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2009年3月 8日 (日)

身に着けたい

私は、ニセ科学に対して耐性をつけるにはこうあるべきだ、といった事はほとんど書いた事が無いのですが、それは、そもそもニセ科学というのはバリエーションが豊富で多分野にわたっており、しかも、誰が・どこで 言ったか、等の心理社会的バイアスが大きく働くから、一般的にどういう知識を持っておくべきか、というのを示すのは難しい、という考えからです。

しかしそれでも、こういう所について押さえておけば、ある程度は防御力を高める事が出来るのでは、という考えは、少しは持っています。それをちょっと書いてみます。

○科学における「実証」のプロセスの把握

科学において「実証」されるとはどういう意味か。どのような手順を踏まなければならないのか、という部分。具体的には(ある程度単純化)、論文執筆→査読→採択→他の科学者による追試→科学的知識として認められる というプロセス。土俵に上がろうとしない(論文を出さない等)ものは、そもそも相手にしない。仮説を確かめたい者が立証の責任を負い(立証責任)、杜撰な研究は篩い落とされる(査読)というシステム。篩い切れなかったものは、追試の状況によって判断される。

○「実験(experiment)」に関する、ある程度の知識

ビンを一個ずつ用意してそれに文字を書いた紙を貼り、その経過を見て結論めいたものを出し満足する、というケースが見られます。それは、「実験」というものについて、認識が素朴であると言えます。

ちょっと懐疑の力を働かせるならば、一個や二個どうこうしたからといって、それは「偶然」なのではないか、と認識するのは可能です。そうすると今度は、じゃあ「偶然じゃ無い」と言えるにはどうすれば良いのか、と考えが進む。「他の要因が働いている」、という疑問も出るかも知れません。その場合は、「他の要因の影響を取り除いたりするにはどうするか」、と考える事も出来るでしょう。

そして、そこら辺に関しては、既に偉大な先人達が考察し、「実験計画法(DE:Design of Experiments)」として確立されています。

○確率・統計の知識

上の実験についての部分とも関わります。

実験において、ある要因がどれくらい効いているか確かめたいと着目し、その因子を変化させながら結果を見ていく訳ですが、では、その因子の効果をどのように定量的・客観的に評価するか、偶然で無く確かにそれが効いていると言えるには、どういう実験をデザインし、データをどう解析していけば良いのか、という視点が重要です(実験計画法の問題意識)。そしてそれには、確率論・統計学の知識が必要です。

と言っても、何も統計学の複雑な理論を理解するべきだ、という無理な話をしているのでは無くて、一見意味があるような結果が出たように思えても、実はこれは偶然の産物なのでは、と一旦保留出来る、そんな姿勢を養えるくらいの知識があれば、それで充分だと思います。

これは重要な所だと思いますが、私達の大部分は、確率の初歩は習っています。そして、おそらく(あくまでおそらく)大部分は、その知識を忘れています。

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これは、よく私が書く事ですけれど、ニセ科学かどうかの判断においては、「プロセス」を踏んだか、というのが重要なポイントとして挙げられます。つまり、科学の研究で踏まなくてはならない手順をきちんと経て主張されているか、という部分。ですから、そのプロセスについて知っておく、というのは大事。そして、その手続きに使われる「道具」である所の「実験」、あるいは実験法の理論的基盤となる確率・統計の初歩、を知るのが肝要だと言えるでしょう。

何度も書きますが、ニセ科学を見抜くためにはこうすべきだ、と言うのは、なかなか難しい。ただ、姿勢として、「目新しい話は取り敢えず保留する」のがいいのかな、と。特に、自分が全く知識を持っていない分野の場合は、無視しても良いと思います。基本的にはね(その「目新しさ」が、「人の生き死に」に直結するような場合があるから、ニセ科学問題は難しい)。そして、出来る事なら、上に挙げたようなポイントを踏まえて、「実証されているか」どうかを意識しつつ見る、のが望ましい。

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コメント

エントリ記事の内容については、まったくもって同感なのですけど、いつも思うのは、「じゃあ、いつどこで身につけるべきなんだろう?」という事ですね。学校?

どうでも良いんですけど、「学校では教えてくれない○○」とか「本当に大切な事を学校は教えてくれない」とかいったコピーは、世間にはウケそうですね。そう言う人たちが学校に何を期待しているのかは知りませんけど……。

投稿: 田部勝也 | 2009年3月 9日 (月) 23:23

田部勝也さん、今晩は。

長くなってしまったので、エントリー上げました。レスからはちょっとはずれちゃってますけれど。

投稿: TAKESAN | 2009年3月10日 (火) 00:31

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