からだの「楽譜」
調べものをしていて、「ベネッシュ(・ムーブメント・)ノーテーション(Benesh (Movement) Notation)」というものがあるのを知りました。
身体運動を科学的に分析する文脈で紹介されていたのですが、なんでも、踊りの動きを「楽譜」のように表すそうです。参照⇒ベネッシュ・ノーテーションについて
紹介したページで動画が観られますが、そこで澤井麻奈美さんという方(@お茶の水女子大学)が、紹介しておられます。
五線譜の線を、身体の高さのラインに見立てて記録し、運動の軌跡も表せるようです(参照⇒ベネッシュ・ノーテーションの基本 ⇒ベネッシュ・ノーテーションによる記録例)。また、澤井さんによれば、骨盤や脊柱の回転の角度もある程度は記述出来るそうです。モーションキャプチャデータと比較しても、整合が見られたといいます(参照⇒ベネッシュ・ノーテーションとモーションデータの比較)。
私にとってこれは、目から鱗の情報でした。このような方法は、一般的にダンス・ノーテーションと呼ばれるそうで、色々の記譜の方法があるみたいです。
おそらく、舞踊方面の方にとってはポピュラーな概念なのでしょうが(日本舞踊でも同じような方法があるとか)、そちらに全く疎い私には、ある意味カルチャーショックでした。と言うのも、このような方法は、武術の型の保存にうってつけであると考えられるにも拘らず、類似のものが見られないからです。
もちろん、私が知らないだけという可能性もあります。しかし、主に文字情報と、より具象的な画を用いて型を伝承している流派がほとんどで、ダンス・ノーテーションのごとき、高度に抽象化・記号化されて、3次元的な身体運動の情報を上手に記述してみせる、という方法は、少なくとも広く知られてはいないと言っていいでしょう(もしあれば、教えて頂けると大変ありがたいです)。
尤も、最近は、武術を研究する人と舞踊家の交流などもあるようですから、採り入れている人はいるのかも知れませんが。
いや、しかし、勉強になりました。モーションキャプチャやスティックピクチャーのデータを2次元的に不足無く抽象化して表現する、という方法自体については、思いを馳せた事はありますが、既に確立しているとは思いませんでした。動きを楽譜で表すなんてね…。
これならば、亡くなった達人の映像からモーションデータを得、それから譜面を起こして伝承や教育―学習に役立てる、という具体的な方法が考えられます。舞踊方面で、動きを科学的に解析しながら保存していこうという動きもあるようですが、おそらくこういう方法を積極的に用いているのでしょう。以前そこら辺について、ちょっと調べた事はありますが、「動きの記譜」という所にはたどり着けませんでしたね……やはり、武術以外の分野にも広く目を向けるべきだ、と思った次第。
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解る方向け。
たとえば、斉藤先生による31の杖や13の杖の示範の映像を解析して、それを譜面に起こす、というのが出来そうです。そうすれば、ビデオが参照出来ない場面なんかでも、学習に役立てられると思います。中国武術の套路の勉強にもうってつけな気がします。ただ、武術は相手との力学的関係が重要で、変化などもあるから、ある程度明確に規定された一人型を覚えるために利用する、というのに留めた方が良いのかも知れませんけれども。
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コメント
TAKESANさん こんにちは。
高岡氏の著作でラバノテーションについて書いてあるのを読んだ覚えがあります。
書名とどういう文脈だったかは思い出せないのですが。
ラバノテーションについてはコチラ
http://staff.aist.go.jp/toru-nakata/shintairon.html
投稿: グレートパンダー | 2008年12月22日 (月) 13:42
グレートパンダーさん、今日は。
えっ、本当ですか?
確かに、高岡氏は舞踊方面(と言うか、身体運動文化全般)にも関心を持っておられるので、言及するというのはありそうですね。
うーん、高岡氏の本は大部分読んでいると思うんですが、私の記憶には無いですね。知らない概念だから読み飛ばしたのでしょうね。
光と闇辺りの初期の著作でありそうかな。
情報、ありがとうございます。リンク先も面白そうです。
投稿: TAKESAN | 2008年12月22日 (月) 13:51