必修化
Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <中央教育審議会>「武道」必修化を大筋了承
何故、武道を必修化しなければならんのか、よく解らない。
体育の授業で武道をやって、
「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養う」
という目標が、達成出来るんですかね?
弓道の様に高度に形式的なものはともかく、武道って本質的に、暴力と重なる所がありますからね。人を投げたり、竹の棒で相手を打ちつけたりする訳ですから。そういう所は、よく考えるべきだと思うのですよね。
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ここからは、極めて個人的な意見。
私は、武道の必修化など、する必要は無いと考えます。
より身体能力の基礎的な部分を向上させる体操なりを開発し、それを組み込むべきでしょう。
武道は、相手を攻撃し、また、攻撃から身を守る術、即ち、「技術」です。そういう技術を身に着ける場合、必ず、「心構え」をも鍛えなければなりません。
幼少の頃から、優れた指導者の下で武道をやってきているならともかく、中学の体育の授業でやるなどという、「付け焼刃」なやり方が良い効果を及ぼすか、甚だ疑問です。
上に「心構え」と書きましたが、当然、「指導者の心構え」も、問われる訳です。本質的に暴力である武道を子ども達に教えるのだから、優れた精神性を持った指導者でなければなりません。その様な指導者を、確保出来るのでしょうか。体育の教員に、研修でもするのでしょうか。武道というのは、具体的な技術と、様々な理念との集合です。短期間だけ学んだ人間が、それを正確に理解し、実践出来るのでしょうか。
現に、武道をやっている人間が、
「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養う」
この様な態度を身に着けているのですか? ここで言われる「伝統と文化を尊重」とは、どういう意味でしょう。それは果たして、武道を行う事によって、確実に養われるのでしょうか。
※誤解されると何なので、書いておきます。
別に、武道を体育でやるべきでは無い、といっている訳では無いです。必修化は要らないでしょう、という事。
もしなったらなったで、体育の授業だから、まあ、楽しんでやればいいんじゃない、という考えです。たまに、武道が、暴力性の象徴であるかの様な事を言う人がいますが(私が書いたのは、実体的には暴力だ、という意味)、私は、その考えには、与しません。そこから関心を持てば、歴史なりを学べば良いし。ですけれど、何で、「伝統と文化を尊重」したりする「ために」、やらせなくちゃならないんですか、と思うのです。そういうのは、家庭の教育に任せる範囲の事でしょう。伝統文化に触れさせるのも良いし、新しいものを学ばせるもの良い。だけど、学校でわざわざやる事か? という感じです。
体育の授業でやるのだから、色々な種類の身体運動があるのだ、というのを教えるためにやらせるのなら、それは別に構わないと思いますけれど。実習は選択にして、保健の授業で、歴史なりをやるのが良いですかね。
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コメント
こんにちは。
なんていうか、この「武道」もそうですし、例えば、安倍首相が提案している「ボランティアの義務化(これはボランティア?)」、さらには教育再生会議の言う「授業時間10%増」…と、全てに共通して言えるのは、「それを実施することで期待通りの効果が出るかどうかの確認作業すらせずに実施へ向けて動いている」というのが気になりますね。
勿論、「郷土愛を高める必要があるのかどうか?」という疑問もあるのですが、それ以上に、効果があるのかどうかを一切確認せず「こうなるはずだ」という希望的観測だけで、政策が決まっていくことに凄く疑問を覚えます。
勿論、仮に効果があるとしても、それを指導する教師、さらには、武道であるとすれば剣道場、柔道所、土俵…なんていう施設が必要になるわけですから、それだけ費用も掛かる。費用対効果という意味でも検討が必要になるわけですが、それも不明。
本当、これまでのものと同じで「思い付きを言っているだけ」としか思えないんですよね…。
投稿: たこやき | 2007年9月 5日 (水) 10:49
たこやきさん、お早うございます。
そうなのですね。「これをやれば上手くいくんじゃない?」という、極めて見切り発車的な考え方だな、と。脱線し、事故を起こすかも知れない、という所は考慮していないのかな、という感じです。脱線はしないだろうな、という根拠不明な思い込みがある、という気もします。
実際、指導者を育成しなければならないし、施設の拡充も必要。しかし、果たして、それに見合う効果あるのかどうか。
