単位が使われていたので、そちらのほうがなじみがあるかもしれません。
放射性同位元素はその原子核が壊れることで放射線を出しています。したがって、たくさん原子核が壊れたら、たくさんの放射線が出てきますから、放射能が強いことになります。
1ベクレルは、1秒間に1個の原子核が壊れるときの放射能の強さです。同じ放射性同位元素の場合、1ベクレルと10ベクレルを比べると、10ベクレルのほうが10倍、放射能が強いということができます。
 医療の現場では、「前立腺がんは、○○ベクレルの放射性同位元素を直接、前立腺に埋め込んで治療します」のように使います。

放射線(ほうしゃせん)、放射線の種類(しゅるい) | 種類(しゅるい)と性質(せいしつ) | あとみん用語集-小学生-

放射能 | 放射線の影響 | あとみん用語集-中・高校生-

放射線と放射能 アトム博士の用語集|原子力、放射線、エネルギーと環境のことが学べるあとみん

ベクレル | 発見・人・歴史 | あとみん用語集-中・高校生-

放射能 - ATOMICA -

ベクレル - ATOMICA

○グレイ

 グレイ=吸収線量(Gy)
 ある物質が受けた放射線の量をエネルギーを基準にして表したものです。ここでは太陽の光を例に説明しましょう。太陽の光にあたると温かく感じます。これは太陽の光が私たちの体にエネルギーを与えているからです。放射線も同じで、放射線がある物質を通過するとき、その物質にエネルギーを与えるのです。放射線があたって1キログラムの物が1ジュール(1ジュールは約0.238カロリー)のエネルギーを吸収すると、そのときの放射線の量は1グレイとなります。
 医療の現場では「あなたの腫瘍は、1回2グレイで30回、合計で60グレイの放射線量で治療をしましょう」というように使われます。合計60グレイですから、仮に対象とする腫瘍が1キログラムという大きなものであったとしたら60ジュールのエネルギーを与える放射線があてられるということになります。

吸収線量 | 種類と性質 | あとみん用語集-中・高校生-

グレイ(Gy) | 発見・人・歴史 | あとみん用語集-中・高校生-

吸収線量 - ATOMICA -

グレイ - ATOMICA -

○シーベルト

 シーベルト=実効線量(Sv)
 同じエネルギーを受けても、放射線の種類やあたる場所(臓器)によって、放射線の人の健康への影響は異なってきます。同じエネルギーを受けてもエックス線やガンマ線に比べ中性子線は5~20倍、アルファ線は20倍も高い影響を与えることがあります。また、受ける場所によっても、その後の影響は異なります。つまり、放射線を足の先に受けるか、放射線に弱い骨髄に受けるか、肺や肝臓に受けるか、そういった受ける場所によって、その後の健康に与える影響は違ってきます。
 このように放射線の種類や、あたった臓器ごとの影響の違いを考慮に入れた単位がシーベルトです。人の健康に対する「実際の効果」を基準にした線量ですから、実効線量とよばれています。シーベルトの千分の1を表す、ミリシーベルトという単位で使われることが多いです。
 医療の現場では「胸のエックス線検査では、1回の検査における実効線量は0.05ミリシーベルト以下であり、人が1年間に自然環境から受ける実効線量2.4ミリシーベルト(引用者註:世界平均。下記リンク先の図を参照)よりずっと少ないので、健康への影響は少ない」というように使われます。
 次のページの図 画像へのリンク は、私たちのまわりにある放射線の量を図示したものです。放射線の量の単位が、シーベルトとグレイになっていることに注目してください。放射線量が少ない領域ではシーベルト(普通はその千分の1のミリシーベルト)が使われています。これは全身に放射線を浴びることで将来起こってくる影響(がんなどの発症)を基準にするからです。一方、治療に使われる放射線の単位には、実際に吸収される放射線のエネルギーを示すグレイという単位が使われます。

