ノート:心理学研究法(3)
第II部 質的調査の方法
○第3章 質的調査の考え方とデータ収集技法(下山晴彦)
§1 質的調査とは何か
▼質的調査の特徴
質的研究法――質的データを収集→分析・解釈による仮説・モデル・理論の生成・構築。
質的調査――質的研究法に基づく調査。
質的データ――数字や数量によって表現された量的データとは異なり、「ことば」の形式によって記述されたデータ。
質的調査の前提――質的研究法の基本的考え方→「人間の行動はその人が生活している日常的コンテクストの中で生み出され、その中で意味を持つ」。
なるべく人が生きている現実に近い自然な状況でデータを収集。数量化するのでは無く、現実に近い形でストーリーとして叙述。→人間の心理を理解する仮説・モデルの発見・生成。
方法
- 面接法
- 観察法
- 面接法や観察法、検査法などを組み合わせたマルチメソッドを利用するフィールドワーク
▼質的調査の理論的背景となっている質的研究法の独自性
量的研究法――設定された仮説を検証するために、統制された条件の下でデータを収集・分析。
質的研究法――自然な状況の中で得られたデータから仮説を生成することを目的。
仮説生成を目的とする質的研究は、量的研究で検証する仮説を生成するための探索的予備段階の研究と考えられがちだが、そうでは無い。
現実の現象を記述したデータの中に読み取れるパターンから新しいアイデアや概念を発見し、それを仮説やモデルとして構成していく事が目的。
研究対象、研究者の経験も含めて、主観性や主観的体験もデータとして重視。
そもそも研究のパラダイムが異なっている。
▼質的研究法および質的調査の目的と特徴
研究方法の比較の表が載っているので、それを箇条書きで引用。
・研究手続きの比較
質的研究法
- 大まかな問題や関心のあるトピックを見分ける。
- 探索的なリサーチ・クエスチョンを発展させる。
- 最初のデータを集め、解釈する。
- 試験的な仮説を発展させる。
- 追加データを集め、解釈する。
- 試験的仮説を洗練する。
- 追加データを集め、解釈する。
- より特定の仮説を発展させる。
- 理論を生成する。
量的研究法
- 参照する心理学理論を選択する。
- 理論を参照して特定の仮説を設定する。
- 特定の手続き、方法、尺度を計画する。
- データを集める。
- データを分析し、解析する。
- 仮説が支持されるか棄却されるか決定する。
・方法論的比較
質的研究法
- 人間科学
- 現象学・社会構成主義
- 社会的に構成され、文脈に依存した多数の真実
- フッサール、ドイッチャー、ウェーバー、ディルタイ
- 帰納的
- 理論生成
- 仮説生成
- 理解
- 記述化・叙述化
- 意味の追求
- 発見志向
- 関与的・・相互作用的研究者
- 綿密な面接、参与観察、尺度としての研究
- 当事者
- 確実性、転移可能性、依存性、確認可能性
- 流動的で発展的な方法と手続き
量的研究法
- 自然科学
- 論理実証主義
- 測定可能なひとつの真実
- コント、デュルケム、ミル
- 演繹的
- 引き出された理論
- 仮説検証
- 予測
- 数量化
- 法則と原因の理解
- 結果志向
- 独立した客観的研究者
- 実験デザイン、標準化された尺度
- 第三者
- 内的妥当性、外的妥当性、信頼性、客観性
- 予め決められ、その通り実行される方法と手続き
質的研究法の目的――研究の対象となっている人々自身の視点から現実を理解しようとする。人々が体験している事を、その人自身が体験しているままに理解しようとする。
質的研究法の方法論的特徴
- 状況や人々を、変数に還元せずに全体としてみていく。全体性が保たれるように時間的コンテクストや出来事の背景などを重視する。
- 研究者が対象者に与える影響に自覚的である。研究の対象となる人々や出来事の状況に、研究者自身が参加してデータを収集する。そのため、研究者は、自らの関与の影響に対して敏感である事が求められる。
- 現象に開かれた態度を重視する。研究者の理論や先入観を押し付けるのでは無く、どのような対象でも研究する価値があるという態度で好奇心をもって現象を探求する。
次回へ続く。
うーん、正直な所、あまり記述が整理されていないように私は感じました。それと、質的研究法と量的研究法との比較、便宜的な分類なのかもですが、お互いに全く違うものという訳でも無いでしょうから、写しながら軽く首をひねったのでした。方法論的特徴という部分も、どんな方法においても自覚すべき事柄が書いてあるように見えますし。
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コメント
いわゆるマーケティング・リサーチの手法に似ている、と云うか、手法レベルでは同質ですね。
当たり前のような、でも個人的にはその当たり前さ加減が新鮮だったり。
投稿: pooh | 2008年12月 2日 (火) 07:57
poohさん、今日は。
そうですね。目的の方向性も似ているというのもありますし、社会科学的な方法がフィードバックされたり、また相互作用を及ぼしたりするのでしょうね。
それで、各分野でよく用いられる手法などがあったりして興味深いです。だから、色々な領域に目を向けるのも大切ですね。
マーケティング関係の参考書を読むと、データを視覚的に捉える所について結構な紙面が割かれていたりして参考になります。これは、プレゼンテーションという部分が重要だからなのかな、と思っています。
投稿: TAKESAN | 2008年12月 2日 (火) 12:14
TAKESANさん こんにちは。
「ノート:心理学研究法」シリーズはとても勉強になります。どうもありがとうございます。私は心理学については無知なので、関連事項を調べながら読んでいます。そのため、まともなコメントが書けないことをお許しください。
しかし、毎回楽しみにしている読者がいることをお知らせしたくコメントさせていただきました。
これからも、役に立つエントリをあげてください。
投稿: やす | 2008年12月 3日 (水) 06:15
やすさん、今日は。
そう言って頂けると、大変ありがたいです。
このシリーズの狙いとしては、もちろん、自分の復習ノートという役割もありますが、それだけで無く、心理学の全体的な体系を紹介する、というのもあります。
他分野の専門家にとっても、心理学が非常に幅広い研究領域を持ち、方法的にも様々なものがある、というのは、それほど具体的には知られていないと思いますし、また、興味自体がほとんど無い人にとっては、「心理学」と言えば精神分析やユングが典型的に浮んだりするかも知れないので、そういう所への誤解を正して案内する、というのも考えました。
それにはやっぱり、よく出来た教科書をまとめるのが一番だと思いますので、こういうやり方にした次第です。
投稿: TAKESAN | 2008年12月 3日 (水) 12:17