こきゅう
問題。
「どの筋肉を使って、横隔膜を上下させるか」密息と原腸 (内田樹の研究室)
この文章には、少し変な所があります。それはどこでしょうか?
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現代人は「目に見えないもの」は「存在しない」という信憑に冒されているので、深層筋の操作のような外形的には見えない身体運用には関心を示さない。
いやいや。そんな大袈裟でややこしい話では無くて。単に身体運動のメカニズムの知識(解剖学やバイオメカニクス)が不足してるだけです。
世の中には、水に話しかけると結晶の形が変わる、とか言って、「言葉の見えない力」が存在する、と主張する人もいるんですが。見えないものを適当に信じるのも考えものですね。
それよりは、「腹筋が何段に割れる」とか「上腕二頭筋の断面直径が何センチである」とかいう可算的なものによって身体能力の向上を計測することを喜ぶ。
ここで言う「可算的」って、どういう意味なんでしょうね。定量的に計測出来る、って事かな。
後は相変わらず。そんなに難しくも無い事を、よく解らない比喩と援用とアナロジーを用いて飾り、思考の迷宮へといざなってくれています。
武術で「呼吸」と言うと、生理学的な内呼吸・外呼吸より遥かに広い概念なんですよね。気等とも絡み合って、複雑な概念となっている。筋感覚の時間的・空間的な変化についての知覚、というのも恐らく含む。指先から呼吸するように、とか、呼吸を背中から肩を通して……とか、そういう感じで用いられます。それで、「呼吸力」という概念も出てくる。武術に役立つ身体運動という意味合いと結合させた訳ですね。
合気道と絡めて呼吸について論ずるなら、これくらいの事は書いてもらわないとね…。
三砂氏は高岡氏と交流しているはずだから、対談とかすれば面白いかもね。色んな意味で。
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コメント
こんばんは。
横隔膜自体が筋肉ですから、あきらかにおかしな文章ですね。
投稿: corvo | 2008年11月14日 (金) 01:49
corvoさん、今晩は。
おお、さすが……って、あの問いで、corvoさんにさすがなんて言うのは、逆に激しく失礼な話ですよね(笑)
あんな文を書くなんて、単なる勘違いなのかなあ。でも、勘違いとは言えないか。ただ知らないだけ、という事かな。他に、整合的に好意的に解釈しようも無いですしね。
投稿: TAKESAN | 2008年11月14日 (金) 02:16
その内に、大腰筋の断面をMRIでチェックするのが比較的一般的になったりしたら、
「大腰筋の断面直径が何センチである」とかいう可算的なものによって身体能力の向上を計測することを喜ぶ。
とでもなるんですかね? いずれにしても、人間は筋肉によって運動するし、それは非侵襲的に視覚化され得るものです。
なんて言うか、素朴過ぎてちょっと腹が立ってきた。いや、素朴なだけなら別にいいんですけど、素朴なのに、当該対象について的外れな事言ったりしちゃいかんでしょう。
論理的に考えるのがそこそこ得意なはずの方が、なんであんな所をぐるぐる回ってるんですかね。
本気で武術や身体運動について「解りたい」と思うのならば、勉強すべき事はいくらでもあるし、専門分野も発展している訳ですよ。
投稿: TAKESAN | 2008年11月14日 (金) 11:47
>TAKESANさん
>>本気で武術や身体運動について「解りたい」と思うのならば、勉強すべき事はいくらでもあるし、専門分野も発展している訳ですよ
いや、内田氏という人はそれでは嫌なんでしょう。
今ある武術や生理学や生物学的な知識(とその研究の延長線上にある知見)で理解できるような「身体性」をこの人は求めて無いんだと思います。
自分から唐突に「トポロジー的には人間の体はチクワと同じ」とか書くのは、何か生物学や生理学の知識とは違う、信じられないような他分野の知識を導入する事で、凄まじいブレイクスルーが起き人間の身体構造がたちどころに解明されるというような期待を持っているからなのではないかなと。
私はそのうち、間違い無く内田氏は脳科学に対してのペンローズ的な発言をするんじゃないかとは考えてます
「人間の身体構造は全てコホモロジー群で記述出来る」とか言って。
投稿: 内海 | 2008年11月14日 (金) 12:49
内海さん、今日は。
端的に言って、内田氏のような論では、誤解を流布するのだと思います。門外の人間から見ると、何かすごい事を言っているぞ、と思われる。実はそうでも無いのに。
内田氏は、大学で教鞭をとる学者なので、ある程度論理的にものを考え、他の分野とも関わる知識の体系に基づいて物事を分析する事が期待される立場である訳ですよね。