ベクレルとシーベルト アトム博士の用語集|原子力、放射線、エネルギーと環境のことが学べるあとみん

シーベルト(Sv) | 放射線の影響 | あとみん用語集-中・高校生-

等価線量 | 種類と性質 | あとみん用語集-中・高校生-

等価線量 - ATOMICA -

実効線量 - ATOMICA -

シーベルト - ATOMICA -

○放射線・放射能

 3 放射能と放射線、放射性物質と放射性同位元素
 ここで少し言葉の説明をしておきましょう。はじめは放射能と放射線です。放射「能」と放射「線」、後ろにつく一字が違うと、意味も少し違ってきます。
「放射線」は第1項でも説明しましたように、光や電波の仲間(たとえばエックス線(X線))や原子を構成する粒子の非常に速い流れ(たとえば電子線)でしたね。一方、放射能というのは、放射線を出す能力のことです。放射線を光と考えると、放射能は電球のように光を出す能力です。
 医療に関連して、放射性物質、放射性薬剤、放射性同位元素、放射性同位体、放射性核種といった難しい言葉を聞くことがあります。「放射性」という言葉からわかるように、どの言葉も「放射線を出すもの」のことです。ただし、はじめの「放射性物質・放射性薬剤」と、あとの「放射性同位元素、放射性同位体、放射性核種」には、少し違いがあります。
画像へのリンク をご覧ください。甲状腺の検査に使う検査薬を例に説明しましょう。甲状腺検査には「ヨウ素123」という放射性同位元素を含んだ検査薬を使います。含まれているヨウ素123は放射性同位元素とよばれます。放射性同位体や放射性核種ということもあります。放射性同位元素、放射性同位体、放射性核種はほとんど同じ意味です。一方、検査薬はヨウ素123という放射性同位元素のほかに、水や安定剤などの放射線を出さない物質を含んでいます。このように放射性同位元素が含まれるものを放射性物質(薬のときは放射性薬剤)とよびます。つまり、放射性物質というのは、放射性同位元素を含む物質という意味です。なお、放射性同位元素による検査や治療は、別の項(第32,34項)でご紹介します。
 放射性同位限元素という代わりに、英語のラジオアイソトープという言葉がよく使われます。また、ラジオアイソトープ(Radio Isotope)の頭文字をとって、アール・アイとよぶこともあります。病院などで、「アール・アイ検査(RI検査)を受けてください」といわれたときは放射性同位元素を用いた検査を受けるということになります。

同位体(アイソトープ) | 種類と性質 | あとみん用語集-中・高校生-

放射性同位体(ラジオアイソトープ) | 種類と性質 | あとみん用語集-中・高校生-

放射性物質 アトム博士の用語集|原子力、放射線、エネルギーと環境のことが学べるあとみん

同位体・同位元素 アトム博士の用語集|原子力、放射線、エネルギーと環境のことが学べるあとみん

同位元素 - ATOMICA -

同位体 - ATOMICA -

放射性同位体 - ATOMICA -

放射性同位元素 - ATOMICA -

放射性核種 - ATOMICA -

放射性医薬品 - ATOMICA -

○参考資料

北里大学病院放射線部による、基本的な知識の説明、および同病院における放射線被曝線量データなど⇒医療の中の放射線基礎知識 : 放射線部 : 北里大学病院

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2011年3月26日 (土)

想定の内と外

改訂 原子力安全の論理 Book 改訂 原子力安全の論理

著者:佐藤 一男
販売元:日刊工業新聞社
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再び佐藤氏の本から引用します。別所でも引用した部分です。

(略)だから、例えば、「シビアアクシデントを考慮に入れていない設計は不十分である」というような主張を時々目にするが、これは少々矛盾したものの言い方である。おそらく言わんとしていることは、「設計の範囲、すなわちDBEで包絡している範囲が狭過ぎるから、もっとこれを広げて、これまでシビアアクシデントになっているところも、設計の範囲に入れるべきだ」ということなのだろう。そういうことなら、これはもちろん十分検討すべきことである。このことは、前に安全審査の範囲について述べたところと同じである。 更に、「安全設計上想定された手段では」というところにも注意して頂きたい。これはつまり、設計において明確な目的を持って予め用意した対策では、炉心の冷却や反応度の制御ができなくなっても、もしそれ以外の手段が見つかれば、事故の進展を少なくともある程度は制御できるかもしれないということになる。これもまた、次に述べるアクシデント・マネージメントの、一つの礎地になっているのである。
佐藤一男 『改訂 原子力安全の論理』P208・209 より引用

