やはり答えは容易に出ない
うーん、さすが。専門誌でもほとんど見られないレベルの論考。
こういった、比較文化論的な問題に関しては、記号論辺りが考察の役に立つでしょうね。前にも書いたように、高岡英夫氏の初期の本のような。そういった認識を持てば、どれがより強いか、という問いにはそう簡単に答えられない、というのが解ってくる。
紹介されているドイツ剣術は、面白いですよね。やはり、長い刃物を使うという目的に向かって技術が発達していく場合、ある程度収斂するのでしょう。
ところで、ここでは、合気道の剣技については、あまり紹介してきませんでしたね。良い機会なので。
斉藤守弘先生。40秒辺りから、合気の剣。※映像と音声がずれています
注目は、1:11辺りの剣の合わせ。動きが小さ過ぎて気づきにくいかも知れませんが、ものすごい事をしています。剣の合わせは基本であり、かつ奥義でもある、というのがよく解ります。
合気道で重要とされるのが、「腰のひねり」と言われるもので、バイオメカニクス的には骨盤を回転させていくのを部分的に含みますが、それだけでは説明が不充分である、全身的な運動を指す言葉でもあります。上の斉藤先生の剣の受けに、私は中国武術的な、化勁による無力化に通ずるものを感じるのですが、いかがでしょうか。おそらく、古流における「切り落とし」や「合撃」の理合いとも通ずるのでしょう(合気の剣は、新陰流柳生派鹿島新当流の剣が採り入れられているようですが)。※確か柳生流も研究されていると思うのですが、具体的にどのような剣術の影響をどのくらい受けたか、というのは、歴史的な考察や比較技術論も入るので、知識不足の私には詳しい事は論じられません。
特殊な用語を用いず、「腰のひねり」という解りやすい説明を原理的概念として使われる所は、斉藤先生らしい部分なのかも知れません。徒に神秘的な言葉を使ったりするのを嫌われたようですしね。
個人的には、3:47秒辺りの「突き入り身投げ」もオススメ。
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コメント
最近見たものの中では,一番驚愕しました。
これはもの凄いですね。化勁の極致で,もう一つ剣の理合と合気の神技が全く境界無く体現されていて,私の見たかったものは,これだったかと思ったほどです。
有り難うございました。
究極の太極拳の戦闘法において,殆ど同じだと思いますが,陳家の4傑にも可能なのか?というような高いレベルです。
本当に驚きました。剣戟を打ち落とすような見た目のエネルギーなど見せず,何という流れなのでしょうか。聴勁も完璧ですね。
拳で云えば,暗打みたいなものですね。
合気道も本来の技は凄まじく剛猛なものですね。はっきり感じました。
投稿: complex_cat | 2009年1月 6日 (火) 01:32
complex_catさん、今日は。
全身が柔らかく機能的に連動しなければ、あのような動きは出来るものではありませんよね。剣技における一つの理想形であろうと思います。
合気の組太刀は、受けて勝つかたちが基本ですが、本文にも書いたように、受けは、基本であり、かつ奥義でもある訳ですね。古流においても、一本目が実は奥義である、というのは結構あるだろうと思います。
合気道で重要な概念は、正しい合わせと正しい角度。で、しっかりとした腰を基本の稽古で作って、上手に腰をひねっていくのが肝要です。
斉藤先生は、事も無げにやっておられるので、ものすごいですね。たゆまぬ練磨があってこそなのだろうと感じます。
投稿: TAKESAN | 2009年1月 6日 (火) 14:17