文化の評価は慎重に
2006年10月2日追記:もう一度、トラックバックを送ってみます。追記:失敗です。
とある古流武術(千速 一樂さんは、古流武道と表現)の修行者のブログを見つけました⇒千速 一樂さんの、一 樂 庵 - 楽天広場ブログ(Blog)
色々、不可解な点や疑問点がありましたので、いくつかエントリーを挙げて、指摘させて頂きます(はっきり申し上げて、批判です)。
○ 出来る限り畳の生活にする。
生活様式の西洋化と「姿勢の悪さ」との関連を指摘しておられますが、それは妥当でしょうか。又、姿勢が悪いとは、どの様な意味でしょうか。
しかしプロセスが大切だからといってそのプロセスを科学的に分析してはなりません。
科学的に分析されたものは頭に染込んでも体には絶対に染込みません。
率直に申し上げて、意味が全く解りません。メカニズムを論理的に認識すれば、技が身に付く事は無くなる、という意味でしょうか。
現在、握力というと親指と人差し指を主にして握る力を指しています。
これは妥当な記述でしょうか?
また体の構造上、親指と人差し指を主に握り、力を入れていけばいくほど脇が甘くなり段々開いていきます。
ちょっと解らないのですが、ここで「脇が甘く」なるというのは、どの様な運動を指しているのでしょう。又、拇指と示指の運動が、「脇が開く/締まる」事と、どう構造的に連関しているのでしょうか。
肺式呼吸
私は「肺式」という表現を、初めて知ったのですが(ググると結構出てきますね)、腹式呼吸と対になる概念は、「胸式」呼吸の方が妥当であると思われます。というより、医学的にも胸式呼吸という概念が用いられているはずですが。腹式にしろ胸式にしろ、肺で(外)呼吸している事には変わり無い訳で。
昔の日本の生活は”畳”の生活でしたので、自然と正しい姿勢が身に付いたものなんです。
これは少々単純な関連付けでは。生活様式が異なれば、筋肉の発達の仕方等も違うのは当然だとは思いますが、「正しい」姿勢、とするのは早計かと。この論理だと、日本間で生活する人以外は、概ね「悪い」姿勢である、という事になりますが、それは妥当でしょうか。
指導者の力量を知りたい場合は指導者の技自体を見る必要はなく、門下生の技を見ればいいのです。
「必要はなく」とは、明らかに言いすぎです。門下生はどの程度の修行暦か、週に何回、何時間稽古をしているか、指導者に対してどれくらい信頼感を持っているか、稽古時間以外に、どれくらい勉強をしているか、等々、無数の因子が関わっています。一概には言えません。
この論理展開だと、昔の人は皆(概ね)姿勢が良かった、となりますが、それは正しいのでしょうか。
頭は大変重量があるので頭が前へ出てしまうと首に負担がかかり、その負担を軽減させるために首の周りや肩周り、いわゆる上半身を鍛えて筋肉を付けないと重量のある頭を支える事は出来ません。
まさしくこの体形は昔から椅子の生活を送ってきた西洋人(例に出して申し訳ありませんが)の体形です。
西洋人の首周り・肩周りが隆々としているのは、頭を支えるためだったのですか。私は、美観を求めての事だと思っていました。それと、椅子を用いる生活をしている人は、皆、上半身を鍛えるのでしょうか。
正しい姿勢が重要だ、というのは、当たり前なのですね。語句に「正しい」という価値判断が入っているので、当然です。では、「正しい姿勢」とは、どの様な姿勢であるか、という事を、具体的に議論しなければならないと思うのですが…。(予想される反論:それは秘伝なので教えられない。言葉にするのは不可能なので、実際に修行するしかない。等)
真実も何も、どの様な観点から、「必要ありません。」と仰っているのか、全くもって意味不明です。「真の修行者」と、「研究家」や「評論家」(武術の評論家というのは、余り聞いた事がありませんけれど)は、対立する概念なのでしょうか。「研究家」に、「まともに修行せず、理屈をこねまわしているだけの人」という意味を、勝手に付け加えている様に思われます。
うーん、やはり意味が解りません…。
でも武術においての気を科学的に分析しただけでは何ら意味がありません。
としているのに、そのすぐ後で、
武術における気というものを分析したり研究するのは良いことだと思いますが、
と書かれているのは…。
全体的に、何かを主張する際に根拠を示さず、主観を過度に一般化している記述が見られます。又、「何故」そうなるか、という事の説明が、充分に為されていません。そして、根拠が曖昧にされたまま、「日本の昔の生活様式が良かった」という趣旨の主張をなさいます。恐らく、科学的思考法を鍛えた人が読むと、絶句するでしょう。
武術雑誌等を読むと、この様な記述が散見されます。これは問題であると思います。
追記:トラックバックが送信出来ません。ココログの不具合でしょうか。
追記:自分のブログにはちゃんと送れました。何ででしょう?
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