報道でも「想定外」の言葉が踊っていますが、その語がどういう意味で用いられているか、その意味するであろう所を押さえておくのは重要でしょう。概念の把握がずれていれば、議論も噛み合わなくなる虞がありますので。

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2011年3月19日 (土)

シビアアクシデント 溶融

 シビアアクシデントの定義のところで述べたように、事故が設計の範囲を超えても、まだシビアアクシデントとは言えないグレイゾーンがある。この範囲では、施設の安全余裕によって、設計の範囲とわずかしか違わない程度の影響で、事故を収束させることが可能である。更に、これも定義のところで述べたように、シビアアクシデントにも様々な程度があり、周辺公衆への影響もそれこそピンからキリまである。
 軽水炉の場合、事故が設計の範囲を超え、どんどん悪化していくと、炉心は高温になり、まず一部が、更に進めばもっと大きな部分が崩壊し、溶融する。かなりの規模の溶融が起っても、溶融した燃料や構造材料(「コリウム」と呼ぶ)が、原子炉の圧力容器の中にとどまっている間は、格納容器の機能によって周辺への放射性物質の放出はまだ比較的小規模である。これは、前に紹介した多重防護の機能の一例である。この状況を「In-vessel melt:圧力容器内溶融」と呼んでいる。TMI事故はこの状況まで事故が進展したが、周辺公衆の被ばく線量はごくわずかでほとんど無視出来る程度であった。
 事故が更に悪化して、原子炉圧力容器まで破壊されると、コリウムが格納容器内に出てくる。この状況を「Ex-vessel melt:圧力容器外溶融」と呼んでいる。こうなっても、格納容器が健全であれば、環境への放射性物質の放出はまだ限られたものである。しかし、コリウムが格納容器内に出て来ると、様々なメカニズムで、格納容器の機能が失われる可能性が高くなる。
 格納容器が機能喪失すれば、もちろん、周辺に重大な影響を与え得ることになるが、この場合でも、状況によってかなりの差が生じ得る。例えば、機能喪失までにある程度時間がかかる場合には、寿命の短い放射性物質は減衰して量が減っていくし、様々な物理的・化学的反応によって、環境中に放散しにくい形に変化するものもある。
 したがって、周辺公衆に最も深刻な影響を与える事故シーケンスは、比較的短時間で炉心が重大な損傷を受け、圧力容器が破壊され、更に格納容器も機能喪失する場合、すなわち前に紹介した多重FP障壁が短時間内に全て機能喪失する場合がほとんどであると考えてよい。軽水炉ではないが、チェルノブイリ事故では、まさにこのような事故シーケンスが発生した。このような事故が起こる確率は、わが国の軽水炉でももちろんゼロではないが、極めて低いものだとは言えるであろう。
佐藤一男 『改訂 原子力安全の論理』 P213・214

改訂 原子力安全の論理 Book 改訂 原子力安全の論理

著者:佐藤 一男

販売元:日刊工業新聞社
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予断を許さない状況が続いている福島第一原子力発電所ですが、今後の見通しなどについて、様々な論者が色々の主張を展開していて、錯綜しています。
正義感からなのか、原子力工学などとほとんど関係の無い分野の学者が「教えたがり」のようになっていて、そのデタラメさが指摘されてもいるようです。真っ先に情報を発信して注意を喚起する、あるいは有用な対策を知らしめる、というその心意気や佳し、ですが、そこに、科学的に不正確な知識や工学的に的外れな指摘が含まれていれば、結果的に誤った情報を流布する事になり、場合によっては市民を煽り、パニックに近い心理を懐かせる虞もあります。
そういう部分に思いを馳せるならば、「黙っている」、または「分からないと正直に言う」事が誠実な態度の場合もある、と言えるでしょう。

