森氏の専門分野について
昨日も書きましたが、改めてエントリーを。
森昭雄氏に関して、これまで、森氏は脳神経科学者だと本に書いてあり、メディアでも紹介される事があるが、実はそうでは無い、という批判がなされてきました。
しかし現在、日本大学のサイトの教員情報に、専門分野が「脳神経科学」と明記されています⇒日本大学文理学部 人文科学研究所
いつ頃書かれたかは定かではありません。私は日大のサイトを、一年に数回はチェックしているはずなので、それほど以前では無いとは思うのですが、いつの間にか追加されていて、驚きました。
さて、今までは、森氏は脳神経科学者では無い、日大のサイトを参照の事、と言ってきた訳ですが、これからは、単純にそう言うだけでは不充分であり、情報としても不正確なものである、と考えられます。
教えて頂いたところ、専門分野を大学のサイトで謳う事等は自己申告で、関連の研究者の弟子筋であったりすれば、特に問題も無く名乗れるという事だそうです。従って、これからは、森氏は脳神経科学者では無い、と言うのではなくて、森氏は脳神経科学専門と言っているが、実は業績的には……と説明するのが正確であると思います。実際、公式の場でそれが専門であると謳っている所を鑑みても、「脳神経科学者では無い」と端的に言って批判するのは妥当では無くなった、と考えて良いでしょう。公的な資格のような、明確に判断出来るものでも無いですしね。
いくらおかしな事を言っているとしても、批判は、正確な情報に基づいて行われなければならないので、ここら辺は押さえておくべきだと考えます。
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コメント
おはようございます。
徹底的な検討はcomplex_catさんにおまかせするとして、私は以前「ゲーム脳」が話題になった時からのつながりということで、PubMedを見てみました。"Mori A" だけですと別の方もひっかかってきますので、所属が日大と確認できたものと、関係の深いテーマのものをひろってみました。「脳神経科学」というカテゴリがどんなもので、いつ出てきたか、といい出すとそれは科学史の問題で微妙な部分も出てくるかもしれませんが、今の目でみればこれらの論文は「脳神経科学」と呼ぶことに何もおかしいところはないと思います。
Mori A. Cortico-cortical connections from somatosensory areas to the motor area of the cortex following peripheral nerve lesion in the cat. Neuroreport. 1997; 8(17): 3723-3726.
Mori A, Yamaguchi Y, Kikuta R, Furukawa T, Sumino R. Low-threshold motor effects produced by stimulation of the facial area of the fifth somatosensory cortex in the cat. Brain Res. 1993; 602(1): 143-147.
Mori A, Waters RS, Asanuma H. Physiological properties and patterns of projection in the cortico-cortical connections from the second somatosensory cortex to the motor cortex, area 4 gamma, in the cat. Brain Res. 1989; 504(2): 206-210.
Mori A, Babb RS, Waters RS, Asanuma H. Motor effects produced by stimulation of secondary somatosensory (SII) cortex in the monkey. Exp Brain Res. 1985; 58(3): 440-442.
Mori A, Waters RS, Asanuma H. Low threshold motor effects produced by stimulation of area preinsularis (2 pr.i) of the secondary sensory cortex in the cat; input-output relationship. Exp Brain Res. 1983; 51(1): 108-116.
Waters RS, Favorov O, Mori A, Asanuma H. Pattern of projection and physiological properties of cortico-cortical connections from the posterior bank of the ansate sulcus to the motor cortex, area 4 gamma, in the cat. Exp Brain Res. 1982; 48(3): 335-344.
Asanuma H, Babb RS, Mori A, Waters RS. Input-output relationships in cat's motor cortex after pyramidal section. J Neurophysiol. 1981; 46(3): 694-703.
投稿: ちがやまる | 2008年11月11日 (火) 08:19
また来ました。なんか森氏の専門性について口をはさんだことがあるような気がしていたので、捜しだしてきました。
『ゲーム脳の恐怖』を読む(8)(2008年3月11日 (火))のエントリでお邪魔して黒猫亭さんのあとにぶら下がるみたいにして書いていたみたいですね。
vvv以下ちがやまるの書き込みvvv
TAKESANさんがくわしく書いてくださったおかげで、本を読まなくても
「テレビゲームをやり込む習慣を持つ人は、そうでない人に比べてプレイ時の脳波の特徴が安静時のそれに似ている」
ということすら言えてないらしい、ということがわかるかと思います。
「森氏は科学的研究の手続に関しては完全な素人」
"Brain Research"という立派な雑誌に論文を出したこともあったようですが、脳のある部位にマーカを注入してそこへ足をのばしてきている神経に取り込ませ、その神経がどこにあるかを記述するという仕事をしていたようです。一例でどうなっていたかを示せば(一応)万人(万猫)の話をしたことになる、という領域だからそれで済んでいたわけです。それでは済まない領域に出てみたら、そこではシロウト以下だった、ということでしょう。
^^^^以前の書き込みここまで^^^^
投稿: ちがやまる | 2008年11月11日 (火) 11:23
上のBrain Researchの内容は脳に刺した電極で刺激して、1993年のは筋収縮の部位を見る、1989年のは別の部位の電極で(逆行性に伝わった)神経細胞の興奮を見る、という中味でした。マーカの注入は別の雑誌だったかもしれません。
(以前私が書いておいたことで申し訳ありませんでしたが、どんな仕事をしていたかを紹介する場合に注意をお願いいたします。)
投稿: ちがやまる | 2008年11月11日 (火) 13:11
ちがやまるさん、今日は。
情報、ありがとうございます。
森氏のプロフィールのページも貼っておきます⇒http://kenkyu-web.cin.nihon-u.ac.jp/Profiles/CA/0003366/books_or_papar1.html
はずしてるかも知れませんが。
より基礎的な生理学的のレベルでの研究がほとんどのようですね。で、それと同じような観点から、ゲームを行っている人の脳活動云々という、心理学や社会心理学、あるいは文化論をも含む学際的領域に関しても説明しようとした、という所が問題だったのではないかと感じます。
ゲーム脳本にある、心理学的論理についての無知さ加減が、それを示す証左であると思います。
何と言うか、悪しき還元主義みたいな。こういうのがあるから、科学は単純な要素還元主義だと誤解される…。現象の層(相?)を見なくてはならないのに。菜切包丁で魚を捌こうとしているようなちぐはぐさ。
それをその場しのぎに正当化するための論理が、「ゲームには薬物と同等の悪影響がある」、というものなのでしょう。そうすると、メカニズムの論理構造を単純化出来るから、アナロジカルに説明も可能。
…おっと、閑話休題。
やはり、脳神経科学が専門では無い、という言い方は、止めた方が良さそうですね。ゲーム脳説の論理の破綻と不充分さを指摘すれば良い話なので、今後は、そうしていこうと考えています。
投稿: TAKESAN | 2008年11月11日 (火) 13:29
▼▼▼引用▼▼▼
(以前私が書いておいたことで申し訳ありませんでしたが、どんな仕事をしていたかを紹介する場合に注意をお願いいたします。)
▲▲引用終了▲▲
了解しました。
投稿: TAKESAN | 2008年11月11日 (火) 13:32