面白いのは、武道について、あまり知ってそうも無い人が、武道教育を奨励する場合がある事です。武道に関わったら――ドロッドロした精神性を持った人がいたり、組織間で全く不毛な対立があったり、憂さ晴らしに技を乱暴に掛けたりする人がいたり、とか、他国の文化に対して排他的認識を持ったり、とか、色んな事が起こっているのは、知ってるんですけどね。
私自身は、愛国心や郷土愛、「高める」必要は、別に無いと思っています。自身が属した地域なり国なりに、「愛着」さえあれば、良いのではないかと。自虐的で無く、排他的でも無い。そういう認識を涵養していくのが大切だと考えます。
変な事を言いますが、「これは日本が生んだ独自の文化で、とっても優れてるんだよ。凄いと思わない?」なんてのは、いかにも「日本的」で無い、と。あ、もちろん、普及させる事を否定するものでは、全く無いです。結局の所、何かに真剣に打ち込むのは、それが「面白いから」、で、始めた動機なんて、何となく興味があったから、とか、そんなものなのだと思います。それを最初から、「文化的に優れているから」、なんて理由でやらされてもね、と。
投稿: TAKESAN | 2007年9月 5日 (水) 11:22
>施設の拡充も必要
政治的には建設業者がうるおうといった効果が見込まれます。しかも金額というはっきりした数字で。
武道必修が不可避なら剣道ONLYがいいなあ。記号化の度合いが柔道よりも高く、社会性が身につきやすいようなことを高岡英夫が書いてたし。
投稿: グレートパンダー | 2007年9月 5日 (水) 14:45
グレートパンダーさんの仰るような、施設整備による経済効果を狙っているのではないか? などと疑いたくなりましょね。
>面白いのは、武道について、あまり知ってそうも無い人が、武道教育を奨励する場合がある事です
これは、あるだろうな、と思います。
私の実家は、兼業農家(というか、普通の仕事の傍らで所有している田を耕している状態)なのですが、その体験から見て、昨今の食育に纏わる「農業体験」がいかにも胡散臭いと思えます。
あれも、「農業をやることで、命の大切さを学ぶ」とか色々と言っていますけど、農家としてみれば、いかに効率よくやって利益を出す(というか、赤字を出さない、減らす)かの方が重要なんですよね。そういう意味で、別にごくごく普通の仕事と考えていることは同じなのに、変な風に美化されて、「教育に」なんていうと「はぁ…」としか思えない。当然、農家の人は、他の職業の人と比べて命を大切に思っているのか? といわれれば「?」がつきますし。
なんか、武道も農業も、同じような状態じゃないかな? というのをTAKESANさんのコメントを拝読していて想いました。
投稿: たこやき | 2007年9月 5日 (水) 17:21
グレートパンダーさん、今日は。
裏を読むと、そういう見方も出来てしまいますねえ…。
>高岡英夫が書いてたし。
お、高岡氏の本をお読みですか。体育の授業でやらせるとなると、高度に記号化されたものの方が、良いかも知れませんね。弓道とかも。ただ、記号的なものを嫌いな人は、こんなもんやってられるか、となって、反発しそうな気が。元々そういうのに馴染む人はやる、という事にもなりそうですね。
いずれにしても、中学の体育の授業でやるのですから、所詮は付け焼刃ですものね。
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>たこやきさん
確かに、「手段」として農業を学ばせよう、とかの主張も、ありますね。親しんでいる人は、淡々とやっているし、殊更に、重要性を説いたりしないと思うのですよね。むしろ、色々な問題も孕んでいるから、慎重になる人も、いるかも知れません。
伝統を軽んじるべきでは無いというのは、私も考えるのですが、短い期間に触れさせるって、何か違う、と。わざとらしいし。
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そうそう。全く余談ですが。
ずっと前、とある高校の武道館に行く機会があったのですが、柔道着が散乱してました。もう、めちゃくちゃに。
まあ、そういうものです。何をやるか、というのも見るべきだけれど、どんな人が教えるか、という部分も、大変重要です。
合気道で、投げ技を食らって失神した人を、外に放り出してそのままにしといた、なんて話もありますしね。
武道の技は、道具ですから、その使い方を教えるのには、細心の注意を払わないと。
投稿: TAKESAN | 2007年9月 5日 (水) 17:58
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080823-00000060-mai-pol
拙速。
質の高い指導者をどうやって養成する?