極めて重大な出来事が起こっている非常時なので、当該対象について「語りたがり」も沢山出てきているようです。自己の経験に基づいて原子力発電所の設計のあり方について物申したり、関係者の言動を評価したり。
今回のケースにおいて、どのような事象が想定内であったのか無かったのか。どこまでを設計に組み込んでいるべきであったのか。それらに関する過去に行われた膨大な議論をきちんと参照し、原子力に関する専門知識をある程度有しており、情報を総合的に整理し吟味してこそ、多少は物が言える、となるのではないでしょうか。

タイトルに掲げた「シビアアクシデント」という用語を知らない人もいるでしょう。あるいは、「炉心溶融」などの専門用語もかなり周知されてきたようですが、これまで馴染みの無かった人も多いでしょう。
言葉自体を今回の出来事で初めて知った、という人も多いのではないでしょうか。にも拘らずに、それらの語を適当にちりばめて意見する「知りたがり」も散見されます。

かく言う私も、シビアアクシデントの語は知りませんでしたし、炉心溶融についても「なにやら大変な事」程度の認識でした。それでも、憶えたての言葉を使って尤もらしい意見を言いたくなるのですね。事が事だけに、一言言いたい、となる心性は、多くの人にあるのでしょう。

危ない事です。黙る慎重さを持ちたいし、それは必ずしも恥ずかしくは無いと考えます。

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2011年3月 8日 (火)

”3D”S

昨日は、3DSを体験した感想を書きました。その続きのようなものです。

Amazonで3DS本体の低評価レビューを見てみると、「他の部分は良いが3Dに見えない”から”評価を低くした」という意見がいくつも確認出来ました。

昨日も書いたように、私自身も立体視は出来なかった訳ですが、その部分にどのくらいの重み付けを行って商品全体の評価へ反映させるか、と考えると、なかなか難しいものがあります。

まず前提として、立体視が出来ない人は一定の割合いる、というのは判っていた事ですね。でも、一部ユーザーは、「買った後」で立体視出来ないのを理由に低評価を与えた。これについては、

・見えない人もいるのは判っているのに、買った後で、自分が見えなかったからといってその評価にするのはおかしい
・メーカーや販売店での周知が足りず、買った人が商品の目玉の機能を楽しめなかったのだから、商品全体のものとしてそのような評価を下すのは当然だ

などのような見方が出来るだろうと思います。つまり、そもそも見えない人もいるのに、わざわざ買って自分が見えなかったからといって低評価にするとはどういう了見か、という見方と、ちゃんと「見えない(見えにくい)可能性」を任天堂あるいは販売店がきちんと知らしめておかないのだから、そういう評価を与えるのも尤もである、という見方。

この商品は、名称に「3D」と冠しているので、その機能がメインであり、ウリとして前面に押し出しているのは明白です。ですから、その機能が楽しめる事を期待させていると言って構わないでしょう。
ユーザーとしては、特別な関心や経験(私は、他の立体視が出来なかった経験を持ち、見えないであろう条件にいくつも当てはまっていたので予測出来たのですが、前者はともかく後者は、わざわざ検索をして調べて知りました)を持っていない限り、そもそも立体視出来るか否か、という問題意識を持つ事はそう無いだろうな、と思います。ではどれだけ周知されていたか、とか、どのくらい先行体験出来る環境が整っているか、などがポイントとなるでしょう。

周知するにしてもどこまでやるか? という視点もありますね。販売時に一々、この商品は3D機能の感じ方に個人差があり、全く楽しめない人もいる、と断って同意を得てから売るのか、といったように。
現実的には、売り場のディスプレイに断り書きを入れておく、などのやり方が考えられるでしょうか。

後は、出来れば試遊台などをたくさん置いて、実際に体験出来る機会をなるべく作る、と。そうすれば、仮に見えないとしても、「見えなくても別に構わない」となって、納得の上で買うでしょう(もちろん、「見えないから買わない」「見えないから様子見」という場合もある)。別に、3D機能以外は現行機と変わらない、という性能では無いのですから。

