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2008年12月15日 (月)

ノート:心理学研究法(7)

第III部 量的調査の方法

○第6章 量的調査による仮説検証(南風原朝和)

§1 量的調査の特徴

▼データ

量的調査の「量的」――基本的に、データの性質をあらわす。

量的データ――知能検査の得点や性格検査における外向性、協調性などの得点のように、数値の大小によって個人の特徴をあらわすデータ。

※どの政党を支持するか、といった本来質的なデータも、集計して数量に(政党支持率など)まとめられるので、「研究法の文脈では」量的データに分類される。統計学では、性別や政党支持などのデータは、質的データと呼ばれる。尺度水準の話。性別や政党支持などのデータは、名義尺度であり、従って質的変数という事です。量的/質的 研究法の文脈ではひっくるめて「量的データ」と分類する、という意味。質的研究法との対比。

変数――個人ごとに特定の値(あるいはカテゴリ)をとるもの。あらかじめどの変数についてデータを収集するかを決めた上で調査に取り掛かる。

量的データは、データの量の多さでは無く、数量によって個人や集団の特徴をあらわすという性質を意味する言葉。場合によっては一人の被験者だけを対象にしてデータを採る。定量的に測れる、と言っても良いかも知れません。

▼研究の目的

主に、あらかじめ設定された仮説を検証する目的で実施。探索的な研究のために実施される場合もある。多くは仮説検証型の研究で用いられるという事。

▼データの分析

通常、2つ以上の(場合によって100を超える)変数について、多くの被験者に関するデータを収集。

主として変数間の関係という観点から分析。例:

  • 「家庭にある本の数が多いほど、その家の子どもの言語能力は高い」という関係をあらわす仮説が成り立つかどうかを調べる。本の数も言語能力も量的データとして数量化されます。本の数はシンプルですが、言語能力については、先行研究などが参照されて、適切な尺度(各種テスト等)が用いられるという事。

統計的方法を用いて分析される。

量的調査を実施して結果をまとめるためには、統計学に関する基礎的な知識が不可欠。絶対必要

§2 量的調査で検証される仮説とその検証

▼相関仮説

今挙げた仮説(「家庭にある本の数」云々)を統計的に捉える→ある集団において、一方の変数の値が大きいほど他方の変数の値も大きいという正の相関関係を表現したもの。※一方の変数の値が大きいほど他方の変数の値は小さいという関係――負の相関関係次回、散布図とか出てきます。

集団における相関関係を仮説としたもの――相関仮説

例:

  • 「現実の自己に関する評価と理想とする自己のあり方とのギャップ(←変数)が大きい人ほど、向上心(←変数)が強い」 現実自己と理想自己とのギャップという変数と向上心という変数についての相関仮説。ギャップも向上心も、各種心理測定尺度を用いて測定したりして数量化。そして、相関関係を数学的に表す(相関係数)。次回出てきます。

▼共変仮説

「現実自己と理想自己のギャップが大きいほど、向上心が強い」(仮説A)――相関仮説→集団を前提。ある一時点における関係(静的な関係)を表現。ある人がギャップと向上心という2つの変数を持つと考えて、集団の傾向を見る。そして、2つの変数に相関関係があるか調べる。

「人」を「時」に替える。

「現実自己と理想自己のギャップが大きいほど、向上心が強い」(仮説B)――共変仮説――一人ひとりの個人に対して適用出来る。時間の経過の中での変数間の個人内の共変関係をあらわす。

共変関係の直接的な検証――同一の個人について、時間をおいて繰り返しデータを収集する必要がある。1回限りの調査では原理的に検証不可能(相関仮説は可能)。時間的な変化を縦断的に見なくてはならないから、一時点を切って検証は出来ない、という事ですね。集団的な関係を見る相関仮説の場合は、横断的に時間を切るから、一回の研究で確かめる事が可能。

▼因果仮説

「現実自己と理想自己のギャップが大きい人ほど、向上心が強い」(仮説A)

「人ほど」→「から」 表現を少し変える。

→「向上心が強いとしたら、それは現実自己と理想自己のギャップが大きいからである」(仮説C)

現実自己と理想自己のギャップの大きさ(原因)→向上心の強い弱いが決まる(結果)――因果関係を意味――因果仮説

因果仮説の直接的に検証するのは極めて困難。かりに仮説Aと仮説Bがデータによって支持されたとしても、それだけでは仮説Cの因果関係が示されたとは言えない(逆向きの因果関係でも説明出来るから)。因果関係をどう証明するかは、科学の根本の問題なのだと思います。科学哲学にも絡んでくるのでしょう。疫学の方法も参考になるでしょう。

仮説Cと正反対の因果仮説(例:向上心が強い時に、それが原因となって理想自己を押し上げる)のような、主張したい因果関係以外の説明や解釈が成り立つ可能性を論理的に、あるいは何らかのデータに基づいて弱められれば、その程度に応じて、主張したい因果関係が支持される事になる。逆向きの因果関係を否定して、そもそも検証したい因果関係を支持していく、という論理ですね。

相関仮説や共変仮説の検証――因果関係が正しいための必要条件のチェックという意味がある※因果仮説が正しくても、データの妥当性が低いなどで相関関係や共変関係が確認出来ない場合もあり、厳密な意味での必要条件のチェックにはならない。妥当性や信頼性については、後で出てきます。

次回へ続く。

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