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2008年2月27日 (水)

『ゲーム脳の恐怖』を読む(2)

1章 ゲーム中の驚くべき脳波の変化

社会が注目するテレビゲームの影響

冒頭、校内暴力の急増がマスメディアによって報道されている事が紹介され、

 「キレる」とか「むかつく」という言葉に象徴されるように、子どもの自己抑制力やコミュニケーション能力の欠如が、改めて浮き彫りになっています。ちょっと注意をされても言葉で反応するのではなく、カッとなっていきなり暴力を振るってしまうというような、状況を冷静に判断できない行動は大きな問題です。(P18)

と、いわゆる「キレる」、「むかつく」という状態への懸念が示されています。そして、その原因として、「親の価値観や躾」(P18)が言われている事等を指摘し、また、テレビゲームとの関係について採り上げられるようになった事も指摘します。いわく、

 その一方で、テレビゲームとの関係も取り上げられるようになっています。虚構の世界に没入することで、現実との区別がつかなくなっているのではないか、あるいは、ゲームの暴力行為に加わることで、攻撃的な性格が形成されていくのではないかなどの指摘がされています。(P19)

そして、その直後に、あるゲームを30時間(「約二日」)でクリアした大学生のエピソードを出しています。その大学生の感想として、疲労感を覚えた事、画像が鮮明である事、恐怖を感じた事、が紹介されています。ちなみに、このゲームの説明は、「最近発売された、ホラー映画のような恐怖を感じさせるテレビゲームで、敵にみつからないようにいろいろな部屋に進入して武器を獲得し、相手を殺しながら勝ち進んでいくというものがあります。」(P19) というものです。タイトルは書かれていないので、断定は出来ませんが、説明文から推測するに、『バイオハザード』を代表とする、ホラー系のアクションアドベンチャー(サバイバルホラー。参照:サバイバルホラー - Wikipedia)を示しているものと思われます。

ここから森氏は、そのようなゲームが、「暗い夜道などを歩くと凶悪な殺人者が出てくるのではないかと錯覚させてしまいそうな要素を十分もっていると思われます。虚構と現実の世界が重なってしまう例でしょう」(P19)と主張し、もしテレビゲームの長期使用が「キレる」事の要因であれば社会的に問題である事、そして、ゲームが問題であるという意見のほとんどについて、「科学的に裏付けのない憶測にすぎません」(P19)、と、当時のゲーム研究の評価を行っています。(ゲームの好影響を主張している人がいる事も紹介)

さて、上に挙げた、森氏による大学生の事例、二日で30時間プレイしたという、極端な例であり、疲労感を覚えるのは、当然の事であると考えられます。十数時間一つのものに取り組めば、疲労するのは当たり前ですし、更に、恐怖感を覚えるというのは、そもそも、当該ソフトがサバイバルホラーである事から、これも当然であると言えるでしょう。ゲームに明るく無い方のために、映画でたとえると、ホラー映画を5本連続で観た人に感想を聞いて、疲れた、恐怖を覚えた、と言われたのを元にして、「虚構と現実の世界が重なってしまう例」、と主張しているようなものな訳です。

ゲーム中の脳波は痴呆と同じ

まず森氏は、

 私たちは、テレビゲームをしている人の脳波が変化することを発見しました。その変化は劇的で、驚くほどはっきりしていて、データをみるとひと目でわかるほどです。(P20)

と言い、自身の経歴を紹介しています。そして、自身の研究によって、痴呆(表現は、著書に従います。文脈によっては、認知症とします)を判定出来る機器および方法を開発した、と主張します。その方法とは、「おでこに相当する前頭前野領域の頭皮上から記録されるα波とβ波の比を求めることで、約八五パーセント判定できる」(P21)というものです。

次に、森氏が、テレビゲームをしている子どもの脳波を調べようと思い至った動機が、書かれています。森氏によると、脳波を計測する機器の製作過程で、「機器の調子をみるため実験的にソフトウェアを開発していた人たち八人の脳波を記録」(P21)した所、全員が、「痴呆者と同じ脳波を示した」(P21)という事があり、そこから、何故そのようなデータが取得されたかを推測します。

 どうしてこのようなデータになったのか考えてみました。ソフトウェア開発者は、視覚情報が強く、前頭前野が働くのは勤務時間内でもほんの一瞬で、ずっと使い続けているわけではありません。開発といっても設計図を描くわけではなく、画面をみてつくっていく仕事です。朝九時に席に座り、夕方五時までずっと画面をみています。ひらめいたり、集中しているのはわずかな時間で、ただ画面をみている時間のほうが圧倒的に長いのです。(P21・22)

森氏はこのように論理を展開し、更に、開発者達が一日に会話をほとんどしない事を挙げ、前頭前野の機能低下が、画面に向かっている時間が長いからではないか、と、推測を進めます。そして、この事をきっかけにし、「視覚を中心としたテレビゲームでは前頭前野の働きがどうなっているのか、たいへん興味をもった」(P22)と、テレビゲーム中の人の脳活動を計測するに至った経緯を紹介しています。

ここからは、実際にテレビゲームを行っている人の脳波についての説明に移ります。テレビゲームを長期間行っている人の脳波が「重い痴呆の人の脳波にたいへん類似」(P22)しており、α波とβ波のレベルが完全に重なり、ついには(更に深刻になれば)β波がほとんど出現しなくなる、と言います。

この節でのポイントは、森氏が開発したと称する機器によって、ソフトウェア開発者の脳波が計測され、それが痴呆者と同様であった、と主張されている所でしょう。まず、森氏の開発した機器および方法がどれほど妥当か(一般的には、認知症は、精神医学的、心理学的診断や身体的な診断を総合的に用いて、診断していくものだろうと思います)、仮に、痴呆者の脳波のパターンに、ある共通性が見られるとしても、論理的には、同様のパターンの脳波が見出された場合に、必ずしもその人が痴呆であるとは言えない、という所は、押さえておくべきでしょう。

次節からは、実際にゲームを行っている人を計測したデータが紹介されます。

次回へ続く

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補足。

ゲームをプレイしている人のデータが紹介され、それを分類するのはもっと先で、本エントリーで採り上げた節では、その一例が紹介されています。

次節からは、というのは、前節で言及されている図が次節に載っている、という事でした。

投稿: TAKESAN | 2008年3月 1日 (土) 00:30

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