どうせやるなら、古流剣術とか槍術とかをやらせてみれば良いのにね。競技の色合いが薄くて記号化の度合が高く、様式的なのをやらせた方がいいんじゃないかな。
まあ、そうすると、指導者が全く足りない訳ですが。
投稿: TAKESAN | 2008年8月23日 (土) 19:18
60億円の予算、ですか…はぁ…。
なんか、ある意味では、予想通りの展開が見えてきましたね。
正直言って、武道をやるなら、剣道で良いんじゃないか、ってきがしますね。
剣道ならば、床で良いわけですから、体育館使えば、わざわざ作る必要ないですし(まぁ、それだけの道着、防具をどうするのか、はありますけど)
あと、柔道、剣道あたりは学校の部活動としてはかなりメジャーなものですから、そういう施設がない学校って、本当にそれをどうでも良いと考えている、と言えると思います。
そうなると、膨大な予算を使って建てても使い道に困るのではないか、という気もします。校庭など、学校の敷地をつぶして、殆ど利用しない建物を建てる。今後、維持費も必要になる。
メリットが示されていない以上、どうも否定的な意見しか出てこないです。
投稿: たこやき | 2008年8月23日 (土) 21:16
たこやきさん、今晩は。
私には、見切り発車的に思えます。
当たり前の事ですが、武道経験者(専門家含む)には、高潔な人間もいれば、どうしようも無いボンクラ人間もいる訳ですね。
なんか、こういうのを拙速に進める人間には、武道をやる人間は平均的に精神性が高い、という素朴な信念があるように思います。
剣道場で無く体育館だと武道文化の正当な場を用意出来ない、的な事を考えている人もいそうです。
深読みすると、前にグレートパンダーさんが仰ったような事もあるのかも知れませんが…。
体育館で木刀使って剣術でもやればいいと思うんですけどね。その場合は、指導者の数自体が少な過ぎて非現実的ですけれど。
投稿: TAKESAN | 2008年8月23日 (土) 22:27
こんばんは。
なんとも情けない話になってきましたね。
武道場整備に50億円ですか。
全国の小中学校で、耐震化工事が必要なのに予算の関係でいつ工事が実施されるのかわからない学校が数割あるのに、
それは放っておいて、武道場建設なんですね。
文部科学省が、子どもの命の大切さをどのへんに位置づけているのかがわかる話です。
教育現場でニュースに気をつけていると、これまでも何度か「武道必修」をもくろんだ動きはあったことがわかります。ところが今回は、可決してしまったんですよね。
しかも「男女共同参画」(胡散臭い表現ですね)なので、女子も必修です。選択できる武道は、基本的に柔道・剣道・相撲の3種です。これまでの案では女子はダンス、男子は武道だったのですが、男女とも武道とダンスの両方が必修になります。
この辺、微妙な政治的力関係がありそうで、突っつくと面白い話が出てきそうなのですが。
個人的には色々と書きたいネタがあるので、いずれ自分とこで書くとして。
1つ注意を促したいことがあるんです。
各地には武道用品専門の武道具店というものがあります。その経営は、私が聴くところではかなり危険なレベルに落ち込んでいて、跡継ぎがいない店も多数、とのこと。
勿論経営難の最大の理由は売り上げの減少です。今回の必修化で経営が持ち直すんじゃないか、との期待がありそうです。
それから、各地の「少年武道大会」に行くと気付くのですが、議員さんたちが格好の事前運動の場所として使ってます。役員に名を連ねてる人もいるかもしれません。
彼らの挨拶の内容を聞いていると、「小学生の頃は剣道をやってました」というものばかり。ああ、根性が続かなかったのね、という感想ですね。そんな人たちに「武道のすばらしさ」とか語られて、必修にされてしまうことの情けなさ。
わが娘が数年後、ふんどし一本で相撲させられたりしないことを願います。
投稿: 憂鬱亭 | 2008年8月24日 (日) 01:02
憂鬱亭さん、今日は。
興味深いお話ですね。
私は専ら、武道を教育に用いる事でいかなる影響(良い悪い共に)を与えるか、という所に関心を持っているのですが、仰るような観点から見るのも、面白いですね。
武道人口が減ると、武道具の需要も減るでしょうから、経営は厳しいのでしょうね。そこに必修化が決定し、男女共に学ぶ、という事になると…。
個人的には、新しいエントリーでも書いたように、型武道をやるのが良いんじゃないかな、と思っています。下手に競技をやると、碌な事にならない、と。
投稿: TAKESAN | 2008年8月24日 (日) 12:20