誤解に基づいた批判。科学のツール
要素還元主義的である科学は、要素が複雑に絡み合った現象を解きほぐす事は出来ないし、方法も持ち合わせていない。それどころか、考えた事すら無いだろっ。だからホリスティックな見方が大事なんだっ、的な思いを持っている人に、次の文章を捧げましょう。
ところが、科学技術の力をもってしても,どこから手をつけていいのかわからないような難問も少なくありませんでした.能力の高い社員を採用するためには入社試験の科目として何を選んだらいいでしょうか.そもそも能力とは何でしょうか.色,形,味などに対する好き嫌いは何によって決まるのでしょうか.デパートの商品はどのように分類して配列するのが顧客のためでしょうか.そのほか,この手の難問は枚挙にいとまがありません.
これらの難問の共通点は,たくさんの要素が複雑にからみ合っている点です.たとえば,能力について考えてみてください.知力,体力,気力が能力に大きな影響を与えそうですが,それと,合理的な思考力,発表・説得力,調整力,忍耐力などはどうからみあっているのでしょうか.あまりたくさんの要素が複雑にからみ合っているので,科学のメスをどこから入れていいかわからないではありませんか.このため,このような難問に対してはさしもの科学も無力と諦め,古来の習慣に従うか,経験と勘を頼りに若干の改善を試みるくらいがせいいっぱいの努力であったのが実情でしょう.ところが,近年になってこの種の難問に挑戦する科学的な手法が急速に開発されはじめました.その理由の第1は,巨大なシステムとしてとらえた人間社会の効率化,最適化を追求するに当たって,ぜひともこの種の難問を解決しなければならないというニーズが発生したからです.そして第2の理由は,この種の難問を解くために必要なツール――統計学とコンピュータ――が準備されたからです.統計とコンピュータの使用を前提として,多くの要因が複雑にからみあった現象を解明し,本質的な骨組みを描きだす手法の群,それを多変量解析法といいます。そして,多変量解析法はひょっとすると,セメントや鉄を抽出したり石油を医療や食料に変えてしまう技術よりも,もっとすごい科学技術なのかもしれません. 大村平 『多変量解析のはなし』 まえがきより
この本の初版が、1985年。上記のまえがきには、昭和59年12月とあります。
つまり、科学は、様々な要因が複雑に絡み合った現象というものを対象化し、解明する方法を開発・発展させてきた訳です。とっくに。
たとえばこの本⇒多変量解析論
出版は1967年、40年も前です。
何が言いたいか。詰まる所、「自分が考えた程度の事は、誰か思いついた人がいるだろう」、という事です。現象が複雑で、とても解明出来そうも無い、と思ったら、ではそれを追究した人や分野、方法は無いのだろうか、と考えるのが筋なのです。
多変量解析、もっと一般的には統計解析の方法というのは、今や科学の方法に欠かせないツールになっていると思います。文化・社会現象をも数量化して解析している訳ですね。だから、そういう現状は把握しておくべきでしょう。そうで無いと、「中の人が常識として弁えている」事に関して、あたかも新しく気付いた事であるかのように指摘する、という恥ずかしい言動をしてしまいかねないのです。
言った本人が恥を掻くだけならいいんですけどね。そういうのを流布させるのは、各方面に多大な迷惑を掛けてしまうのですよ。誤解させてしまう。
科学の方法を批判したいなら、まず科学のツールについて見てみるのが順序というものです。
という訳で、科学や技術に関する方法について知りたい人は、大村平さんの本を読みましょう。さりげなく普及活動です。
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統計のはなし―基礎・応用・娯楽 (Best selected business books) 著者:大村 平 |
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確率のはなし―基礎・応用・娯楽 (Best selected business books) 著者:大村 平 |
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多変量解析のはなし―複雑さから本質を探る (Best selected Business Books) 著者:大村 平 |
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統計解析のはなし―データに語らせるテクニック (Best selected Business Books) 著者:大村 平 |
大村さんの本が、もっともっと普及して欲しいですね。いや、実はものすごいロングセラーな訳ですが(今手許にある『確率のはなし 改訂版』を見ると、1968年1刷、1999年45刷)、それでも、もっと読まれて欲しい。
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