こういうのって、任天堂から何らかのガイドライン的なものは出ているのかな。
現状でこの辺りがどうなっているか、今度販売店をまわって確認してみようと考えています。

ニンテンドー3DS コスモブラックVideo Gamesニンテンドー3DS コスモブラック

販売元:任天堂
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2011年3月 7日 (月)

見えなかった【3DS体験記】

ニンテンドー3DS アクアブルーVideo Gamesニンテンドー3DS アクアブルー

販売元:任天堂
発売日:2011/02/26
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友人宅で、3DSを体験しました。

結論から言うと、立体視が全く出来ませんでした。3Dボリュームをどう変化させても、数種のコンテンツで試してみても。
元々私は立体視出来にくい条件にいくつも当てはまっていたし、たとえばランダムドットステレオグラムや、メガネ型の3Dテレビでもちゃんと見えた事が無いので、予想通りではありました。

同様に立体視しにくい人は一定の割合いるようですので、もし、3D機能を楽しみたい、と思って3DSに注目している方、あるいはお子さんなどが欲しがっている場合には、出来れば店頭などで体験し、立体視出来るかどうかを確認するのが良いと思います。※任天堂による、店頭で体験出来る店舗一覧⇒ニンテンドー3DS|お店で体験|Nintendo

もちろん、3D機能は目玉ではありますが(なにしろ商品名についている)、全体的に機能向上している訳ですので、立体視出来ないから・・・という話では無いですね。ストリートファイターIVや顔シューティングをやらせてもらいましたが、やはりグラフィックの向上などよく判りますね。地味な所ではスピーカーが非常によくなっている(DSのがあまりにチープだというのもありますが)。

スーパーストリートファイターIV 3D EDITIONVideo GamesスーパーストリートファイターIV 3D EDITION

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やらせてもらったソフトの一つ。携帯機であのグラフィックがというのは、やはり感心しますね。
操作系は、一言「やりにくい」。携帯機で格闘ゲーム、というのがそもそも難しいものがありますが、それにしても戸惑いました。方向キーでやるとスライドパッドが干渉し、スライドパッドでやろうとすると、ついているのが上部なので、Lボタンを構えつつ移動やコマンド入力するのがスムーズにいかない。
波動拳などはするっと出せますし、スライドパッド自体の操作感は非常に良い感触です。コマンド入力を多用しない一般のアクションやロールプレイングでのキャラ移動などは、快適だろうと思います(リッジレーサーはすごくやりやすかった)。

ニンテンドー3DS|顔シューティング|Nintendo

これは、本体内蔵のゲームなのですが、私としては、このゲームが一番インパクトがありました(笑)
まず自分の顔なりを本体カメラで撮影して取り込んで、それが敵キャラとして出現するので撃っていく、というものなのですが、ステージが、カメラで捉えている画面なのですね。つまり、自分の部屋でやっているとしたら、そこがステージになる。で、敵の方向が表示されるので、それに合わせて本体を動かすと敵が見えてきて、それを撃つ、と。部屋全体がステージになり、全方向に3DS本体を動かして撃っていく。シンプルですが、実に面白い。

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本体のデザインも、おもちゃっぽさを残しつつも高級感があり、ずっしりとした重量感(これは携帯機としては欠点と捉える人もいるでしょうね)。なかなかいい感じです。

まだ発売されて間も無い事もあり、ソフトが出揃っていない感がありますが、今後発表されるラインナップが楽しみですね。本機で搭載された機能を駆使した面白いゲームが出てくるのでしょう。

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腰のひねり

「腰のひねり」

合気道において最重要の概念の一つ。特に剣で強調されるが、体術と剣の動きは共通している。世間的には、腰を切る、という言い方の方が一般的か。

目的としては。
「骨盤そのもの」が先行して回転されるように促す言葉遣い。

「腰をひねる」というと、骨盤の位置はそのままに上体を回転させていくような動き、ラジオ体操にあるようなものをイメージしがちなので(ねじる、と言えば想起しやすいかも知れない)、そうでは無い事に注意する。絞られる雑巾のような動きでは無く、回るでんでん太鼓、という感じだろうか。