にも拘らず、既存の分野を無視する、いや、時には積極的に批判を行いながら、自身の粗雑な論を展開する。
初めから、既存の科学の体系ではそもそも解明出来ない現象、として武術を定義している、とも見えます。甲野善紀氏との交流も関係しているでしょう。
まさに、科学に対するニューサイエンスの批判、と同じような事なのだと思います。
そういう所を逡巡するのはあまり意味が無いのを、私は実感しています。10年くらい前に通った道ですから。
現象を説明するために科学と相容れない概念を用いるのは、以前から言っているように、構わないと思います。しかし、内田氏の場合、科学の既存の概念を批判、あるいは否定しながら現象を解明しようとしている。これは要するに、科学と同じ土俵に乗っている、とも言えるのだと思います。
武術の論理構造をきちんと解き明かしたいと考える者にとっては、大変迷惑であったりする訳です。
内田氏のエントリーをよく読む方に対しては、少なくとも武道論に関しては、鵜呑みにしないようにして下さい、と申し上げたいです。科学や武術を論ずるにしては、あまりにも認識が素朴で知識不足である、と。
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武術を知っている人用。
ある合気道師範は、甲野氏の言説に触れて、甲野氏が言っているような事は「当たり前だ」と仰ったそうです。
投稿: TAKESAN | 2008年11月14日 (金) 13:46
内田さんの文章を読んでみましたが、なんか短絡的に「現代人は~を失ってしまっている」という論調になってるような気がしました。
存在すら知らなかった深層筋は勿論のこと、「外形的には見えない身体運用」に現代以前の人間の多くがそんなに強い関心を持っていたとも私には思えません。
あ、ひょっとして「現代人は~」って言いがちなのも甲野さんの影響でしょうか?
また、少なくとも昨今のスポーツや運動科学では、単純に筋肉を太くさせるようなトレーニングではなく、もっと精緻な取り組みをしていると思います。
北京五輪前にNHKが放送した『ミラクルボディー』のアサファ・パウエルの回なんか面白かったですよ。↓(その当時は100メートルの金メダル最有力候補はボルトでなくパウエルでした。)
※管理者注
この部分のYouTubeへのリンクをはずしました。ご了承下さい。
投稿: yjdmq | 2008年11月14日 (金) 22:29
yjdmqさん、今晩は。
そうなんですね。素朴な「昔は良かった」論に見えます。昔良かった所を客観的に解き明かすのなら良いのですが、どうも、一般的に昔の人間は優れていた、と粗雑な前提を持っているような書き方ですね。
甲野氏の影響はあると思います。元々同じような考えであったから引き寄せられた、というのもあるかもですが。
昔の人は身体をよく使っていたから、身体意識のあり方が今の人よりも優れていた、という論そのものは、尤もらしいとは思っています。俗に言う、現代人は道具に頼り過ぎて身体能力が落ちている、というやつですね。
ただし、それをどう論証していくか、とか、そこからどんな論理を導くか、というのは別問題だし、慎重にやる必要があるだろうな、と。
▼▼▼引用▼▼▼
また、少なくとも昨今のスポーツや運動科学では、単純に筋肉を太くさせるようなトレーニングではなく、もっと精緻な取り組みをしていると思います。
▲▲引用終了▲▲
内田氏の論に腹が立つのは、内田氏が、現代の科学は素朴な段階に留まっている、と勝手に前提している所なんですよね。
たとえば、東京世界陸上においては、日本のバイオメカニクスのチームが大変優れた仕事をした、と聞いています。そういうのも内田氏は知らないんだろうなあ、と。そもそも、大腰筋の重要性云々というのも、バイオメカニクス等の研究があったからこそ知識として広まっている訳ですし…。
個人的には、深代氏@東大辺りの論考が面白くて、読んだりしました。※ただ深代氏は、運動の効用を強調するあまり、運動しない事の悪影響を過大評価している向きがあるように感じます。そこはちょっと残念です。
▼▼▼引用▼▼▼
北京五輪前にNHKが放送した『ミラクルボディー』のアサファ・パウエルの回なんか面白かったですよ。
▲▲引用終了▲▲
おお…。
実は、昨日大腰筋でググって、なんかの雑誌の人がその番組について語っているのを見て、観たかったなあ、と思っていたのです。
ありがたいです。……が、多分、著作権的にアレな動画ですので、もしかすると、リンク部分だけはずすかもです。ごめんなさい。
(しかし、こういう時のNHKの番組は最高ですねえ)
投稿: TAKESAN | 2008年11月14日 (金) 23:05