« ノート:心理学研究法(1) | トップページ | 白+一 »

2008年11月29日 (土)

ノート:心理学研究法(2)

○第1章 心理学の歴史と研究法の分類(下山晴彦)

§1 心理学における研究法の意味

▼心についての学問

心理学:「psychology」――ギリシア語の「psyche」(心)+「logos」(学問)

哲学――「心についての学問の総称」。心の働き(機能)に関する論理的研究。心理学の思想的起源は、哲学の歴史の中に位置づけられる。哲学の説明は、ちょっと狭く捉えられている気がします。文脈から、哲学の内、心について調べる領域についての話、と見るのが良いでしょうか。

▼心理学の起源

現代心理学の始まり――ヴント(Wilhelm Max Wundt)による心理学実験室創設(1879年)。

研究法――科学的方法の採用。その採用による、文学や哲学とは異なる(心についての)学問としての独自性の確保。ここで「科学的方法」とは、自然科学的方法と読んだ方が理解しやすいと思います。

§2 心理学研究法の文化発展の歴史

1860年、ドイツの物理学者、フェヒナー(Gustav Theodor Fechner)が、精神物理学(psychophysics)を提唱。「心理物理学」とも。ここら辺参照⇒精神物理学 (Psychophysics)

精神物理学――精神界と物質界の数量的対応を実験によって解明することを目指した。→心理学の成立に大きな影響。

心理学は,物理学が科学的実験によって物理的法則を見出そうとしたように,実験的手法を用いて心の法則の定立をめざして成立したといえる。

  1. 生理的反応や客観的行動を研究する方法が主流を形成。→ワトソン(John Broadus Watson)による行動主義(behaviorism)の心理学がこの系譜。
  2. 心理学が自然科学の原理を満たすのが困難である事が解ってきた。心理学研究の対象である「心」が、物理学の研究対象である「物」とは異なり、客観的に観察出来る対象になり得ない。→厳密に自然科学であろうとすればするほど、客観的に観察出来る行動や知覚的、生理的反応のみを研究対象とする方向に進まざるを得なくなった。
  3. 認知機能を中心に心のモデルを想定する研究が提案、発展→認知心理学

▼調査法

自然科学:普遍的法則の定立を目指す。

「心」:それぞれの個性(個人差)がある。法則定立的方法ではそれを無視してしまうという見解。→個性や個人差の研究の必要性。→知能や性格といった個人の能力や特長を測定するための心理検査の開発や相関法の発展。→計量心理学や心理統計学の発展――テストを用いて多数のデータを採って数量化し、統計的にデータを解析して一般的傾向を見出す量的調査法の発展。ここら辺の記述、なんか変な気も。計量心理学なんかでは、数学がバンバン出てきますね。知能検査は元々、学習の遅れた子どもを判別して適切な処置が出来るように考えられたものですね(ビネーによる)。

現在は、実験法の他に調査法が広く用いられる。

量的調査法:数量化や統計的方法の使用――自然科学の原理である客観性や論理性の維持が重視。

質的調査法:数量化されたデータでは人の心の現実を把握出来ないといった見解→対象の状況をストーリとして記述質的データを収集、分析する方法として開発。

質的調査・量的調査という考えは、社会調査法などでも見られますね。

▼臨床法

臨床心理学やカウンセリング心理学などの、実践に関わる心理学の位置づけ。

病態心理学や変態心理と呼ばれた異常心理への治療的介入を目的とした臨床法が、自然科学をモデルとして成立した伝統的な心理学の歴史とは別に開発。

  • フロイト(Sigmund Freud)による精神分析
  • クライエント中心療法や家族療法。

フロイトの考えには、批判も色々あるようです。しかし、心の枠組みを考える上で、無意識の概念に光を当てた(無意識の「発見」では無いですね)という功績の大きさは評価されてしかるべき、という見方もあると思います。ここら辺、立場は様々でしょう。痛罵するのも見ますし、無意識概念そのものを否定するのもあるようですね。

自然科学の原理とは異質な方法が含まれている。

  • 目的:異常心理を改善するために実践的に有効な方法の開発。
  • 自然科学で重視される論理的に正しい普遍的法則の定立は目的とはならない。
  • 自然科学の原理である客観性や論理性を厳密に保つ事は不可能――実践に関わる心理学においては、自然科学の原理に従う事が元来不可能な側面が強い。
  • 最近では、認知行動療法など、臨床法と科学的研究の協力関係を発展させる動きも見られる。

悲しい事に、テレビなどを見ると、心理学者や精神医学系の専門家と「称される」人が、犯罪を犯した人物についての断片的情報に基づいて、軽率極まりない分析をしているのを見かけます。臨床的方法の意味を考えると、それは「出来ない」はずなのですが(結局、自身の診断等の経験を一般化して、個人の行動の説明に用いている)。

