高岡英夫氏の著作について
夢草の剣さんの、コメントを受けて。
高岡氏の著作は、広範に亘っていますので、武術のどの様な部分に関心を持つか、によって、お勧めの物は、替わってきますね。
初期の著作は、武道・武術を、記号論・言語学や社会心理学、構造主義的手法によって分析した著作が多いですね。比較的読み易いものとしては、『空手・合気・少林寺』シリーズや、『武道を読む』(これは、他の著作の解説書でもあります)辺りでしょうか。
又、『鍛錬シリーズ』では、トレーニングの方法、取り組み方等が詳細に論じられており、「武術に筋力トレーニングは必要か」、等の問いを持つ人には、大変参考になると思います。余り、読み易くはありませんが。
1990年辺りからは、高岡氏独自の、身体意識論について論じられた書が、多く出版されてきます。武術では、内観によって、「気の流れ」を認知するのは一般的なので、すんなり読めるかも知れません。『ハラを失くした日本人』などが、良いでしょうか。『意識のかたち』は、少々難解です。
その後は、現在広まっている、ゆる体操関連の著作が、多く刊行されています。ここら辺になると、そもそも一般向けに書かれた物も多いので、大変読み易いと思います。お勧めは、『からだには希望がある』、『からだにはココロがある』でしょうか。
武術を身体運動として客観的に捉えるという視点からは、『究極の身体』が、お勧めです。
又、身体意識論について、本格的に論じられている、いわば教科書的著作として、『センター・体軸・正中線』、『丹田・肚・スタマック』があります。内容そのものは、ちょっと難しいですが、文体は、読み易いと思います。
最後に、やはり、合気系武術に関心がある人にとって必読なのが、『合気・奇跡の解読』でしょう。特に、前半がお勧めです。合気揚げを、実証科学的手法によって分析したのは、おそらく殆ど無いと思われます。又、イチロー選手と宮本武蔵の身体運動の共通性を論じた、『武蔵とイチロー』は、読み易く、とても面白い本です。
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後、これは、事ある毎に、書いているのですが。
高岡氏の論述には、いわゆるトンデモ系と言うか、ニューエイジ系のものがあったり、気を肯定的に(心理学等の概念では無く)捉えていたり、といったものもあります(その内、トンデモ発言、トンデモ記述は、纏めると思います)。これは、日本や中国武術の思想には、馴染み易いものかも知れませんけれど、私個人としては、全く賛同していません。一応ここは、お断りしておきたいと思います。ニセ科学を普段批判していながら高岡氏を肯定的に扱う所に、違和感を覚える方もおられると思うので、念押し、という事で。
又、高岡氏の著作は、その類稀なる洞察力による分析は、舌を巻く事も多いのですが、実証データを示しているものが余り無い、最近の著作には参考文献が挙げられていない(自著以外で)ので、どこまでが独自の考えで、どこが先行研究を基にしているかが解りにくい、といった所もありますので、そこは、押さえておいた方が、良いかと思います。
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他に、これがお勧めだ、等のご意見を頂ければ、ありがたいです。私は、DSを前面に出した著作(1995~2000年辺りかな)は、余りお勧めしませんが。
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空手・合気・少林寺―その徹底比較技術論 著者:高岡 英夫 |
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空手・合気・少林寺 (続) 著者:高岡 英夫 |
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武道を読む 著者:高岡 英夫 |
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ハラをなくした日本人 著者:高岡 英夫 |
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意識のかたち―現代に甦る天才の秘密 著者:高岡 英夫 |
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からだには希望がある 著者:高岡 英夫 |
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からだにはココロがある―丹田、センター、身体意識の謎を解く 著者:高岡 英夫 |
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究極の身体 著者:高岡 英夫 |
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センター・体軸・正中線―自分の中の天才を呼びさます 著者:高岡 英夫 |
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丹田・肚・スタマック―自分の中の天才を呼びさます 著者:高岡 英夫 |
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合気・奇跡の解読 著者:高岡 英夫 |
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武蔵とイチロー 著者:高岡 英夫 |
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コメント
TAKESANさん、分かりやすくまとめて下さってありがとうございます。
御紹介いただいた中では、入門編として、『からだには希望がある』と『からだにはココロがある』、そして武術関連として『究極の身体』と『合気・奇跡の解読』を読んでみたいなと思いました。
アマゾンのブックレビューでも色々書かれてますけど、やはり読んでみる価値はありそうですね。
TKESANさん、重ねて御教示ありがとうございました。<(_ _)>
投稿: 夢草の剣 | 2007年2月20日 (火) 00:45
夢草の剣さん、今晩は。
いえいえ、滅茶苦茶長文になったので(笑) 却って解りにくくなったかもです。
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特に、『合気・奇跡の解読』は、合気系武術に興味のある人間にとっては、目から鱗が落ちまくり、だと思います。
投稿: TAKESAN | 2007年2月20日 (火) 00:56
amazonの、『合気・奇跡の解読』の、アキンドさんのレビューは、とても適切ですね。
投稿: TAKESAN | 2007年2月20日 (火) 00:58