バイオメカニクス的には、大腿や腰回りの筋肉を絶妙にコントロール? かなり複雑な運動そう。

上肢は固定しておく。そうして骨盤を回転させると、体幹全体が回転していく訳だから、上肢もつられて移動していく。つまり、肩関節の運動を積極的に行うのでは無いという事(「全く動かないように固定」してはならない。そもそも、腕が動かない訳は無い。せいぜい、学習の便のために、「全く動かさないくらいの気持ちで」と言って上達を促す際に使うくらいで、その場合に「文字通り」に受け取ろうとしてはならない)。腰を先行させて、上体には微細なコントロールを担当させる。力学的な合理性もあるだろうし、武術的に、手は正面(正中面――解剖学的意味とは ずれる)を護る必要があるので、無闇に外していかない事が肝要。
こういった動きが、「順体」などと呼ばれる場合がある。(黒田鉄山氏がよく用いる。元々は中国武術系の概念?)
武術に限らず、上肢を先行させる動きは、小手先の、と言って戒められる(これは芸事由来?)。

これらは経験的に有効であると知られ伝達されているもので、そのバイオメカニクス的な論理は未解明。

このような動きを意識すると、場合により、胴体を「箱のように」固めて運用する意識が形成される事がある。それに注意。元々ヒトの胴体はフレキシブルな構造をしているのだから、その構造機能をわざわざスポイルする必要は無い(むしろ非合理的)。

腰の回転&上肢固定 により生み出される手先の軌道
と、
上肢先行の運動 による手先の軌道
との違いを考える。
モーションキャプチャデータを取れば色々解るかも知れない。(Kinectなどの出現によって、個人レベルでの解析も――学術研究レベルの精度を求めなければ――手の届かない事では無くなった)
肩関節を支点とした回転運動を先行させるのと、体幹の回転運動(肩甲骨や胸椎や肋骨の周りの筋肉を働かせて)を先行させるのとでは、直感的にもかなりの違いがありそうではある。それがどう力学的な違いを生み出すかは別にして。
※武術の目的は「他者による暴力から身を守る」事であり、専ら直接の肉体的接触による攻撃に対処するものであるから、力学的に考察する際も、いかに相手を容易に制せられるか、という合目的性を達成するような、自己と他者とが取り結ぶ力学的関係を考えなくてはならない。あるいは、より有利に対処出来るようなポジショニング、つまり空間的な位置関係も重要。間合いであったり、反撃されない位置取りをしたり。
であるから、たとえば野球のスイングやピッチング、ゴルフのスイングなどの力学的研究を、「そのまま」援用する事は出来ないだろう(重要なヒントになるのは言うまでも無い)。

日本武術の抜刀などは、この腰の操作と剣の運用とが密接不可分な技術である、と見る。きっちり腰を切り、身体を割って(ある運動に付随する知覚を言語化したもの。肩甲部や大腿の運動に伴う知覚が関わっていると見ている。高岡は「割体」と名付けている)いかないと「抜けない」。そして、「ちゃんと抜く」には、腰を先行させた運動が達成されねばならない、という構造(高岡による、課題と課目 の関係)。そして、そのような身体運用によってなされる剣の操作が合目的的(敵の攻撃から身を守り相手を斬る。相手が何かする前に素早く斬る、など)である、という事なのだろう。

実は(私が知っている)杖術が、まさしく身体を割って遣う操法。(一部流派の)杖や抜刀をする方にはよく解って頂けると思うけれど、「腰の片方が前に出つつもう片方が後方に引かれる→”割れていく”」感じ、というのを覚えるはず。剣では半身だが、それよりもっと開く。そこでも腰のひねりが重要。左半身だとして、右手で突くのに腰の回転は「右回り」だったりする。通常の体術の逆突きとは反対、というのが非常に面白い。

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