▼心理学の歴史と研究法

心理学研究法――実験法・調査法・臨床法などの領域に分化。それぞれの領域でも下位領域として様々な研究技法が提案。←主に欧米においてなされた分化発展の歴史。日本では独特の展開をしている側面がある。

§3 研究法による心理学の分類

▼心理学研究法の多様性

心理学の成立に、科学的方法の採用が重要な意味を持っていた。→自然科学とは異なる多様な方法へ向けて多面的に展開。→現在――多様な原理や方法が並立する状況。→心理学を学ぶ者にとっては、心理学の全体像が見えないまま多様な方法を学ばなくてはならない錯綜した事態。本当に、勉強し始めは、途方に暮れました。何がどうなっているのか全く解らなかった。下位分類を示されても、それがどういう意味なのかが理解出来なかったですしね。ここら辺の混乱が、心理学の「科学性」について懐疑的に見られるゆえんでもあるのでしょうね。実際、他分野から見ると、あまりにも整然さに欠けている、となるのかも知れません。

▼多様性を整理する基準としての方法

心理学の全体像が解りにくくなっている原因:分類基準の混乱。

心理学の下位分類:研究方法を基準、研究内容を基準。→2つの基準の混在が、混乱の原因になっている。

研究内容による分類――対象範囲の変化で名称が異なるといった混乱。例:児童心理学・青年心理学・老人心理学・発達心理学・生涯発達心理学 (いずれも発達をテーマとする領域)

 そこで,心理学の全体像を明らかにし,心理学を学ぶ道筋を整理するためには,まず心理学の分類基準を確定することが必要となる。この点に関しては,心理学にとっては「研究の方法」が重要な意味をもっており,しかも「研究内容」による分類が不安定であることなどを考慮するならば,研究方法を基準として分類することが望ましいと考えられる。

§4 心理学研究法の分類

▼データの収集―処理の過程による段階的分類

「心理学の研究方法の段階的分類」

研究データを扱うプロセスを3段階に区切り、データの扱い方によって、下位分類を構成。→各段階の下位分類の組み合わせで研究方法を分類。

  1. データ収集の場の型――下位分類:実験・調査・実践
  2. データ収集の方法――下位分類:観察・検査・面接
  3. データ処理の方法――下位分類:質的/量的・記述/分析 のマトリックス

▼データ収集の場の型:「実験」「調査」「実践」

第1段階

実験――条件を統制し、要因間の因果関係の把握が目指される。感覚や知覚などの分野で用いられる方法。条件を統制するからこそ把握出来る事がある、という。

調査――現実生活の側面について調べるため、条件を統制せず、「その特徴を適切に抽出するようにデータ収集の場を設定」。

実践――実験・観察は、研究対象に影響を与える現実生活への介入を極力避けるように場が設定。実践は、現実生活に積極的に関与するようにデータ収集の場を設定。心理学史的には、現実に関与する研究は「臨床」と呼ばれていた→教育領域や発達領域などに広がりつつある。本書では、現実に積極的に関与してデータを収集する場の型の総称として「実践」を用いる。人類学方面ではフィールドワークとかでしょうか。直接介入する研究。

これらの領域は、それぞれ重なり合う部分がある。メタ分析などは、3者を組み合わせた統合的な研究。

↑↓ここら辺の分類、次章以降を見ると、きちんと踏襲されていないような気もします。多少混乱するかも。

▼データ収集と処理の方法

第2段階

データ収集の方法による分類。

観察――行動を見る事でデータを得る。

検査――課題の遂行結果をデータとする。

面接――会話を通してデータを得る。

これらも総合的に用いられる。面接をしながら被験者を観察するなど。

第3段階

データ処理の方法による分類。

データの

  • 処理の仕方によって
    • 質的(定性的)
    • 量的(定量的)
  • 目的によって
    • 記述
    • 分析

に分類され、マトリックスを構成し、4分類される。つまり、

  • 質的記述
  • 質的分析
  • 量的記述
  • 量的分析

▼仮説生成型研究と仮説検証型研究

仮説生成型研究――仮説の生成を目的。質的データに基づく研究が相当する事が多い。

仮説検証型研究――仮説の検証を目的。量的データに基づく研究が相当する事が多い。

従来、仮説生成型の研究は、検証型研究の準備のための予備研究として位置付けられる事が多かったが、近年は、独自の意義が強調されるようになってきている。

§5 研究法の分類と本書の構成

ここで示された研究法の全体像が本書の基本構造。

Book 心理学研究法 (放送大学教材)

販売元:放送大学教育振興会
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« ノート:心理学研究法(1) | トップページ | 白+一 »

ノート:心理学研究法」カテゴリの記事

「科学論」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/13103/25736527

この記事へのトラックバック一覧です: ノート:心理学研究法(2):

« ノート:心理学研究法(1) | トップページ | 白+一 »